
- 作者: 岩波書店編集部
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/12/20
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 29回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
2007年のお奨め新書がひとつ見つかった(出版は2006年12月みたいだが)。
本書は37人の翻訳家、または翻訳家ではないが翻訳についての意見を是非訊いてみたいと岩波編集部が判断した人達、による翻訳という仕事に関するエッセイ集である。もともとは図書という雑誌に連載されていたシリーズだったらしい。
—–
当然ながら文章を生業にしている方々ばかりなので、非常に読ませる内容で本書は満ちていると思うが、それよりも何よりも翻訳という仕事、もっと言えば自分が真剣に取り組んでいるある作業に対する考察が非常に興味深いものとなっている。プログラマがプログラミングという作業について真剣に考察しているようなブログエントリが非常に面白いのと同様、翻訳家が翻訳と向き合う姿を描くこの本は面白かった。
また、翻訳の作業中の話が何度か出てきたのだが、非常にプログラミングという作業に近い部分があると感じた。プログラミングは何かを何かに移し変えるという作業ではないし、以前のものを再利用できたりとかそういう大きな違いはあるのだけれど、まず書いてみて、自分で読んでみて「何か違う」と思ったら書き直し、上手くいったと思ったら先に進み、また途中で上手くいかない部分があれば…といった作業の取り組みそのものは非常に似ている。とまあつまり「僕らも頑張りますんで、そちらも頑張ってくださいね。」と翻訳家さん達にエールを送りたいだけである。
実は子供の頃から、通訳や翻訳という作業やそれを行う人に強い憧れを抱いていた。僕は海外文学などにはあまり興味はなかったし、周りにそういう大人がいたとかいう訳ではなかったので何故そういう憧れを抱いたのかは定かではないのだが、おそらく異国の言葉を自国の言葉に置き換えるという作業に子供ながら何かミステリアスなものを感じ取っていたのではないかと思う。結局大人になってから結構真剣に英語を学ぶことになるのだが、この強い憧れがそもそもの動機であることは間違いない。
書評はしばらく簡易版のつもりだったが、良い本に出会えたときなどはこうやって書きたいと思う。