
- 作者: 柴田元幸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/05/19
- メディア: 新書
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ヘミングウェイをいくつか読んだ事がある程度、つまりアメリカ文学なんてほとんどよく知らない僕だが(何文学もよく知らないけれど)、本書を楽しむことが出来たのはおそらく筆者の筆力によるものだろう。それに対象が何であれ、ある分野に非常に精通した人、ある分野を非常に愛している人、言葉は悪いけれどある分野に対してマニアックな人から、その分野に関する話を聞くというのは面白いことである。だからアメリカ文学の専門家からアメリカ文学の話が聞ければ、それは大抵面白いことになる。本書はまさにそういう感じ。
レッスンとタイトルにあるし、著者は東京大学の教授だから、授業内容がそのまま本になったような中身を想像されるかもしれないが、そういうわけではない。本書の中では、ある言葉、例えば「食べる」とか「勤労」とか「ラジオ」とか、から連想されるアメリカ文学の作品や作家が紹介され、著者がそれらに対して考察を加えるという内容になっている。著者のアメリカ文学に対する洞察の深さは、僕になんか判断出来る事ではないだろうけれど、おそらく相当なもので、作品や作家に対する知識はもちろんのこと、作品や作家の背景となったアメリカの歴史的事情や経済状態なんかも踏まえて、非常に大きな枠組みで文学を捉えており、おそらくアメリカ文学というよりは「アメリカ」を専門としているとも言えるのではないだろうか。
ちなみにこの本の中で紹介されている作品で、何故か一番読んでみたいと思ったのがベンジャミン・フランクリンのフランクリン自伝 (岩波文庫)である。次の機会にでも購入してみよう。