世界中を巻き込むイランの核開発

イランの核開発に関する話題が世界中を巻き込んだものになっている。アザデガン油田の開発に着手した日本にとっても大問題なのは間違いない。色々なエントリをリストアップしながら、今後日本がとるべき対応を考えていきたい。

  • 朝日新聞朝刊(3/8)海外メディア深読み「米印の核合意」

ニューヨーク・タイムズは2月28日の社説で、ブッシュ政権の「インドを持ち上げて中国を封じ込める戦略」はよこしまな考えであり、イランのように核開発をめざす国々への「考えうる最悪のメッセージだ」と批判した。
米国には、包括的な核査察を受け入れていない国への核技術の提供を禁止する法律がある。原子力協力を進めるためにはインドを例外扱いにするとの法改正が必要になる。同紙は「議会は(法改正に反対して)合意を葬りさるべきだ」と主張した。

経済的利益の為に、法改正まで視野に入れてインドを優遇する。アメリカの経済的繁栄の裏側には、この「子供のような無邪気な強欲さ」がある。アメリカという国を相手にするうえで、この特質は必ず考慮に入れておかなければならない。記事の中で引用されているのは、2/28のThe New York Timesの社説「President Bush Goes to India」のことだと思うが、残念ながら現時点では無料で読むことは出来ないようだ。

日本とイランは27日、都内で外相会談を開いた。麻生太郎外相は核兵器開発につながるウラン濃縮実験を即時停止するよう強く要請。モッタキ外相はロシアが合弁企業を通じてウラン濃縮を代行する仲介案を巡る協議を続ける意向を示したが、核開発活動そのものの停止には応じなかった。

日本にとってイランは第3位の原油輸入先で、2005年は全体の13.8%を依存。日本が75%の権益を持つ中東最大級のアザデガン油田が本格的に開発されれば、日本の自主開発原油は50%増える見込みで、イランの核開発問題の行方がエネルギー政策に影響を及ぼすのは確実だ。

日本政府としては結局、今回もアメリカ追従と言える行動に出ている。アザデガン油田開発という、アメリカに良い顔されないプロジェクトにせっかく着手したばかりだったのに、ここでアメリカ追従は勿体ないと思うがどうだろうか。もちろんアメリカは強国であるし、アメリカの要求をイランが呑み、なおかつ日本としては油田開発をのんのんと続けられる、というのがベストだと思うが、そんなに都合良くいくとはとても思えない。以下の記事で分かるように、イランは欧米との対決姿勢を露わにしている。

http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt96/20060211AS2M1100L11022006.html

イラン側からアザデガン油田開発を外交カードに使われたとして、日本は一体どちら側につくべきだろうか。将来日本ががつんと物を言える国になる為にも、エネルギーというアキレスの踵は補強しておきたい。つまりここはイラン側に付くべきなのではないだろうか。日本が将来的に「追従国家」とならない為の、大切な一歩目を踏み出すときが来たのではないだろうか。
偶然見つけたのだが、下記のエントリから、アメリカのイラン攻撃に対する反対署名にリンクが張られている。

http://d.hatena.ne.jp/matsunaoka/20060304

アメリカがイランに戦争を仕掛けるというのが現実となったときに、それを追従するような国家になっては絶対にいけないと思う。イラクの教訓を今度こそ活かし、アメリカの「正当化癖」には断固とした態度をとるべきである。

イラン核問題では、イランに研究目的の小規模ウラン濃縮を認める新たな妥協案が浮上。ロシアは国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長とともにこの案を後押ししており、ラブロフ外相はライス長官に同案を説明して、外交的な解決の必要性をあらためて訴えるとみられる。
しかし米政府は小規模でもイラン国内でのウラン濃縮は「許されるべきではない」(ボルトン国連大使)と強く反対しており、ライス長官は来週早々にも公式に始まる安保理協議で米欧と同一歩調を取るようラブロフ外相に求める意向だ。

アメリカは、小規模でも一切のウラン濃縮をイラン国内では認めない方針らしいので、このロシア仲介案は潰れるだろう。結局国連安保理がどのような決断を下すのかを注視するしかない状況である。ただ日本政府には「国連安保理の結論待ち」という態度は取って欲しくない。最悪のケースを想定した準備を、裏で着々と進めて欲しいというのが僕の願いだ。

※下記の書籍における外交評論家の岡本行夫さんのイランの核開発における意見は、大変に刺激を受けるものでした。参考に載せておきます。

「外交」とは何か、「国益」とは何か 増補版・生きのびよ、日本!! (朝日文庫)

「外交」とは何か、「国益」とは何か 増補版・生きのびよ、日本!! (朝日文庫)

追記:

イランのモッタキ外相は12日、同国政府は石油輸出を政治の道具にはしない、と述べた。

同外相の発言を受け、イランが核問題をめぐって対立する西側諸国に反撃するために石油輸出を制限するのではないかとの懸念は、やや後退した。

立派な姿勢。志は素直に評価したい。記事にもあったが、この先もその姿勢でいられるかは疑問。

ブッシュ米大統領が10日、4年ぶりに北朝鮮とイランに対して再び「悪の枢軸(Axis of Evil)」という表現を使用した。

ブッシュ大統領は同日の米新聞協会招請演説で、「イラン・北朝鮮・中国のなかでどの国が最も深刻な安保的脅威か」という質問に対し、「過去の演説(9・11テロ直後の2002年1月の一般教書演説)で(地球上には)悪の枢軸国が存在し、イランと北朝鮮を含むと述べた」と答えた。

再度使用したということは、この言葉を使ったことを後悔していないというわけだ。

  • NIKKEI NET「「イランとインド、大きく違う」・核拡散防止で米大使」

大使は「イランはNPTの義務に違反しているうえテロ支援国家だ」と批判。インドは核の輸出管理をするなど南アジアの地域安定に貢献する民主国家だと説明。「インドの核利用を禁じる意味はない」と述べた。

「地政学的リスクと、経済的結びつきの違い」ってんじゃ駄目なんだろうか。