月別アーカイブ: 2008年1月

「当社はIT企業ではありません」

情報処理推進機構(IPA)は、人材不足が深刻化する日本のIT業界の現状を調査するため、IT人材についての実態調査を実施し、1月28日に結果を公開した。大学卒、大学院卒の新卒学生がIT企業に興味を持たなくなったともいわれているが、当のIT企業が新卒採用の課題として挙げた答えのトップは「業界の仕事のイメージがよくない」だった。

IT企業、新卒採用苦戦の理由は「仕事のイメージが悪い」:IPAが調査、理事長は「由々しき事態」 – @IT

やはりIT企業の不人気が深刻化しているようだ。このブログでは繰り返し述べてきたように思うが、そもそもIT業界とかIT企業なんていう言葉が意味するところは曖昧である。そうすると、この時代には如何に「当社はIT企業ではありませんよ」という印象を学生に持ってもらうのかが採用担当者のひとつの勝負と言える。寂しい事だが。

GoogleやFacebookがbest studentsに提示する高額オファー

ひとつ前のエントリで日本のIT企業(所謂IT企業って書いた方がいいかな)の採用に関するお寒い状況を話題にしたけれど、米国でのこんな記事を目にした。

Last year, salaries of up to $70,000 were common for the best students. This year, Facebook is said to be offering $92,000, and Google has increased some offers to $95,000 to get their share of graduates. Students with a Masters degree in Computer Science are being offered as much as $130,000 for associate product manager jobs at Google.

Google, Facebook Battle For Computer Science Grads. Salaries Soar. – TechCrunch

スタンフォードのような一流大学のコンピュータサイエンス学科を出る学生に対して、昨年までは7万ドルくらいのオファーが相場だったのだが、近年は今をときめくGoogleやFacebookが採用を強化しているおかげで値段がつり上がり、Googleが9万5千ドルものオファーを出すまでに至っている模様。これが修士になると13万ドルってちょw。ジャブジャブお金が使える程儲かっている状況を考慮に入れたとしても、日本の企業がここまでやると思えないないのでやはり「優秀なエンジニアを何としても集めたい」という強い意志があるんだろう。やはり組織の中で上手く動く人間を採用し「組織の力」を信じている日本の文化と、あくまで「個の力」を信じ、その力を強化することで組織を強くしようという文化である(と僕は思っている)米国の企業との差なのかもしれない。いずれにしろ、こんだけ貰える可能性があるのであれば、IT企業の学生における人気は高いだろう。

「有る」のデフレ

くだらない話と言いつつも前回のエントリの続きを思いついたので書いてみる。
おそらく「有る」または「在る」ということの価値が激減したんだろうな、と思いついた。つまり「有り難い」という言葉が形成されてきた時代ではまだ色々な物や情報が少なくて、「有る」ということが非常に嬉しいことだったんじゃないだろうか。「有る」ということに非常に価値があったんじゃないだろうか。だから「有り難い」ものは「ありがたい」というロジックがすんなりと成り立った。
しかし今は物も情報も溢れている時代。「有る」ことにあまり価値は無い。いやむしろ余計なものには存在してほしくない。この溢れるばかりの状況の中にもう余計な何かを増やして欲しくない。そんな時代。つまり「有り得ない」ものには「存在して欲しくない」ので「ありえない」はネガティブな言葉としてすんなりと解釈される。
「有り難い」と「有り得ない」にはそんな時代的な背景があったりして。いや、勝手な想像ですが。

結局民意が求めるのは経済効果か

宮崎県の東国原(ひがしこくばる)英夫知事は、橋下氏の当選に「応援していたので、自分のことのように喜んでいます。地方行政をとりまく環境は大変厳しいものがありますが、この難局に立ち向かう同志を持つことができ、互いに修練しながら地方の活性化に取り組んで参りたい」との談話を出した。

http://www.asahi.com/politics/update/0128/SEB200801280001.html?ref=rss

東国原氏の日々のマスメディア上での活躍は、相当橋下氏の今回の当選に寄与したと思うがどうだろうか。僕も含めてほとんどの人は宮崎県の経済関連のデータなんて見ていないと思うけれど(指標を見ても現実と一致しないというのは最近の日本でよくある話だが)、それでも「なんだか宮崎が元気なんじゃないか」という強い印象を僕らに与えるだけの活躍を東国原氏はしている。それを見て「ではうちも人気者で元気に」という流れはごく自然なことだろう。昨年友人を訪ねて滋賀に遊びにいったときに、友人が「うち(滋賀県)も人気者の知事が欲しいわ」なんて冗談を言っていたけれど、そういう会話は日本の至る所で交わされているだろうし、今後もいわゆるタレント知事(橋下氏は弁護士ですが)がもう何人か誕生するんじゃないだろうか。
しかし橋下氏も「大阪を元気にしたい」って訴えていた気がするが、結局元気って経済のことなんだろうか。きっとそうなんだろうな、と思いつつもこの間「バブルへGO!」という映画を見たのを思い出して、ああいった元気(あれは極端な例だけど)を人々が求めている訳ではないだろうしな、と思ったり、Always三丁目の夕日じゃないけれど、経済復興途中の日本が元気でなかったかと言えばそうでもないだろうし、一体どういうことが「元気が良い」ということなのか、それをじっくりと橋下氏には聞いてみたいものだと思った。今後出てくるであろうタレント知事にも問うてみたい。
ちなみに最近はほとんど見ていないけれど、僕は行列のできる法律相談所の視聴者だったので、丸山氏や橋下氏などの主力メンバーが同番組にレギュラー出演しないのは多いに残念だ。あとこれを書いていて思ったのだけど、島田紳介さんの人間プロデュース力って相当なものだと思う。丸山、橋下両氏をはじめ、あの番組でとりあげられて人気者になった人は数多い。島田氏の「人の魅力の引き出し方の上手さ」を示していると思う。

オバマ氏がサウスカロライナで圧勝

南部でどのような選挙結果になるかについては結構興味があったのですが。

選挙戦でオバマ、クリントン両氏は、過去の言動などを材料に激しい中傷合戦を繰り広げた。焦点の黒人票争奪では、黒人大統領誕生への期待や、ブッシュ政権時代からの変化を渇望する声を背景に、オバマ氏がクリントン氏を圧倒。CNNテレビの出口調査によると、黒人票の約八割を獲得し勝利の原動力となった。

経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版

CNNの調査によると白人の72%、黒人の61%が黒人大統領誕生の準備が整っていると回答しているようだが、オバマ氏が南部でここまで強いとなると、準備が整っているのかという質問に対しては控えめだったようだけれど、黒人大統領の誕生を期待する気持ちは以前からかなり大きかったのではないかと推測する。そしてこれは同時に今までそのような民意があまり大統領選出という行為に反映されていなかったのではないか、と。
とにかく次のスーパーチューズデーがどのような結果になるかが見物だが、

米大統領選の民主党指名争いで、ケネディ元大統領(63年暗殺)の長女キャロライン・ケネディさん(50)は26日、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)でバラク・オバマ上院議員への支持を表明した。元大統領は黒人差別解消に尽力したことでも知られる。

http://mainichi.jp/select/world/news/20080128k0000m030064000c.html

というニュースもあり、オバマ氏が勢いに乗った形で臨む形になるようだ。

「ありえない」って感謝の言葉として使えないかな

「ありがたい」って漢字で書くと「有り難い」。つまり「存在することが難しい」、「あまり存在していない」、「希少価値がある」とかそんな意味。そしてそんなものだから頂いたりすると「たいへんに嬉しい」、「凄く感謝する」というような意味になった訳だと思いますが、その流れでいくと最近若者言葉として定着した感のある「ありえない」も感謝の言葉に使ってもいいんじゃないかと思うけれど、とくだらないことを考えてみた。無理か…。

ドナルド・A.ノーマン「誰のためのデザイン?」

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

このエントリを読んで購入。「認知科学者のデザイン原論」と副題にあるが、あくまで「技術書」として読んだ。本書を読んで学んだ事はかなり多かったように思うが、一言で言うと
失敗や不便を研究することの大切さ
であると思う。さらに言えば
その研究成果を如何に製品のデザインに活かすよう心掛けるか
が学べたと思う。
例えばあなたはコピー機の中に原本を忘れてきたことはないだろうか。おそらくあると思うが、そのときに「コピー機のデザインが悪かったから忘れた」という発想が出来るだろうか。おそらく出来ないだろう。基本的には「自分は馬鹿だから忘れた」という発想で止まるのが普通だろう。本書を読む事でその発想転換が可能になる。一般的な意味でのプロダクトデザイナーはもちろんのこと、UIをデザインする必要のあるプログラマ、建築家などの方には必読の書であるように思える。実際に僕も仕事でUIを設計することは多いが、本書を読んでからUIの設計する際の考え方がかなり深くなったように思う。

採用プロセスの中では当然プログラムを書かせるべき

反応を見ていると「プログラムを書かせるなんて当たり前じゃん」という世の中ではないようですね。

エンジニアの場合にはやはりコードを書いてもらうのが一番、という事で、いくつか用意したお題の中から好きなものを選んでもらって、30分から1時間くらいでコードを書いて動かしてもらう。大型の液晶テレビにパソコンのディスプレイを映してもらって、それを他の社員が見守る中コードを書いてもらっている。

コード面接 – jkondoのはてなブログ

絶対にプログラマの採用プロセスではプログラムを書かせるべきだろう。こう書いてしまうと当たり前の話で、バッターを雇うときにはバッティングをしてもらうべきだし、SPを雇うときは射撃や護身術の腕前を見せてもらうべきだろう。そしてこれは落ちなんだけど、今勤めている企業の採用ブロセスには一切こういうものがない。大丈夫かいな。いや、大丈夫じゃないかも。
プログラムを書かせるのはホワイトボードで構わないと思うし、特定の言語の知識とかを計りたい訳ではないだろうから、どんな言語で書いてもいいと思うし、なんなら擬似的な言語でも構わない。というか特定のライブラリなんかを使われることを避ける為にも疑似言語で書かせるというのは良いアイデアかも。
それにしても自分は人に覗き込まれたりすると異常に作業効率が落ちるタイプなので、はてなの様にたくさんの人が自分の作業を見ているのを意識しながらだと実力が十分に発揮できなさそう。多くの人にライブで見られている、というのは日常業務の中にそう存在するシチュエーションではないと思うので、見守るエンジニアは別室で見ているのが○かもしれない。

Steve Jobsのプレゼンテーションでお勉強

当然Steve Jobsのプレゼンテーションも英語の良いお勉強になります。Macbook Airの登場やApple TVの進化について楽しみながら、頑張ってJobsの英語を聴き取ってみましょう。JobsファンはJobsが喋るのに合わせて自分も喋る、所謂シャドーイングもやってみると、英語の勉強はもとよりSteve Jobs流プレゼンテーションを身に付ける勉強になるかもしれません。あくまで、かも、です。


封筒の演出は良かったと思いますが、僕だったらもう少しサプライズ的にMacbook Airを登場させるかな、というのが感想。あ、プレゼンテーションの話になっちゃってますが。

将来子供に「○○の勉強なんか何の役に立つの?」と言われたどう答えようか考えてみる

もし子供を授かったとして、子供が「○○(学校の教科)の勉強なんて意味ないじゃん。何の役に立つの?」と言い出したらどうしようかと考えてみる。批判があるかもしれないが、このような発言は大抵勉強が出来ない、勉強をやっていない子供から出てくる可能性が高いと思っているので、おそらくこういう事を言い出した時点で自分の子供はあまり勉強していない子なんだと思う。まだ答えなんて決まってないのだけど、例えば以下のような事を一緒に子供と考えたい。

  • 「役に立つ」とはどういう事か
  • 「役に立たない」とはどういう事か
  • 「役に立つ、立たない」を判断するというのは非常に難しいことだが、君の判断は正しいか
  • その教科の勉強が「世の中の役に立っている」例はどんなものか
  • 役に立つはずなのに一生懸命やっていないことはないのか
  • 役に立たないはずなのに一生懸命にやっていることはないのか
  • 本当に○○をやりたくないのは「役に立たない」からか
  • 一生懸命やっている子は「役に立つ」と思ってるからやっているのか
  • 「役に立つ」と思っている事だけを集めた学校というのを想像してみよう
  • 父親(自分)はどのように考えて学校に行っていたと思うか
  • 君(子供)が自分の年になったときにはどのように感じると思うか

本当は「勉強する→成績上がる→受験や推薦など有利→就職に有利」という単純な図式が成り立つと仮定するだけで(まあ成り立っていると言っていい図式なんだけど)、「勉強が役に立たない」ということはないと思っていたりするんだけど、まあ自分の子供相手にその図式を掲げるのもなんか嫌なのでそれはしないと思う。
ま、子供が勉強をしないと自分で決めたのだったらそれはありだと思ったりするのだけれど、「勉強が役に立たないから」とかいう浅く考えたっぽい言い訳を盾にして勉強をしないようであれば、それは見直してもらいたい。勉強はせずとも腕一本でガテン系で生計立てていきますよってな信念を強く持っているようであればそれはおkってか嬉しいかもしれないね。