最近読んだ本

本の運命 (文春文庫)

本の運命 (文春文庫)

考えてみれば本の運命は数奇なものかもしれない。著者の井上氏は以前自分が所有していた本に古本屋で再会したとそうだ。子供の頃「お札にこっそり名前をかいておいて、いつかそのお札と再会できるだろうか」と夢想していたことがあったのを思い出した。13万冊もの蔵書を抱えていた著者だからこそ、それぞれの本に自分との運命を感じずにはいられないのだろう。「本を売らない」という決心を僕もしてみたいものだが、スペースの問題で中々難しそうだ。

特捜検察vs.金融権力

特捜検察vs.金融権力

スリリング。特に第1部のスリルはかなりのものだと思う。蜜月だった時代から大蔵官僚の摘発にいたるまでの特捜部の動きの変化は非常に興味深い。僕の頭の中に漠然と染み付いている数々の思想は、こういった日本の中枢にいる人達の「成果」なのかと思うと不思議である。例えば「大蔵省とノーパンしゃぶしゃぶ」なんて言葉が世間を飛び交っていたとき、僕はほんの子供だったはずだが、しっかりと頭に刻み込まれている。佐川急便事件やリクルート事件にしても同様だ。
しかしこういう本を読んでいると、日本の最高権力というのはどこにあるのかといつも悩んでしまう。勿論権力は分散されているのは百も承知だが、どこかに最高権力者が存在するのではと分かり易い構造を求めてしまう。それは首相かもしれないし、マスコミかもしれないし、世論とか世間という僕も含まれているはずの曖昧な存在なのかもしれない。