月別アーカイブ: 2006年4月

検索エンジンがニュースの見出しに与える影響が大きいらしいが

The New York Times「This Boring Headline Is Written for Google」で、WEB上のニュースは検索エンジンにヒットさせる為、平凡でつまらない見出しをつけなければならなくなった、といったことが語られている。

So news organizations large and small have begun experimenting with tweaking their Web sites for better search engine results. But software bots are not your ordinary readers: They are blazingly fast yet numbingly literal-minded. There are no algorithms for wit, irony, humor or stylish writing. The software is a logical, sequential, left-brain reader, while humans are often right brain.

この記事、本質とずれているなぁと思うのは、我々が玉石を見極めたいのは記事の内容そのものであるわけであって、見出しはそれをアピールする看板であれば良いということ。だから検索エンジンに引っかかるようにした方がトラフィックを集められると判断すればそうすれば良いし、つまらないタイトルではトラフィックを集められないと判断すれば面白く変えれば良いだけだと思う。
検索エンジンに合わせて自分の見出しを変更せざるを得ないことに、物書きとしてのプライドが邪魔をすることは容易に想像できるが、本のタイトルにせよ、TVや映画のタイトルや内容にせよ、既に市場というとてつもない化け物に合わせて変更している訳であって、今回はたまたまその市場における検索エンジンの影響がでかいだけのことだ。書籍やTVや映画が市場に魂を売り飛ばしたと新聞は思っているのかもしれないが、世間としてみたら新聞さんもあまりそれらと違いないんじゃないかなぁ。
だから安心して検索エンジン向けの見出しを付けてくれて良いと思う。

MacでWindowsが動いても

http://www.nytimes.com/2006/04/06/technology/06apple.html?pagewanted=2&_r=1

A number of analysts and software developers said Apple’s greatest risk was that by opening its machines to Windows software it might inadvertently chill the enthusiasm of software developers for producing programs to run with the Mac operating system.

Mac用のソフトの開発意欲を押し下げるんじゃないか、という話だけれども、もともとMac用のソフトを開発している人って、マーケットの大きさとかを度外視している訳だし、そこまで影響のある話には思えない。あるソフトのMac版というのが出なくなるかもしれないけど、例えばMicrosoft OfficeをMac OSで動かすことに、そこまでカタルシスを感じてる人もいないだろう。

戸根勤「ネットワークはなぜつながるのか」

ネットワークはなぜつながるのか ― 知っておきたいTCP/IP、LAN、ADSLの基礎知識

ネットワークはなぜつながるのか ― 知っておきたいTCP/IP、LAN、ADSLの基礎知識

http://d.hatena.ne.jp/rintaromasuda/20060328/1143496107
で紹介した「郵便と糸電話でわかるインターネットの仕組み」に続いて、再びネットワークの勉強をしてみた。読む順番としては正しかったようで、この本ではさらに技術的に細かいところ(LANアダプタの動きや、電気信号の生成の仕組みなど)まで取り上げられているし、インターネットの向こう側にあるプロバイダや電話回線が具体的に通信にどのように関わっているのかまで解説している。ただやはり前提知識を必要とするものが多いようで、「郵便と…」を読んでいなければ理解できなかったであろう部分がたくさんあったし、第4章「アクセス回線、プロバイダ」は正直今の僕では理解できない内容であった。ここら辺はまたいつか読み返して理解することにしようと思う。
ちょっと話はずれるが、ネットがリアルの社会に及ぼす影響が日に日に大きくなる中で、運送会社というかなり原始的なリアルビジネスの重要性っていうのは変わらない、いやそれどころか増していくんだろうな、と考えていたことがあった。これは物質瞬間移動装置が出来るまでの間は変わらない事実であろうと思う。ロジスティクスは人と人の間に物質の移動がある限り必要な訳だ。
一方でネット世界で「情報を運ぶ」役割であるネットワークの重要性も日に日に増していっているに違いない。IPv6の普及に合わせて、家電や自動車までもネットワークに取り込まれようとしている未来を考えると、ネットワークトラフィックの世界にもまだまだたくさんのブレイクスルーが必要なんだろうなと思う。今のままではとても捌ききれないであろう大量のパケットがネットワークを走り回る日が来る訳だから。
とそんなことを考えながら読んでいたのだが、通信先進国の日本とはいえ、来るべき大量トラフィック時代に対応するための技術者は足りているのだろうか。技術者の育成は産官学に任せるとして、僕個人としてはまず自分を鍛え、新時代への貢献を真剣に考え続けたいと思う。

アメリカはイラクで何を学んだのか

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060408id23.htm

イランの核開発問題について、米国が国連安全保障理事会での議論が不調に終わった場合、「有志」の同盟国と連携し、国連の枠外でイランへの経済的、外交的制裁に踏み切ることを検討していることがわかった。7日付のロサンゼルス・タイムズ紙が米当局者の話として伝えた。

イラクの傷も覚めやらぬ内に、もう一度同じ展開が持ち出される可能性がやはり出てきた。アメリカがイラクで学んだこと、それは「対象傲慢に物事を進めても、あとで国連主導に事態を持ち込めばOK」ということなのかも。

http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2006040801004817_World.html

米誌ニューヨーカー(電子版)は8日、核兵器開発計画が疑われるイランに対する空爆作戦の策定作業をブッシュ米政権が加速させており、既に米軍部隊がイラン国内に潜入し標的の調査を開始したと報じた。「選択肢」として、米軍が現在保有する唯一の地中貫通型核B61−11の使用も検討されているという。

核の使用を検討ですか。こりゃますます核武装をする必要性を感じるな。しかしまた原油の価格が上がるぞこりゃ。世界規模の話を前に恐縮だが、ガソリン代が最近馬鹿にならん。

とにかく現時点では、エルバラダイ事務局長が事態を上手くまとめてくれることを願うしかない。事態を上手くまとめるというのは、米国が気に入る結末に話を持って行くということになってしまうが。

梅田さんがWBSに出演した訳だが

本質ではなく、一番派手で分かり易い部分を切り取ろうとするテレビという媒体に、常に本質を求め続ける梅田さんが出演すること自体にかなりに抵抗感を覚えたが、結果的にはさすがWBS、他のテレビ番組よりも何倍もましだった。なんとか議論の本質に近づいていこうとする姿勢は見れたと思う。そして限られた時間の中で、テレビ受けする部分を織り交ぜながら話を展開した梅田さんはさすがだった。
まぁ、色々消化不良の内容もあったけど、あの時間ではあれが限界だろう。

小学校における英語教育論争

英語教育の話が出ると必ず出てくるのが「日本語の勉強が先なんじゃないか?」とかそういう話なんだけど、これが分からない。例えば以下のような記事がある。

英語導入に反対、または消極的な立場の委員、有識者らの間には、「小学生には正しい日本語を教えることが先決だ」という主張が多くある。子供たちの読解力やディベート能力不足が指摘されている昨今、相当に説得力ある意見だ。

この意見のどこが「相当に説得力ある意見」なのか私には分からない。英語と国語の勉強は両立出来るのでは。算数と国語と同時進行で勉強してるのとそんなに変わらないと思うが。子供達の読解力やディベート能力が不足してると本気で思うなら、それは国語の授業を改革するという動きにつなげていくべきであって、英語の授業に反対するという動きはおかしい。加えて個人的な意見だが、英語の勉強は「日本語での読解力やディベート能力」を高めます。他の言語を学ぶという行為には、そういった要素も含まれるものである。特に英語はディベート向きの直接的な言語であり、日本語からは学べないディベートの能力を、英語から学ぶというのは十分ありえると思う。
脱線した話を元に戻しますが、まずこの問題に対して日本がやらないといけないことは何かというと、

「英語」という曖昧な言葉で議論を進めるのを止めること

である。どいつもこいつも英語という言葉を使っているが、実は「日常英会話」について語っていたり、「英語の読解」について語っていたりと中身はバラバラだ。これでは議論が噛み合う訳もなく、終わらないいたちごっこを続けているだけになってしまう。
例えば私が上述した意見は、次のように語るべきである。

加えて個人的な意見ですが、英語の勉強は「日本語での読解力やディベート能力」を高めます。他の言語を学ぶという行為には、そういった要素も含まれるものである。特に英語はディベート向きの直接的な言語であり、日本語からは学べないディベートの能力を、英会話を使って外国人と話すことにより習得する、というのは十分ありえると思う。

ディベート能力を高めるのは「英語を使って自分の意見を述べる」ことを通してであり、「英語の勉強を通して」ではない、こういった部分をはっきりさせる必要がある。
勢いが先行してまとまりの無いエントリになってしまったが、私の主張は一つで、「まず議論を進める前に、英語という曖昧な表現は止めろ」ということ。そうでなければその議論から有益な何かが生まれるとはとても思えない。

岡嶋裕史「暗証番号はなぜ4桁なのか?」

暗証番号はなぜ4桁なのか? セキュリティを本質から理解する (光文社新書)

暗証番号はなぜ4桁なのか? セキュリティを本質から理解する (光文社新書)

「郵便と糸電話でわかるインターネットの仕組み」が非常に勉強になったので、こちらの本も購入してみた。
「郵便と糸電話で…」と違い、こちらは技術的な内容には一切触れていないというか、むしろ「技術が人を守ってくれると安心しきっていませんか」という問いかけがテーマとなっている為、技術的な勉強という意味では役に立たなかった。
現代社会が内包する「情報セキュリティの脆弱さ」を意識していない人があまりにも多すぎると著者は警鐘をならしたいのであろう。「セキュリティ意識が低い職場の上司に読ませたい」と思う若者も多いのでは。

政府の急務はブランディングだと思うが

昨日のエントリを読み直して思ったのだが、政府が打つ手打つ手にいちいち説明を付けていくのはほぼ不可能、というか説明することが仕事になってしまって、他に仕事が出来ない状況に陥っていくだろう。だけど国民の納得を得ないといけない。
この問題を解決するには「政府のブランド力アップ」しかないと思った。国民に「まあ政府さんがやっていることだし、信じて付いていけば大丈夫だろう」と無条件に思わせる力、すなわちブランド力である。「ヴィトンの鞄だったらとりあえずOKだろう」と思わせるのと、本質的には一緒である。
しかしこの手もほぼ不可能である。ブランドとは長い年月をもって積み重ねた信用であるとも言えるし、トップがぽんぽん変わる政府にこの策が取れるわけがない。
では国民に納得を行き渡らせるのは不可能なのか。ここでもう一つの可能性として考えられるのが「ネット」である。現在ネットの力によって、情報を国民一人一人に行き渡らせるコストはほぼ0に近い状態にある訳だ。政府はここに着目すべきである。なんかエイプリルフールのネタみたいだけど、id:umedamochioさんを「国策説明担当大臣(通称ネット大臣)」なんかに任命してみたらいかがだろう。

追記:

また意図せぬトラックバックをしてしまったようだ。失敬。

正しくても感情的に受け入れがたいこと

論理的に考えれば正しくても、感情的に(あるいは本能的に)受け入れがたいこと、ってのが世の中にはあると思う。例えば定率減税廃止、これに着目してみる。定率減税は廃止されるのに、高額所得者(3000万円以上だそう)に対する減税措置と、法人税に対する減税措置が廃止されないことに非難の声が挙がっている。「貧乏人からばっかり金とってどうすんだっ!金持ちから搾り取りやがれっ!」とついつい感情的になってしまいがちな話題だ。僕も例外ではない。
だけど政府の気持ちも分かる。結局景気に大きく影響を与えるのは会社やお金持ちである。このお金を使ってくれる方々の動きを封じるような増税は経済的に見て損失も多く、最終的にお金の無い人の利益にもならない。一方お金が無い人はもともとあまりお金を使ってくれないので、景気に与える影響は小さい。だったかこの人達から少しずつお金を集めて、使わないお金を政府が何かに使った方が経済的に見て全員に利益があるだろう、そういう考え方なのだ。
とここまで考えたとしても、やはり何か受け入れがたいものを感じてしまう。本能的に嫌がっているというか、「生理的に受け付けない」というやつだろう。大多数の人はこの感覚を持っていると思う。だからこれを国民に理解させるには超ド級の説明能力が必要であり、そんなの持ってない政府は、説明無しに強引に施策を進めるしかないのである。今の構図ってそんなんじゃないかなぁ。

ちなみに定率減税廃止をはじめとする、所謂サラリーマン減税が正しい、正しくないの議論ではないのでご了承を。

世界中を巻き込むイランの核開発その4

安保理が議長声明を採択したことによって、世界が随分とわかり易い方向に動いてしまった。この採択によって、イランが譲歩する可能性が高くなるとは思うし、平和的にこの問題が解決する可能性は高まった。だがこの問題は結局イラン、さらには中東全域で燻る火種へと変化していく。米国はリスクをどんどん積み増していることに気付くべきだろう。あの同時多発テロを忘れたのであろうか。

・NIKKEI NET「麻生外相、電話協議でイランにウラン濃縮停止求める

麻生太郎外相は31日、イランのモッタキ外相と電話で協議した。イランの核問題を巡る国連安全保障理事会の議長声明について「重く受け止めてほしい」と述べ、ウラン濃縮活動の即時停止を求めた。モッタキ外相は「平和利用が目的だ」と従来の主張を変えなかった。 (07:01)

日本は当然安保理の採択に乗っかった。まあ至極当然の話だろう。

この問題で一人冷静な意見を口にしているのは、IAEAのエルバラダイ事務局である。

・中国新聞「「差し迫った脅威でない」 イラン核でIAEA局長

【カイロ31日共同】国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は30日、カタールの首都ドーハの会議に出席し、イランの核問題について「差し迫った脅威ではない」と述べ、制裁措置は時期尚早との考えを示した。

しかし安保理には、米国とインドの関係への批判の同時に発表してもらいたかった。これじゃ何のために安保理があるのか分からん。