逆説的な言い方だが、仕事において「これはやった方がいい」と思うようなことがあったらそれはきっとやるべきではない仕事だ。
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これも日本語の表現の問題もあって大いなる疑問を巻き起こしそうなものの言い方だが、個人的には上記のことは心掛けるべきであると思う。何故か。ある程度優秀な人であれば、いや平均的な人間であれば「こうすれば会社はもっと良くなる」、「こうすればうちの製品はもっと使いやすくなる。もっと売れるようになる」、「ああすればもっと素晴らしい人材が入社してくれる」、「ああすればもっとお客さんが喜んでくれる」というようなアイデアはいくつも浮かんでくるであろうし、実際に浮かんでくるものはそれぞれ効果のあるものばかりだろう。つまり「やった方がいい」ことばかりなのである。
ではそれらを次々と実行していけばどうなるか。たちまち立ち行かなくなるであろう。なんせ会社には何十人、何百人という人間が働いており、それぞれがいくつかのアイデアを持っている訳だ。プラスそのアイデアとは別に現在システム化している日常の仕事もある。それの上に様々なアイデアをかぶせようとしても時間もお金も許すわけがない。簡単に言うと実行できないのだ。
これは優先順位の問題である。では何を実行すれば良いのか。それは「これはやるべきだ」と確信出来ることのみである。日本語の表現の問題だが「これはやった方がいい」程度にしか思わないのならそれは優先順位の低いものなのだ。それに気付くべきである。会議などでの「○○をやった方がいいよね」という発言を論破するのは難しい。せっかく提案してくれた人の正論を論破するのは感情ベースでも難しい。嫌な人間と思われるかもしれない。でも論破とは言わないまでも反論はしておくべき。例えば「たしかに○○はやった方がいいと思います。でも△△もやった方がいい内容です。□□も同様です。それらや他のことと比べて本当に○○の優先順位は高いのでしょうか」という反論だ。優先順位、取捨選択、限られたリソースといったキーワードを相手にイメージさせる反論でないといけない。大抵そういうことを発言する人間は、リソース(特に人と時間)が無限にあるかのように錯覚しているか、物事の優先順位を頭の中に留めておけていない(だから特別優秀というわけではないかもしれない)。そういう人に分かってもらえるように反論するのは骨がおれるが、「やった方がいい地獄」に落ちないようにするためにも必要な行為である。