林義正「世界最高のレーシングカーをつくる」

世界最高のレーシングカーをつくる (光文社新書)

世界最高のレーシングカーをつくる (光文社新書)

まず「惜しい」と思った。著者が持っている経歴や実績は、おそらく他の本の著者に比べて圧倒的に面白いものだと思うが、著者の筆力がそれに着いていっていないという印象を受けた(特に最初の方)。生意気言って申し訳ないが、素直な読後感はそれである。僕が車やエンジンに関する知識を少しも持ち合わせていないことを差し引いても、少し読みづらかったように思う。

しかしながら、既に述べたとおり著者の今までの実績をただ読んで知るだけでも相当の価値があると個人的には思う。特に自動車という日本が得意とする工業分野で、どれだけのブレークスルーが起きているのか、を素人が知る一つの良い機会になるだろう。著者が試したい先端技術を反対した上司に対する批判も気持ちがよく、この辺から著者の人間性が窺い知れるのも面白い。大胆かつさっぱりと批判や反論の出来る人物であろう。

しかしどこかに、流体力学とデザインの関係について解説した本はありませんかね。レーシングカーって何であんなにカッコよいのだろう。