英会話の能力を飛躍させる意外な方法

IT Conversationsにて、Rubyの作者であるMatzことまつもとゆきひろ氏の英語による公演を聴くことが出来る。冒頭で「自分はあまり英語が上手くないから、お馬鹿さんと思われるかもしれないけど…」と前置きをしているものの、上手い。英語は話せるようになっておくべきだと思うエンジニアの方は必聴だろう。個人的にはMatz氏の英語は、日本人英語っぽくなく、どちらかというと中国人の英語に近い響きを感じた。なぜだろう。
ところでMatz氏の公演とは関係がないが、先日英会話の能力を飛躍させる、意外かつ画期的な方法を偶然にも見つけた。

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それはどんな方法かというと、
「英語以外の言語を勉強してみる」
というもの。勉強する言語はヨーロッパ圏の英語に似ている言語ではなく、アジア圏の英語と似ていない言語のほうが好ましい。この方法で英会話力が向上する理由は主にふたつある。以下でその理由について説明する。
まずひとつめの理由だが、他の言語を勉強することは、自分が「如何に英語が話せるか」ということを気付かさせてくれ、自分の英会話力への自信に繋がる。英語だけでなくスキーや水泳で顕著だが、「自分は出来るんだ」という精神的作用が如何に能力の向上に寄与するかというのは、皆さんも体験からご存知だろう。言語の初心者用のテキストの一冊でも買ってみれば分かると思うが、そこに出てくる例文というのは「私は昨日、学校に行きました」とか「彼は学生ではく医者です」等の、内容からしてみれば小学生レベルの会話である。しかしこれらのレベルの会話を、その言語でパッと言えるようになるまで、かなりの時間を費やさなければならないことに気付く。まず語彙が足りない。文法の細かい部分が思い出せない。何か文章を自分で考えるたび「猫って何ていうんだろう?」と辞書を引いたり、「あれ、複数形はどうするんだっけ?」と文法書を読み返したり、そんな行動を繰り返すことになる。そして気付いてしまう「英語だったら全部言えるのに」と。そう、英語だったら全部言える。少なくとも「まったくどう言っていいのか分からない」ということはないはず。
次にふたつめの理由。他の言語をゼロから勉強することにより、「会話をするためには、何をどう勉強しなければならないのか」という大事なことに気付くことが出来る。具体的にはどういうことか。例えば英単語の暗記。英会話をする為には英語の語彙を増やさなければならないが、通常日本では、英会話の勉強と英単語の暗記というのは結びつかない。なぜか。それは簡単で、既に大量の英語の語彙を持っているからである。これは中々気付きにくいことだが、前述の「猫」を英語で言えない人はほとんどいないだろう。学校、昨日、学生、医者。どれもこれも英語であればパッと単語は出てくるはずだ。だけどこれを新しく始めた単語ではまったく言えない。そして気付く。「まず語彙を増やさないと、会話なんて成り立たないぞ」と。連鎖的に「英会話力を向上するためには、もっと語彙を増やさないと」ということにも気付くことができる。この語彙の話をはじめとして、今まで受動的に英語を身に付けさせられていたので気付けなかった「そもそも語学とはどうやって勉強していけばいいのか」という本質的なことが分かってくる。今後の英語学習の道標が見えるはずである。
結論として、他の言語を勉強したからといって英語の語彙や言い回しに関する知識が身に付くとか文法に関する理解が増すとかそういう直接的な効果があるわけでは勿論ないのだが、自分の英会話力への自信を与えてくれ、そして自分の英会話力をレベルアップする為にはどうすれば良いのかという考察の機会を与えてくる。一度お試しあれ。

追記:

Matzさんからフィードバックを頂いた。
Matzにっき : BYU Colloquium

「二十代は模索の時ブログ」では、「上手い」とか「必聴」とか「中国人の英語に近い響き(たぶん誉めてる)」とか書いてもらってる。嬉しいけど、事実とは反する気がする。

そうなんです、誉めています(笑)。彼らの生命力溢れる英語に近いものを感じました。それにしてもビデオまで入手可能だなんて、良い時代になったものです。