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2019-20のプレータイムシェアを分析してみる(サンロッカーズ渋谷がすごい)

各チームがどれくらいタイムシェアをしているのかを指標化したくて、2018-19シーズンに以下のような記事を書きました。

ジニ係数という経済の分野でときどき使われる指標を使ったのですが、簡単に言えば「総プレータイム200分がベンチ入りしたメンバーに均等にシェアされれば0、スターターの5人に独占されれば約0.583(ベンチ入が12人の場合)」という指標です。

もっと簡単に言うと低くければ低いほどプレータイムがシェアされているという指標です。興味がありましたら、上の記事を参照して頂ければより詳しく書いてます。

2018-19シーズンは常時オンザコート2が導入され、その結果タイムシェアがされなくなる傾向が見られました。常時オンザコート2の運用2年目となりました今シーズンはどうなっておりますでしょうか?見てみましょう。

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まずですが、目立ってサンロッカーズ渋谷のタイムシェアが進んだようです。今シーズンは戦績もここまでとても好調ですね。伊佐HCがシーズン開始から指揮を執るのは今季が初めてなので当たり前かもしれませんが、とにかく昨季までとは違うバスケを展開している様です。

サンロッカーズ渋谷の今シーズンのプレータイムをヒートマップにしてみると、すごくきれいです。3人の外国籍選手が入れ替わりでベンチ入りしているのもとても良いですね。

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次に指標の値の低下が目立つのはアルバルク東京なのですが、これはご存じの通りそもそもベンチ入りの人数が少ない事によるものです。リーグに怒られるくらいの人数になってしまっている為、現段階ではあくまで参考程度に見ておいて下さい。

全体的にタイムシェアは昨シーズンよりされていると言ってもよさそうですが、レバンガ北海道、横浜ビー・コルセアーズ、エヴェッサ大阪については逆に寡占化が進んでいるようです。

実はレバンガ北海道は2017-18は一番タイムシェアがされているチームだったのですが、ここ2シーズンでどんどん寡占化が進んでしまっています。

次にB2です。

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青森ワッツ、福島ファイアーボンズ、西宮ストークス、熊本ヴォルターズは昨シーズンよりもかなりタイムシェアをしてきています。各チームそれぞれの事情はまったく理解していないのですが、いずれにせよ個人的には素晴らしことだと思っています。

一方でバンビシャス奈良は随分とプレータイムの寡占化がかなり進んだようです。あまりゲームを観ていないのですが、スタッツのサイトによるとフィッツジェラルドとマンガーノが試合当たりのプレータイムでそれぞれ2位、3位となっているのは影響が大きそうです。

今シーズンも気が付けば1/4が終わろうとしています。各チームともチームのパフォーマンスを最大限に引き出すために様々な手を打っていると思います。その中でタイムシェアの具合がどう変わっていくのか、また適当なタイミングで確認してみたいと思います。

書評「バスケットボールの戦い方」(佐々宜央)

バスケットボールの戦い方 [ピック&ロールの視野と状況判断] (マルチアングル戦術図解)

バスケットボールの戦い方 [ピック&ロールの視野と状況判断] (マルチアングル戦術図解)

琉球ゴールデンキングスのヘッドコーチとしてお馴染みの佐々宜央さんによるバスケの、というかピックアンドロールの解説書です。

よく比喩で「〇〇について本気で語りだしたら、それだけで本が一冊書けてしまう」というような言い方をすることがあると思うのですが、本書は本当にピックアンドロールについて本を一冊書いてしまったという書籍です。ピックアンドロールの専門書です。

でも安心して下さい。「専門書」と聞いて想像するような堅苦しさも、難しさも、複雑さも一切になく、むしろタイトルにあるようにマルチアングル(各登場人物それぞれの視点)による図解が中心となっていて、非常に分かりやすい内容となっています。

表紙の絵にあるような3Dっぽいビジュアルが独特で、よく使われるバスケットコートを真上から見たような2Dの解説よりも分かりやすいです。カラーも登場人物を区別するのに使われていて、それも大きく理解のし易さに貢献しています。

それでもやはり専門書なので内容は濃厚です。例えばピックアンドロールをするときのボールマンはどちらの足を軸足にしてボールを受けとるべきか、スクリーナーがゴールに向かってロールするときは前向きにロールするべきか、後ろ向きにするべきか、そんな事まで非常に細かく考え方が解説されています。

バスケを実際にプレーした経験がなくても、例えばいつも見ているBリーグのゲームをもっと理解したい、知りたい、というファンの方にも楽しんでもらえる一冊に仕上がっていると思います。もちろんバスケを純粋に向上させたいプレーヤーやコーチの方にも素晴らしい内容ではないかと思います。

余談ですが、私個人がどうしてこの本を購入しようかと思ったのか少し書いてみたいと思います。

簡単に言うと、ピックアンドロール関連のものをはじめとして、少しバスケットボール関連の用語を自分の中で更新しておきたいというのがありました。

「リバウンド」、「キックアウト」、「ボックスアウト」、こうした用語は既にバスケファンの間でも共通言語として浸透していると思いますし私も正しく使用できる自信はあるのですが、例えば「アイス」、「ハードショー」、「ポップ」、そういった用語は私の中で理解が曖昧になったままでした。

私は決してスポーツの専門用語や戦術の理解が楽しく観戦するために必須だという立場ではありませんが、近年バスケが注目されてきたことにより、私のような素人が書いているものも含めてバスケコンテンツの内容が多様化、詳細化し、上述の「共通言語」が次のレベルに進みだしている感覚があります。

ライト層、初心者、カジュアルファン、呼び方は色々とありますが、いずれにせよそういった方々への窓口は常に広く開いている必要があると思っています。一方で、既存のファンの中では徐々にこの「共通言語」を育てていく活動もバスケの発展の為には大事なのかな、と思ったりもする今日この頃です。

そのような流れの中で、もう少し色々と理解した方がよりバスケの観戦を楽しめるだろうという結論に自分の中で達したので、この書籍を購入した次第です。似たような書籍も買うかもしれません。ジェッツの大野ヘッドコーチの書籍も面白そうです。

本書は用語の解説はもちろん、さらに内容は踏み込んでいて、例えばサイドとエルボー(ちなみにこれも正確にはどこを指すのか曖昧に理解していました)ではピックアンドロールに関してどのような考え方の違いがあるのか、そういう解説もあります。

細かい解説を理解しようと読みながら、各チームはこんなところにまで拘って日々の練習をしていたり、本番のゲームの中でそれを状況判断しながら実践してるのかと考えると、本当に頭の下がる思いにもなります。

そして本書を読んでいると、早く次のバスケのゲームが観戦したくなりますね。もちろん、見たいプレーはピックアンドロールです。