
大人のための「数学・物理」再入門 (幻冬舎実用書―芽がでるシリーズ)
- 作者: 吉田武
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2004/01
- メディア: 単行本
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またひとつ、面白い本を発見。もしかするとタイトルは「大人になるための「数学・物理」再入門」が適切なんじゃないか。読んでいれば分かる通り、子供達に数学や物理(いや、ここでは自然哲学と書くべきか)についての興味を持たせることを意識した内容にもなっている。
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本書はそれぞれ独立した55話の数学・物理に関連した小話から成り立っている。一部例外を除いて、それぞれがきっちり4ページずつから成っており非常に読みやすい。テンポ良く、ぐいぐいと数学・物理の世界に入っていける。数学や物理が自然をどのように記述しているのか、少しでも数学・物理に興味のある(またはあった)人間であれば、本書を読んで興味を抱かざるを得ないだろう。
もちろん55話の話はどれも本当は奥深いもので、とても4ページで全体像を説明できるものではない。が、これは著者の力量だろうが、上手いこと興味を持つのに十分な触りだけを説明しきっている。自身が一冊の本を出すまでのテーマである「オイラーの公式」に関しても、本書では4ページで説明しているのには脱帽モノだ。
話は逸れるけども、日本の教育のどこかに「数学史」「科学史」といったものが入る予定、または入っていた実績などはないのだろうか。無理矢理子供達にまず勉強から入らせるのもひとつ方法論としてはありだと思うし、興味を持つことと学力として備わることもまた違うことではあるが、歴史を教えることで自分達が学んでいることの意味を教えてあげる、そして何より自然哲学への興味を抱かせてあげる、そういった視点も必要だろう。始めは夏休みの読書感想文の課題程度でいいから、本書のような書籍に子供達を触れさせてみよう。
ところで吉田先生は、本書だけでなく他の書籍でも「有理数(rational number)とは比で表せる数、無理数(irrational number)とは比で表せない数なので、正しくは有比数、無比数と訳されるべきだった」と述べている。なるほど確かにそうだったかもしれない。しかしながら、割り切れる数と無限循環小数を「理の有る数」、無限非循環小数を「理の無い数」と、その数の性質の中に「理」が見出せたかどうか、で名前を付けたのは何とも日本人らしくて良いなと僕は思ったのですがどうでしょうか。