
- 作者: ジョン・バッテル,中谷和男
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2005/11/17
- メディア: 単行本
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AOLは一九九五年六月にはまだウェブ関連の資産を持っていなかったが、検索をめぐるブームの到来を予想してか、約一〇〇万ドルでウェブクローラーを買収した。とはいえ、「はたしてインターネットがどうなるのか、当時はだれにも分かっていなかった」とピンカートンは言う。
ウェブクローラーは特にAOLで、ウェブサーファーたちに新世界を切り拓いた。その全文検索と単純なブラウザベースのインターフェースは、学者や技術者だけでなく、ウェブを一般大衆向けに開放する重要な第一歩となった。
企業の創業者が権力を放棄したがらない、あるいは放棄できないのは、なにも今に始まったことではない。シリコンバレーでは常識で、企業家症候群と呼ばれるほどである。
しかしともかくペイジとブリンの独特のマネジメントは、一部から批判を受けながらも、大部分は才能を開花させ、会社は確実に新生面を拓いていった。
グーグルは二〇〇五年まで、ほとんど毎日のように平均四人の従業員を採用してきた。二月のニューヨーク・タイムズによれば、サーゲイ・ブリンは急増する社員のために、画期的な奨励策を発表した。それは「創業者賞」と呼ばれ、グーグルの価値を大きく増進したと創業者が判断した時には、その従業員やチームに数百万ドルの報奨金を授けるというものだった。
「ぼくたちは大きな業績をあげた中小企業を、定期的に買収してきた」とブリンが、このプログラムを説明した。「その会社の買収に一〇〇〇万ドルを払うこともある。もしぼくたちが創業者賞を設立していなかったら、求職者にはグーグルには入らない方がいいと言ったと思う。その代わりに小さい新興企業に雇われなさいと勧めるだろう。そしてなにか新機軸を打ちだしたあとでグーグルに会社ごと買収されるのが得策だと」
あらゆる分野で人間の活動に影響を及ぼしているWEB検索だが、本書を読むことで、グーグルを中心としたこの業界の成り立ちを理解することが出来た。未来についても言及されているが、現在のWEB2.0に関する議論を見ても分かるとおり、いまだに「インターネットがどうなるのか、誰にもわからない」状況は続いているのではなかろうか。しかしその正体不明の未知の世界にどれだけ投資を行えるのか、どれだけの優秀な頭脳をその世界に集めるのか、そういったところに日米間の差や、企業間の差が表れるのだろう。そしてその未知の世界に対して、大きく深いコミットを行える企業こそが「WEB2.0時代の企業」となるのであろう。
最後に抜粋した創業者賞の件は、青色発光ダイオードの話を思い出させた。この施策からも、グーグルがいかにテクノロジーを信奉している企業であるか、ということが窺える。是非あのケースについて、ペイジとブリンに意見を聞いてみたいものである。