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「〇〇タイム」は本当にあるのか。2018-19シーズンのベストクラッチプレーヤーを調べてみた。

今さら2018-19シーズンの話題で恐縮ですが、同シーズンのクラッチタイムに活躍した選手たちを調べてみました。

ゲームがどちらに転ぶか分からない終盤の緊張感、バスケ観戦の最高の醍醐味ですよね。そんなときにボールを任されるのがクラッチプレーヤーであり、そんなプレーヤーこそがチームのエースと呼ばれるに相応しいでしょう。

ここではクラッチタイムを以下のように定義しました。ちなみにNBAでもクラッチタイムの基本的な定義は同様のはずです。

  • 4Qの残り5分以降(延長戦までもつれれば延長戦も含む)
    かつ
  • 得点差が5点差以内

ふたつ目の条件ですが、7点差を5点差につめるシュートはクラッチタイムのプレーではなく、逆に5点差を7点差に拡げるシュートはクラッチタイムのプレーです。そういうイメージです。もちろん5点差を3点差につめるシュートもクラッチタイムのプレーです。

ふたつ目の条件により、毎試合に必ずクラッチタイムがあるとは限りません。大きく点差が開いてしまった場合、クラッチタイムなく試合が終わることになります。

では見てみましょう。以下はBリーグ公式ページのPlay by Playのデータから、上述の条件で抽出したクラッチタイムのプレーを抜き出し、そこから累計の得点順にベスト20の選手を並べたものです。

チーム 選手 得点 試合数 (*1) FGM FGA FTM FTA FGA / Team FGA (*2)
新潟 ダバンテ・ガードナー 108 27 34 57 40 47 35.2%
京都 デイヴィッド・サイモン 104 34 44 79 15 27 31.1%
京都 ジュリアンマブンガ 97 34 28 67 34 45 26.4%
横浜 川村卓也 91 32 28 64 24 27 33.2%
栃木 ライアンロシター 86 28 31 73 14 25 30.3%
SR渋谷 ライアン・ケリー 81 33 24 59 31 42 29.9%
SR渋谷 ロバート・サクレ 75 29 22 51 31 36 25.9%
富山 レオ・ライオンズ 73 23 22 46 27 30 30.1%
栃木 ジェフギブス 69 26 19 40 31 34 16.6%
富山 ジョシュア・スミス 68 21 22 36 24 36 23.5%
川崎 ニックファジーカス 66 29 26 52 11 12 26.8%
名古屋D マーキース・カミングス 64 13 20 38 20 31 22.1%
秋田 ジャスティン・キーナン 58 22 12 34 33 44 28.6%
滋賀 ガニ・ラワル 58 20 26 47 6 13 22.2%
SR渋谷 ベンドラメ礼生 54 32 20 39 7 11 19.8%
富山 宇都直輝 53 20 14 35 24 32 22.9%
三遠 ウィリアム・マクドナルド 53 19 20 34 13 17 29.1%
京都 岡田優介 53 30 13 29 17 21 11.4%
琉球 ジェフ・エアーズ 51 19 16 30 15 17 15.3%
川崎 バーノン・マクリン 50 25 21 29 8 21 14.9%

※1 試合数はクラッチタイムにその選手の出場が確認できた試合数です。クラッチタイムに出場していても、スタッツに残るプレーを一切しなかった場合、カウントされていません。

※2 FGA over Team FGAはクラッチタイムに所属するチームが打ったFGAの内、何%がその選手のFGAだったのかを表しています。

1位は言わなくても分かっていましたよねガードナーです。ただ特筆すべきはフリースローです。クラッチタイム中に47本のフリースローを得て、その内40本を決めています。Bリーグファンにはお馴染みの光景ですが、こうしてみるとやはりすごいです。

サイモンとマブンガのコンビが次点ですが、実は2018-19シーズンのB1で一番クラッチタイムがあった試合数が多かったのが京都ハンナリーズでした。よってこの両エースのクラッチタイムにおける得点が伸びています。18位には岡田優介の名もあります。

日本人トップはやはりこの人、川村卓也でしたね。幾度となくクラッチタイムでチームを救ってきたプレーヤーですが、やはりそれはスタッツにも表れているようです。あとカミングスは13試合しかクラッチタイムに出場していないのにランクインしてます。すごい。

B2はこんな結果になりました。

チーム 選手 得点 試合数 (*1) FGM FGA FTM FTA FGA / Team FGA (*2)
金沢 デンゼル・ボウルズ 91 30 34 58 23 29 29%
群馬 トーマスケネディ 90 20 31 69 20 22 36.1%
香川 テレンス・ウッドベリー 87 25 30 57 20 24 33.9%
西宮 谷直樹 78 27 22 43 23 26 21.6%
広島 ジャマリ・トレイラー 78 26 21 43 35 46 21.5%
愛媛 アンドリュー・フィッツジェラルド 78 23 24 55 30 39 30.7%
FE名古屋 ギャレット・スタツ 76 24 28 49 19 28 21.6%
FE名古屋 ジョシュ・ホーキンソン 74 30 21 45 30 37 19.8%
広島 朝山正悟 72 26 22 61 17 27 30.5%
信州 石川海斗 69 22 23 54 13 19 30.5%
青森 カレン・ルッソ 58 20 19 52 15 25 33.8%
信州 ウェイン・マーシャル 58 18 15 27 26 35 15.3%
西宮 ブラッドリー・ウォルドー 56 18 18 28 20 30 14.1%
熊本 古野拓巳 56 23 15 35 18 20 21.3%
熊本 チェハーレス・タプスコット 55 22 18 31 17 22 18.9%
金沢 ライアン・リード 55 30 23 45 7 13 22.5%
西宮 ドゥレイロン・バーンズ 54 27 18 46 9 12 23.1%
仙台 ダニエルミラー 53 26 20 27 13 16 19.6%
仙台 ジェロウム・ティルマン 52 17 15 30 19 22 21.7%
山形 ウィル・ヘンリー 47 14 17 33 12 18 19.1%

日本人トップは西宮ストークスの谷直樹でした。西宮のクラッチタイムにおけるシュートの20%以上を任されるエースですね。日本人では他には広島のベテラン朝山、現在は熊本の石川、そして現在は広島に移った古野など、おなじみのメンツもいます。

1位のケネディはガードナーと傾向が似ている感じがしますね。チームのシュートの35%以上を託され、フリースローをもらって確実にそれを決めきる。頼れる得点王というのはそういう存在なのかもしれません。

さて、2019-20シーズンはどんなクラッチタイムのプレーが飛び出すでしょうか。ヒリヒリしたあの緊張感。たまらないですよね。

直近2シーズンでファウル数は減っている。B1よりB2の方がファウルが多い。

すごく小ネタです。TwitterのTLでファウル数が話題になっていたので。

Bリーグの最初の2シーズンとその後の2シーズンを比べると、1試合で起こるファウルの数は減少しているようです。

2018-19シーズンよりアンスポ絡みのFIBAルールの改定を受けて所謂「ファウルゲーム」が出来ない、というかやりづらくなったかと思いますが、そのせいなのか、外国籍選手起用のレギュレーション変更のせいなのか、もしくはその両方でしょうか。

下は1試合当たりのファウル数(両チームの合計)を試合時間(分)で割ったものです。延長戦も考慮に入っています。

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1分当たり0.92回ほどだったのが、0.85回くらいまで減っていますね。1試合だと2〜3回くらい減っている計算になるので、結構な減少だと思います。

あと豆知識ではありますが、どうもコンスタントにB2の方がファウル数は多いみたいですね。これにはあまり上手い説明は思いつきません。どなたか詳しい人がいたら教えてください。

以上、小ネタでした。

データで観る川崎ブレイブサンダースのセカンドユニット

この記事は川崎ブレイブサンダース Advent Calendar 2019の第1日目に寄稿するものです。昨年に引き続き先頭バッターに立候補させて頂きました。よろしくお願い致します!

セカンドユニットに注目してみる

先日のインタビューで篠山竜青は「(今季は)不動のスターティング5の人もいなければ、セカンドユニットという考え方もない。」と答えたそうです。確かに今シーズンは色々なメンバーの出場を見ている気がします。

先日行ったプレータイムシェアの分析においても、確かに川崎ブレイブサンダースは昨シーズンよりもタイムシェアが行われているという数値が出ていました。篠山の言葉通りですね。

この記事ではそんな川崎ブレイブサンダースのセカンドユニット、ベンチメンバー、まあ呼び方は何でもいいのですが、スターターではないメンバーについてのデータを見てみたいと思います。

スターターとベンチメンバーの推移

さて今シーズンの選手起用はそもそもどんな感じでしょうか。過去4シーズンと合わせて、スターターの選手とベンチ入りの選手の推移を見てみましょう。赤がスターターで青がベンチ入りのメンバーです。

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過去シーズンと比べて今シーズンは随分と流動的ですね。不動のスターターと呼べそうなのは今のところファジーカスと篠山くらいです。

藤井、辻、長谷川、カルファニ、ヒース、熊谷、大塚が適宜スターターとして起用されているようです。前述の「セカンドユニットという考え方もない」という篠山の言葉通りですね。

ちなみに過去3シーズンと比べてみると、スターターとしての起用という意味で一番大きな変化があったのは長谷川技ですね。ここまではまさに不動のスターターと言っていい存在だったと思いますが、今シーズンはベンチからの試合に臨むことも多くなっています。

ベンチメンバーによる得点

次にベンチメンバーによる得点を見てみましょう。ここでは総得点に占めるベンチメンバーの得点をシーズンごとにプロットしてみます。

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外国籍選手と帰化選手起用のレギュレーションが違う(そしてファジーカスもまだ外国籍選手だった)最初の2シーズンとの比較は少し難しそうですが、条件のほぼ同じ2018-19シーズンと比較して比率はかなり上がっています。

今シーズンは中央値、累計どちらで観ても約33%、つまり全体の3分の1の得点をベンチメンバーで挙げていることになります。

先ほどの図をちょっと改良して、〇の大きさでその試合における得点を表すようにしてみると、今シーズンはこんな感じになります。

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カルファニ、ヒースはもちろんのこと、今シーズン絶好調の藤井、移籍組の大塚、熊谷がそれぞれベンチから出場して得点を重ねているのが分かります。

ファジーカスの得点力は相変わらずなものの、まだ今シーズン30点以上のゲームはないようですね。そこもベンチメンバーの得点比率向上に大きく影響しているはずです。

ベンチメンバーの出場時間

タイムシェアの話と若干かぶってしまいますが、次にチームの総出場時間に(延長がなければ5人が40分のプレーをするので200分)おけるベンチメンバーの出場時間の割合を見てみましょう。スターターが150分、ベンチメンバーが50分なら25%です。

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こちらも昨シーズンから比べて大きく上がっていますね。ルールにより交代をある意味で強制された過去のシーズンにせまる数値が出ています。中央値が40%に迫る勢いなので、ベンチメンバーは合計で80分弱ほどプレーしているようです。

これは川崎ブレイブサンダースだけではありませんが、昨シーズンと同じレギュレーションでプレーしているものの、選手の起用についてはかなり考え方が変わってきたチームが出てきたと個人的には感じています。そういったチームが結果を出せば、必然的に他のチームにも考えが浸透するのではないでしょうか。

今シーズンの川崎ブレイブサンダース

篠山の言葉の通り、そしてデータにも出ているように、今シーズンにの川崎ブレイブサンダースにおいてはスターターとセカンドユニット(ベンチメンバー)の境界線は曖昧です。とても流動的です。

とは言え、やはり常にベンチから試合に臨むのメンバー、出場時間の限られるメンバーがいるのも事実です。

そして私達は、そういった選手の活躍に心を震わせます。それもスポーツ観戦の大きな楽しみのひとつだと思います。先日公開された動画「OVERTIME -TIP OFF-」でも青木保憲の活躍が大きく取り上げられていました。

正直シーズン前に川崎ブレイブサンダースの編成が固まったときは、今シーズンも昨シーズンからあまり変化せず苦戦するだろうなと予想していました。しかし蓋を開けてみればここまでは快進撃とも呼べる内容で川崎は勝ち進んでいます。

その快進撃を支えている要素はいくつにも分解して説明することが出来そうですが、その考察の一助として、セカンドユニットの起用と活躍について取り上げてみました。

私はロスターの選手それぞれに明確な役割があるなと感じることができるチームが好きなのですが、今シーズンの川崎にはそれを感じさせるものがあるように思います。

では、以上です。お読み頂きありがとうございました。Go! Go! サンダース!!