
搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)
- 作者: 阿部真大
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/10/17
- メディア: 新書
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最近流行の若者の搾取モノなんだけど、う〜ん、正直もうひと頑張りして欲しい内容であったが、「好きを仕事に」という標語を何の考えも無しに受け入れている方は一度読んでみても良いかもしれない。
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著者東大の博士課程で社会学を研究しているらしく、自分がバイク便ライダーとして働いた経験を生かして、好きなこと(バイク)を仕事にしているバイク便ライダー達が陥っていく社会の罠について独自の考察を述べている。
ただこの考察が著者個人の経験に著しく偏っている印象がどうしてもしてしまう。確かにバイク便が割りの合わない仕事であるのはよく分かるのだが、本当に著者が述べているように、バイク便ライダー達はバイク便ライダーという仕事に陶酔していくものなのだろうか、そこに疑問を持った。
ちなみに私が考える「好きを仕事に」で一番搾取されていると感じるのは看護婦とスチュワーデスである。両仕事ともかなりの肉体労働を伴うし、時間も変則的なので社会的生活を一部犠牲にせざるを得ない職であるのに、社会的地位も給与も高くない、それでも圧倒的に職業として人気があるため、雇用主側の都合の良い様に雇われている印象がある。特に看護婦(今は看護士って言った方が良いのかな)は人の生き死に直結する業務に携わっており、色々な意味で労働環境を向上してあげる必要がある職業だと思う。
話は戻って、本書には村上隆著の「13歳のハローワーク」への批判が出てくる。どうもこの批判が本書を書く一番の目的だったのではないかという気がしてしまうのだが、どうでしょうか。バイク好きの子供にバイク便の仕事を薦めていたが、こんな仕事に就かせてしまって責任とれるのか、というのが批判の内容であった。しかしどうだろう。例えばプロ野球を目指している子供に発破をかける行為はどうだろうか。「プロ野球選手になれる人は一握りだ。野球の練習より勉強しろ」というのが責任のとれる良い行為なのだろうか。僕にはそうは思えないです。