月別アーカイブ: 2019年3月

地区制の狙いのひとつは総観客動員数の最大化だろうか?

すごく単純化した話ではありますが。

総観客動員数を増やしたいのであれば、お客さんを呼べるゲームをたくさんやった方がいいです。お客さんをたくさん呼べるゲームというのは、人気チーム同士のゲームだと思います。人気チーム同士が近所だとさらに都合がいいです。アウェイチームのお客さんが足を延ばしやすくなります。

ご存知の通りBリーグの地区制はリーグ内での対戦数をいびつな状態にしてしまっています。この制度の設計、私が勝手に予想しているだけですが、総観客動員数の最大化というのも大きな狙いのひとつだったのではないでしょうか。簡単に言えば、ある程度の動員が見込めそうなチーム同士のカードを増やしたかったのではないかと。

そんな仮説を持っていたので、ここ3シーズンのB1の観客動員数をホームチームとアウェイチームの地区別に見てみました。2018-19シーズンは40ゲーム終了時点までのデータとなっております。

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やはり東地区同士というのは動員の見込める組み合わせであるようです。中地区や西地区のホームチームが東地区のチームを迎え入れたときよりも集客力があるようなので、まあ単純に考えれば東地区同士の対戦が多い方が総観客動員数には好影響がありそうです。

もちろんもしかしたら東地区の人気チームがもっと中地区、西地区に来た方が好影響がいっぱいあるかもしれないですし、観客動員数の少ないカードも同じように増えてしまって逆に問題のあるやり方かもしれませんし、何より地区制が観客動員数増を狙っているではというのも私の勝手な仮説なのでその辺はご了承くださいませ。

いずれにせよ対戦数を変更したら総観客動員数は何かしらの影響(繰り返しますが、好影響かもしれません)を受ける可能性が高そうで、2020年までに観客動員数の平均成長率10%を掲げているBリーグさんにとっては中々おいそれと弄ることができる部分ではないかもしれません。

それにしても、2018-19シーズンは東地区同士のゲームの人気が更に増しているようで気になりますね。理想的には、どんな組み合わせでも似たような動員が見込めるように近づいていくのが望ましいと思いますが、東地区への依存が強くなってしまっているように見えます。

KaggleのNCAAトーナメント勝敗予想コンペに参加しました

今回はBリーグの話ではないです。

データ分析に興味がある方ならKaggleというデータ分析コンペを開催しているサイトを御存知かと思います。コンペのひとつにGoogleとNCAAが毎年行っている、NCAAバスケトーナメントの勝敗予想コンペがあります。このコンペの2019シーズン版に私も参加しました。

ご存知の通り今シーズンは八村塁が所属するゴンザガ大学が日本で注目を集めており、勝敗予想に参加することでNCAAトーナメントを2倍楽しもうという算段です。ちなみに男子と女子の両方で同じコンペが開催されておりまして、私は双方に同じ計算方法で参加しています。

www.kaggle.com

www.kaggle.com

このコンペを簡単に説明します。まずKaggleから過去数年のレギュラーシーズンとトーナメントのスタッツ、Play by Playのデータや、各大学のトーナメント出場歴などのデータが提供されています。また自分で勝手に有用なデータを用意することも許されています。

それらのデータを元に、今季のトーナメントの形に関係なく、出場する68大学(First Fourと呼ばれるゲームで落ちる4大学も含みます)のすべての組み合わせについて勝敗を予想する、という形式になっています。

もう少し正確に言うと、各大学にID番号が振られており、ID番号が小さい方の大学が勝つ確率を出す、というやり方になっています。出場校がチーム1、2、3、4だとしたら

  • チーム1 vs チーム2におけるチーム1が勝つ確率
  • チーム1 vs チーム3におけるチーム1が勝つ確率
  • チーム1 vs チーム4におけるチーム1が勝つ確率
  • 以下チーム2 vs チーム3、チーム2 vs チー厶4、チーム3 vs チーム4についても同様

を求めるという形です。実現しなかった組み合わせについては予想は無視されます。

結果は対数損失と呼ばれる値で評価されます。これは簡単に言えば完璧に勝率を予想した場合(チームAが勝ったゲームを全て確率100%と予想。負けたゲームを全て0%と予想)は0になり、完全にランダムに予想すると1になる値です。

対数損失は勝敗を単純に「勝ち」、「負け」で予想するのではなく、確率で予想するときに便利なやり方です。勝つ確率100%と予想していたチームが勝つと最高点(つまり0)を得られる一方、それで負けると大きなダメージを負います。かと言ってずっと50%の予想をしていても得られるのはランダム予想と同じ結果です(つまり1。)

このコンペの最高な部分は、NCAAトーナメントが進むに連れ結果がリアルタイムで更新されていくところです。冒頭に述べた「2倍楽しむ」はこれで達成できる予定です。この記事ではどのように過去のデータから確率を求めたのかの説明は省きますが、自分のモデルがどの程度の制度なのか、確認するのが楽しみです。

ちなみに私のモデルが弾き出したゴンザガ大の勝つ確率の一覧は以下のようになりました。今季のレギュラーシーズンの成績を主に使ったモデルなので、好調だったゴンザガ大の確率はかなり高めに出ていますね。ザイオン・ウィリアムソン率いるデューク大学相手にも勝つ確率が約75.4%と出ています!頑張れ八村塁!

対戦大学 ゴンザガ大が勝つ確率 / 100
Wofford 0.5766060
Michigan St 0.6557608
Virginia Tech 0.7019235
New Mexico St 0.7030285
Belmont 0.7051441
Mississippi St 0.7094201
Murray St 0.7210376
Montana 0.7227919
Colgate 0.7262318
Tennessee 0.7289464
Virginia 0.7334119
Kentucky 0.7445775
Duke 0.7535295
N Kentucky 0.7544945
Auburn 0.7700234
Yale 0.7724692
Utah St 0.7725864
Northeastern 0.7739441
Liberty 0.7821296
North Carolina 0.7895388
Iowa St 0.7899850
Purdue 0.7910372
St Mary’s CA 0.7933053
LSU 0.8004175
F Dickinson 0.8013481
Buffalo 0.8140718
Marquette 0.8161373
Houston 0.8175769
Villanova 0.8200679
Baylor 0.8296433
Maryland 0.8338790
Texas Tech 0.8342346
Mississippi 0.8376907
Nevada 0.8459738
UC Irvine 0.8535026
UCF 0.8560282
Iowa 0.8577243
Kansas 0.8658504
Gardner Webb 0.8669303
Washington 0.8723155
Georgia St 0.8725844
Oregon 0.8833206
Iona 0.8840201
Vermont 0.8842641
Florida St 0.8846830
Abilene Chr 0.8864741
Arizona St 0.8871292
NC Central 0.8879917
Cincinnati 0.8912449
VA Commonwealth 0.8995327
N Dakota St 0.9038196
Louisville 0.9062988
Michigan 0.9132945
Florida 0.9162315
Ohio St 0.9222904
Seton Hall 0.9228450
Wisconsin 0.9259659
Syracuse 0.9270761
St John’s 0.9279579
Minnesota 0.9352691
Kansas St 0.9354663
Temple 0.9355528
Oklahoma 0.9356434
St Louis 0.9367082
Prairie View 0.9389675
Bradley 0.9418723
Old Dominion 0.9424608

ちなみに同じ計算方法で過去5シーズンの男子トーナメントの予想を作り、実際の結果と突き合わせて対数損失を求めてみたら、以下のような結果になりました。そんなには悪くなさそうです。昨年のコンペの結果を見ると、上位は対数損失が0.5台だったので上位に入るのは難しそうではありますが。

シーズン 私のモデルの対数損失
2014 0.6867621
2015 0.6479138
2016 0.6332666
2017 0.7007685
2018 0.6863598

なおやり方を真似した訳ではないのですが、私こういった勝敗予想の何たるかがあまりわかっていなかったので、いつもTwitterで勝敗予想を発表されているkonakalabさんの論文を参考にさせて頂きました。この分野に興味がある方にはおすすめできる面白い論文です!

最後になりますが、別にデータから求めずヤマ感でやっても勝敗予想って面白いはずですよね。Bリーグのチャンピオンシップでも手軽に似たようなことができないか、ちょっと検討しています。参加者の皆さんには確率だけ提出してもらえばよいだけなので、そんなに手間なくできるはずです。

今季の序盤20ゲームと中盤20ゲームを比較してみる

いよいよ本日よりB1のゲームが再開します。レギュラーシーズンは残り20ゲームですね。ポストシーズンに向けてどのようなドラマが待っているでしょうか。

代表ブレイクのおかげで各チームとも色々な修正に取り組む時間はあったのではないかと思います。代表選手のいないチームはより濃度の高い練習をすることができたのではと思いますので、終盤戦の番狂わせのようなものも期待したいところです。

丁度レギュラーシーズンの最後の1/3が始まることになりますので、この記事ではシーズン最初の1/3と真ん中の1/3のデータを比較してみましょう。いくつか指標をピックアップしました。

eFG%

おなじみのeFG%(スリーポイントの成功は1.5本と換算して求めたFG%)を見てみましょう。

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琉球ゴールデンキングスが値を落としています。琉球は最初の20ゲームは15勝5敗と好調だったものの、次の20ゲームは10勝10敗となっており苦戦を強いられています。対戦相手もろもろの影響はもちろんあると思うのですが、一番の要因としてはやはり選手の怪我だと思われます。

下の図は選手のプレー時間をヒートマップで表現したものですが、20ゲーム目あたりでブラウンが離脱し、その後にスコットが離脱しているのが分かると思います。このふたりの離脱が相当なダメージであることは想像に難くありません。

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ブラウンも復帰しましたし、熊本ヴォルターズからモリソンを獲得したようなので、またここから調子を上げてくることに期待したいですね。

スリーポイント試投数

スリーポイント試投数(成功数ではなく)について見てみましょう。話が逸れるかもしれませんが、基本的に成功数よりも試投数のような「結果ではなく意思が表れる値」の方が好きです。

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大阪エヴェッサが目に見えてスリーポイントをよく打つようになっています。後半だけを見れば名古屋や新潟と並んでトップクラスにスリーポイントを打つチームとなったようです。

大阪の場合は特に起用される選手に大きな変更があったという印象ではないので、これは戦術レベルで何かオフェンスに変更があったと推測しています。

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逆に栃木ブレックスはスリーポイントの試投数が減少しているようですね。今季は遠藤をはじめとしてスリーポイントが好調なイメージはありますが、こちらもオフェンスのシステムに何かしらの修正が入ったのかもしれません。

オフェンスリバウンド取得率

オフェンスリバウンド取得率は「結果」的な側面も「意思」的な側面も併せ持つ値だと思っているのですが、いずれにせよ好きです(笑)

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以前にも取り上げていますが、シーホース三河のオフェンスリバウンド取得率が劇的に上がっています。かなりの変化ですね。シーズン中盤でミークスが加入し、かつバッツがゲームに戻ってきた影響が大きそうです。逆に前半はかなり暴れていた印象のあるサザランドのプレータイムは減少していますね。

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こちらでも栃木ブレックスの値が減少しています。同チームはとにかくリバウンドに優れているチームなので、ここには何かしらの意図を感じます。

ちなみに京都にも改善が見られていますね。同チームは今季はディフェンスリバウンドも含めてかなりリバウンドで苦労しているようなので、これは単純に良いニュースではないかと思います。

得点

最後に単純に得点を見てみましょう。

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伸ばしているチームはいくつかあるのですが、個人的には三遠ネオフェニックスの向上に注目しました。ここにはやはり、中盤に三遠ネオフェニックスに戻ってきたチルドレスの影響が大きいと思います。

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現時点で試合平均20点を稼いでいるチルドレスですが、ボールを持たせておくと個人でオフェンスをクリエイトできるタイプの選手なので、本人の得点力のみに限らない好影響を三遠ネオフェニックスのオフェンスにもたらしていると思います。

まとめ

レギュラーシーズン最後の1/3に備えて、最初の1/3と真ん中の1/3のデータを見てみました。当たり前のことではありますが、やはり選手の出入りによる影響が大きいのかなという印象です。その意味ではもう選手を加入させることは出来ませんので、最後の1/3は戦術での修正のみで戦い抜いていく必要があると言えそうです。