
- 作者: 魚住昭
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2007/04/10
- メディア: 新書
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タイトルが好みだったこともあり、書店で見かけて即購入。読んでみると思った通り好みの内容だった。
著者は元共同通信社の記者であったようだが、共同通信社時代、また退社後に独自に取材を進める中で気付いた「権力を監視する役割であるはずのメディアが、以下に行政や立法と結び付いているか」について本書で述べている。事例も例えば姉歯元建築士の耐震偽造問題や、ライブドア事件、陪審員制度導入、NHK-朝日新聞問題など近年起こった(起こっている)有名な社会問題ばかりなので、誰でもすんなりとその腐敗構造を理解することができると思う。
個人的な感想としては、あまり僕がマスコミに興味がないのもあるが、この程度の腐敗構造はまあ当然あるんだろうな、と読後に妙に納得してしまった。普段からあまり深く考えている訳でもないけれど、「権力の監視機関としてのマスコミ」なんていうのはおそらくどの世界にでもある「まあ理想を言えばそうなんだけど、現実を見ろよ」的な看板ではないかと思っているし、マスコミがそのようにあるためには、結局我々読者のレベルが高くないといけないわけだ。そうそうそこまでのレベルで記事を読んでいる人間など多くないだろう。だからやっぱり腐敗していくんだろうな、というのは感覚で理解できる。そういう意味では本書に驚きはなかったが、まさか司法と電通が手を組み、司法にとって有利な世論を醸成しようと企んでいるとは思わなかった。それは驚き。
本書を読んで一番感じたのは、著者の、そして文章の中に出てくる現場の記者達のプライドである。会社が大きくなり、素晴らしい記事を書くことでなく、権力に迎合した記事を書くことの方が社の利益となるという上の判断が出始めても、やはり現場の記者達はプライドを持って取材し、プライドを持って記事にしているのである。幸い今はインターネットの時代であるので、その記者達のプライドが、ボツという形で闇に葬られるのではなく、新聞や雑誌とは違った形で我々の元に届くことを期待したい。