メリットとデメリットを比較するな

別に僕は生き方の達人という訳ではないが、それでも「あぁ、この人は生き方が下手くそだな」と人に対して感じることがある。僕が言う生き方が下手くそというのは、結局のところ幸せ上手かそうでないかということなので、僕がそう感じる人と言うのは大抵幸せ下手な人である。
僕が人に対してそう感じるときのパターンというのはいくつかあるのだけれど、その内のひとつとしてメリットとデメリットを比較してしまう人、というのがある。

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メリットとデメリットを比較してしまうとはどういうことか。それはある対象Aと対象Bを比較するとき、対象Aのデメリットと対象Bのメリットを比較してしまう様なやり方である。そしてその結果から対象Aは駄目だと思い込み、自分が対象Aだとすると落ち込んでしまう。ちょっと以下で実例を挙げてみる(あくまで例なので、会話は適当)。

X「Yってさ実家暮らし?」
Y「ああ、そうだけど?」
X「実家暮らしっていいよね。炊事も洗濯もしなくていいし」
Y「うん、そうだね」
X「ひとり暮らしなんて最悪だよ。なんでも自分でしなきゃいけないから」

こういうXさんを見ると幸せ下手だと思ってしまう。何故かと言うと、Xさんは「一人暮らしのデメリット」と「実家暮らしのメリット」を比較しており、その結論として「一人暮らしをしている自分の方が悪い状況」という意見に至っている。しかし本来であれば「一人暮らしのメリット」と「実家暮らしのメリット」、そして「一人暮らしのデメリット」と「実家暮らしのデメリット」を比較して結論に至るべきであろう。デメリットとメリットを比較すれば、必ずメリットを挙げた方がよく見えるに決まっている。
その辺りを勘案すると、会話は以下の様になるべきだったと思う。結論は一緒だけど、メリットとメリット、デメリットとデメリットを比較した上での結論になっている。

X「Yってさ実家暮らし?」
Y「ああ、そうだけど?」
X「実家暮らしっていいよね。炊事も洗濯もしなくていいし」
Y「うん、そうだね」
X「でも友達を泊めたりとか、みんなで集まったりとか自由に出来ないでしょ」
Y「ああ、結構難しいね」
X「でも実はあまり友達呼んだりするのそこまで好きじゃないんだよね。だから実家暮らしが羨ましいよ」

こうして文章にしてしまえば何の事もない様に思う事だが、上記の様な会話や考え方を日常で目にすることは非常に多い。こういう手法を利用した営業方法なんかもあるかもしれない。まあいずれにせよ、自分が持っているものとか属している環境とか、そういうもののデメリットを並べ上げて、他人のそれらのメリットと比較する様な行為はやめておいた方がいい。そんなことをすれば「なんて自分は恵まれていないんだ」という間違った結論に至りかねない。
やたらめったら人を羨ましがる人というのがたまにいるけれど、大体こういう思考をしている人なんじゃないかとも推測する。