村上春樹、柴田元幸「翻訳夜話」

翻訳夜話 (文春新書)

翻訳夜話 (文春新書)

すごく単純な話だけど、この本はお得です。

—–



何が単純にお得かと言うと、村上氏と柴田氏の対談(学生や若い翻訳者も交えて)が3つと、レイモンド・カーヴァーの短編「Collectors」の原文、村上訳、柴田訳、ポール・オースターの短編「Auggie Wren’s Christmas Stroy」の原文、村上訳、柴田訳がこの一冊に詰め込まれているからである。
両氏の翻訳の比較すること自体は非常に楽しいが、それよりも所謂翻訳家という人達が、翻訳の何処に面白さを感じているのか、何に躓いているのか、どんな苦労があるのか、どのような喜びがあるのかなどを対談から知るのが面白く思えた。
対談の中で興味を惹かれたのは、「どちらかというと直訳」というような話を両氏がされていたこと。何となく翻訳というと意訳というか日本版用に新しく物語を作り直すようなイメージがあるが、そういうことではないようだ。翻訳は「創作活動のような、ただのルーチンワークのような」そんな微妙な位置にある意外と奇妙な仕事なのかもしれない。
この本は続編(翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書))も出ているようなので、今度はこちらも読んでみようと思う。