
- 作者: ダニエルキイス,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1989/04/01
- メディア: 単行本
- 購入: 15人 クリック: 302回
- この商品を含むブログ (106件) を見る
名作過ぎて今更ここで語ることもないのだろうが、6年振りに読んでみて「やはりすごい」ということを再確認できたので一応記録に残しておく。
—–
「同じ本は二度と読まない」というモットーを意味も無く持っていたが、最近再読が僕の中で流行中。そして再読する際は、一度目の読書では気付かなかったような細かい部分に気付くことを目的として、所謂精読を行っている。結構読書は早い方だと思うし、本を早く読むというのも素晴らしいことのひとつなのだが、食い入る様に精読しているときのあの感覚はなんとも言えず好きだ。本と自分が一体になったような感覚を持つこともある。
で本書なのだけど、本書について語るときの切り口は実に色々とあると思うが、今回自分が読んだ際には「知性」というものを切り口として物語を見ていたと思う。この物語は、チャーリーの知性が高くなっていくに連れて変化していく人間を通して、知性と人間がどのように関わりあっているのかを描いているように思う。それはパン屋で働いていた同僚の優越感に見ることが出来るし、ニーマー教授が感じていた劣等感に感じることもできる。我々人間が知性という実体の無いものに対して、非常に複雑な感情を抱いていることが分かる。精薄者であったときのチャーリーでさえ、知性というものに強い憧れという感情を持っていたのだ。さらに言うと、ニーマー教授が知性のなかった時代のチャーリーを人間としてみなしていなかった部分も面白く思える。教授の概念から言えば、知性とは人間そのものなのかもしれない。
本書ってもともとSF小説だったみたいだけど、老若男女全ての方に読んでいただけると思うし、どう考えても名著なので、未読の方はぜひどうぞ。