バリー・ユアグロー「鯉」

柴田元幸さんの翻訳教室の二番目の課題を翻訳してみた。生徒や教師の訳例を見ると、自分がひどい誤訳をしている部分をいくつか発見したが、敢えてそのままにしておくことにする。ちなみにこういった文章をBlogに記載することには何らかの権利的な問題があると思うので、ご指摘頂ければすぐに削除しますとここに記しておきます。

バリー・ユアグロー

人生から逃れる為、君はこっそりと公園の池を訪れ、その深みに身を沈める。君は池の鯉に囲まれて生きていくのだと決めた。君は鯉人間となるのだ!
水の中では全てが心地良く、そしてくすんでいる。鯉達はびくびくと泳ぎ回っている。幸せそうには見えない。「奴らは僕を邪魔者と見なしている」と君は思った。「うん、だけどね。奴らは池の外の世界を責めるべきなんだ。奴らが不幸である事について」。
君は一晩過ごせそうな場所を見つける。息を止めているため頭がふらふらとしてきたが、思っていたより大変ではない。周りをじっと見つめていると、君は大きな衝撃を受ける、そしてほとんどぎょっとして水を飲み込む。女の子が君を見つめている!
彼女の髪は流行のオレンジ色、そして大くて分厚い白い靴下を履いている。君は呆然と彼女を見る。彼女は君に手でサイン、明らかに「あなたここで何をしているの?」を意味している、を送る。お返しに、君は同じ質問をサインで彼女に返す。その娘はイラついて顔をぐいと上げる。彼女は背中側を親指で指す。そこはまだぼやっとしていたが、たくさんの人々が池の底中にいるのが今は見える。君は彼らに驚く。「鯉人間!」と君は思う。しかし彼らは歓迎していないように見える。そう、彼らは顔をしかめているんだ。彼らは一斉に「シッ、消え失せろ」というジェスチャーを君に送り始めた。例の女の子も腰に手を当てながら君を睨んでいる。
君はこの敵意に対して何も言えず、ただ彼らを見つめている。「ごめんだねっ!」君はついに声を出した、半狂乱になって。泡がどっと溢れ出す。「嫌だ、俺はあの不幸な地上には戻らないぞ!俺はあの鯉達と一緒にここに潜んでいたいんだ!」
「消えろ!」彼らがそうジェスチャーする。「最初にここに来たのは俺たちだ!出て行け!」人々は君の目と彼らの目、そしてこの池の底にある絶望と憤りを互いに睨みつける。
そして鯉は軽快に泳いでいく。尾びれをひらひらと動かしながら、無慈悲にその光景を見つめながら。

ケータイ・ストーリーズ

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