内田樹「村上春樹にご用心」

村上春樹にご用心

村上春樹にご用心

ウチダ先生による村上春樹論が一冊の本として纏まったようなので購入。最近は作家の方がブログを頻繁に書いている例が多いので、ブログの記事を体系化して本にするというケースが本当に増えた。この様にブログと出版会とはゼロサムの関係にあるようなものではなく、相互補完的な関係にあるのがベストの状態なのだと思う。
僕は村上春樹氏の書籍はそれなりに読んではいるのだが(肝心の「風の歌を聴け」シリーズをまだ読んでいなかったので、今回急いで購入)、先生の村上春樹論に突っ込みを入れるほどの知識や情熱は持ち合わせていない。だから感想のみを挙げさえてもらえば、まず村上春樹氏が日本の評論家からあまり高い評価を得ていないという現象に関しては、真剣に「不思議だなぁ」と思う。まあこれがスポーツだったら分かり易いんだろうなと思う。だってイチロー相手に「あのスイングは認められない」とか行ってる野球評論家とかおそらくいないんだろうし。評論家の方も色々だろうが、作家出身の方だったりすると複雑な感情もあるんだろうな、というところは察するものの、うん、難しい。ちょっと今度自分で評論読んでみよ。
あと村上春樹論とは直接関係ないのだけれど、先生が「比較文学論とは何だろうか」、「文学とはなんだろうか」と深く思考してく過程が本書には載っていて、そこは凄く面白いと思いましたよ。あるテクストが文学かそれとも文学ではないかを決める要素とはなんだろうか。例えば今僕が書いているこの文章は間違いなく文学ではないのだろうけど、それは何故なのか(「いや、文学だ」と優しい嘘をついてくれる方募集中)。そういうことって「その意見が正しいのかどうか」とかそういうことに僕の興味はあまりなくて(飲み屋でのたまう為に覚えておくことはあるけれど)、それを煮詰めていく課程にすごく興味があるんですよ。なので僕と同じそういう嗜好をお持ちの方は本書を読んでみるか、先生のブログの過去ログを漁ったりすると面白いものに出会えるかもしれない。
兎にも角にも、村上春樹氏に負けず、先生の文章も読み応えはあります。