
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/11
- メディア: 新書
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本書を読むまで知らなかったが、村上氏が経済をテーマにメーリングリストを配信していたようであり、その編集長も務めているらしい。本書はそのメーリングリストの内容をテーマ別にまとめたもの。
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まず村上氏の7年間の疑問とは何かといえばおそらく「景気という言葉の定義」もしくは「景気という言葉の定義もなく、コンセンサスも取れていない中でそれに対する議論を続けているのはなぜか」ということではないかと思う。この点については概ね合意するが、おそらくほとんどの人間が「景気=自分の利益」と結び付けていると思われるので、トップダウンで定義づけするしかないと思われる。また「日本が何も変化していない」ということに関する疑問を感じているとも思われるが、それこそ「どのような定義で日本が変わっていないと結論付けるのか」は読んでいてもよく分からない。ただ後述するように、本書は情報が時系列に並んでいないため非常に理解し辛いため、重要な記述が頭に入っていない可能性もある。
本書を読んでいると村上氏が如何に勉強をしているかが分かり、失礼だが氏の年齢を考えると頭が下がる。氏もお気づきのように、中々四十、五十になって新しいことを一から始めるというのは珍しいことであると思うし、これは立派なことである。これも具体的な指標がある訳ではないが、地域の学習機関に老年の方が通っている姿をアメリカで見ることはそこまで珍しくないが、日本では珍しい部類に入ると思われ、そういったことから想像するに、日本には「学習する中年・老年」という人間は相対的に少ないと思える。
しかしこの本、何故に時系列で情報を纏めなかったのだろう。他の本やネットで時系列に情報を閲覧可能なのだろうか。村上氏が経済を学んでいくその過程を見るためにも情報は時系列であるべきだったと思うのだが。正直読み辛かったというか、これだとただのエッセイ集のようにしか読めない。
また経済とは関係の薄い拉致問題やマスコミ論などに関する言及が後半目立ち、それも気になった。本書は新書にしてはかなり厚めで300ページ弱あることを考えると、テーマと合致しない部分は削っても良かったのではないかと首を傾げてしまう。
余談だが、この生活人新書は非常に表紙の肌触りが良い。ページの紙質も扱い易く、お気に入りの新書になりそうな予感である。