Googleの開発マネジメント

慶応大学ビジネススクールの岡田正大氏がITPro Watcherにて「ネット世代の企業戦略」という連載を行っているが、現在Googleの開発マネジメントの話題を扱っており、結構刺激的だ。いくつか抜粋しておきたい。

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Googleにおける開発組織マネジメント (2)新製品開発プロセス

当然,こうした評点は集計されているはずであり,アイデアとその属性ごとにランキングすることが可能だろう。誰がどのようなアイデアを出したかも一目瞭然のはずである。ここにアイデアの自然淘汰のしくみが組み込まれている。

暫定プロジェクトの段階で,すぐにプロトタイプのコーディングが始まる。いわゆる大企業にありがちな,「製品企画書が本社マーケティング部門会議でのプレゼンを経て,正式にゴーサインが出てから」コーディングを開始するのではなく,いきなりどんどんと自由に発想を形にしてしまう。

80%側のプロジェクトで一応の完成を見たサービスは,Google Labで公開される。「どれだけのユーザーが価値を感じてアクセスし,ダウンロードしてくれたか,リアルタイムで立ち上がり曲線が分かります。その反応が悪ければそのプロジェクトはfull launchに至らずに停止されます」。ここでもアイデアは自然淘汰されていく。ここを卒業できずに消え去っていったサービスも多い。

とにかく自然淘汰、民主主義、競争(市場)原理といったところか。これを受け止める資本力と度量がGoogleの強みなんだと思う。多分超優秀と呼ばれるエンジニア達が何千人も何かに取り組んでいるものの、その99%はボツになるアイデアであり、社の直接的な利益にはなってないのだろう。だが残りの1%が大爆発する。そんなマネジメントだと思う。

Googleにおける開発組織マネジメント (3)情報共有のチャネル

さて,同社は業務活動に関する情報を多岐にわたるチャネルで共有している。共有される情報のタイプを大別すると,A)ナレッジとしてストックされる価値を持つ,業務の中身に密接にかかわる情報と,B)純粋に日々の業務上の連絡(例えば会議開催日時や来客スケジュール等)に近い,記号的な情報に分類できる。ここでは前者に的を絞って考える。

これは僕が勤務する企業でも同様の分類で共有しているし、どこでもそうだろう。

これは,いわば各エンジニアの職務経歴・職能一覧書である。Googleに入社する前,そして入社後から現在に至るまで,いかなる研究や開発に携わってきたか。また自分の得意とする技術領域は何か,いかなるスキルがあるのか。こうした情報も社内の開発関係者全員に公開され共有されているという。技術領域名,取得学位,能力など,様々な語句をキーに検索可能になっている。

こういうシステムはどこの企業だって欲しいし、持つのは簡単なのだが、結局のところ情報のメンテナンスを誰がどうやってきちんとやるのかが問題になるケースがほとんど。Googleはその専任スタッフでもいるのだろうか。もしくはエンジニアの義務としているのだろうか。

2000名のエンジニア組織で,ここまでの裁量を与えてカオス(混沌)が生じないのは一体なぜなのか。

岡田氏が何を意味しているのか量りかねるが、カオスは起きているのではなかろうか。前述したようにおそらく大部分のプロジェクトは灰と化しているだろうし、そこからエンジニアの不満だってあがってくるだろうと思う(法外な給与と豪華なフリンジベネフィットがあるから辞めたりする人は少なかろうが)。僕が思うにGoogleの経営陣はカオスを意図的に発生させ、その中から生まれてくる革新的なものを救い上げることを一番の狙いとして経営しているのではなかろうか。