日本人の労働時間についての個人的な感覚

大西 宏のマーケティング・エッセンス : 日本人は働きすぎって本当でしょうか

前振りが長くなりましたが、OECDのレポートでは、単純に各国間の比較はできないという注釈はありますが、1990年あたりから日本の実労働時間は急激に減少しており、2000年あたりからはアメリカとほぼ同じ程度とはいえ、アメリカよりもやや労働時間は短くなっています。これって以前は結構話題になっていたはずです。

ホワイトカラー・エグゼンプションの導入を巡って、日本人の「労働」についての議論が様々なところで起こっており(例えば居酒屋とかでも)、個人的には色々と考える材料になるので中々楽しい。法案自体の良し悪しは僕の語るところではないが、こうした「変化」というのは少なくとも個々人の頭を一時でも働かせる力がある。

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さて、日米間の労働時間の差について極めて個人的な推測を述べたい。全体で見て日本人の方が労働時間が短いというのは引用した通りらしいが、これは僕の感覚からいっても多分あっているのではないかと思う(あくまで全体として見ればということだが)。ではなぜ、日本人は働きすぎという印象が生まれるのか。僕が思うに、労働力の分配が効率的でないからではなかろうか。もっと簡単にいうと、経済的に報われない労働をしている人間が多いからではないかと思う。経済的に報われないというとちょっと言葉が強いですが、要するに日本では低賃金労働者が長い時間働いており、アメリカではマネジャーなどの高給取り、もしくはベンチャー企業で働く人など大きなリターンが見込める人間が長時間働いているという印象がある。なので労働時間という観点から議論するのではなく、労働を「投資」と考え、そのリターンに対する日米間の差という観点から議論をすると、おそらく大きな違いが見えてくるのではなかろうかというのが僕の極めて個人的な意見。
あとついでに、

それよりは通勤時間の長いことのほうが問題かと思ったりします。

これには僕も激しく同意で、以前から強い問題意識を持っていた。アメリカに行くホントに感じるのだが、みんな職場と家が近い。これは距離が近いというのもあるし、体感距離が近いというか、車でパッと戻ったりしている。あまり日本では考えられないことだが、昼休みに家に戻ったり、奥さんと待ち合わせてランチを食べたりとかそういった話まで聞いたことがある。ときどき夢想するのだが、東京に集中している企業や国の機関など、もう少し地理的に色々なところにバラけると、結構良い労働環境が生まれるのではないか。東京の機能3/5くらいにして、2/5をバラバラにして北や西に持っていき、小さな東京をたくさん色々なところに作ると、少なくとも渋滞の解消、朝のラッシュの解消、通勤時間の短縮などの効果は見込めるはずだ。地理的に分散することで経済的な損失があるかもしれないが、この情報化社会においては、その損失は極めて限定的なものになるだろう。良い案だと思うのだがどうだろう。