
- 作者: テレーズ・デルペシュ,早良哲夫
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/04/17
- メディア: 新書
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まったくのド素人ではあるのだが、それなりにイランの核問題に関心を持ってはいる。ただしやはり前提とする知識が大きく不足しているせいか、本書を読み進めるのにはそれなりに苦労してしまったというか、極めて要点のまとまったコンパクトな本であるのに、読了するまでに結構な時間を要してしまった。
著者のデルペシュ氏はフランス原子力庁戦略研究局長で、核問題の専門家だと思われる。本書の内容もさすがに専門家だからなのか、イランの核開発問題を実に多角的な視野から、具体的に言うとイラン、ヨーロッパ、アメリカ、ロシア、中国、パキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮、エジプト、サウジアラビア、南アフリカ共和国、そしてIAEAそれぞれの立場から分析を加えている。大体ひとつの章でひとつの国や地域の立場が分析されるという作りになっているため、読み勧め易い作りにはなっていると思うのだが、前述した通り、あまり本書に出てくる様な話題の単語になれていなかったり、地理関係が分かっていなかったりすると、さっさか読み進めるというのは中々難しいかもしれない。このイランの核開発問題を巡るゲーム(と言ったら聞こえは悪いけれど)の中で日本が分析されていないことは、日本人の自分としては少し寂しい気がしないでもなかった。資源に乏しい日本にとっては、例えばイランのアーザーデガーン(アザデガン油田)の持つ意味合いは小さくないし、もっと積極的な外交努力を行って、著者の分析対象になるくらいでないと駄目なのかもしれない。まああくまで素人意見だけれども、そのくらいの潜在感が必要な事は間違いないのではなかろうか。
そんで正直に白状してしまうと、今まで新聞の報道なんかを眺めている段階では、イランって本当に核の平和利用だけを目指しているのではないかと考えていたりした。もちろん、本当にどうなのかというのは誰にも決められないのだろうが、本書を読む限りでは、十分すぎるほどの証拠が世の中に出て来ているようであり、そういう意味ではIAEAなどの期間の持つ抑止力や強制力の無さについて、少し真剣に見直す時期が来ているのかもしれない。アメリカにはその両者が備わっているのだろうが、その力を一国、ないし少数の国に集中することがまた新たな核保有国を生む現状を作っているのであれば、やはり国際期間にきちんとした力を備えるべきなのであろう。また少し、ニュースの読み方に変化が生まれそうな良い読書が出来た。