
- 作者: ミルトン・フリードマン,村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/04/17
- メディア: 単行本
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本書を読んでいる間、常に頭の中を流れていた言葉がある。市場は我々より頭がいい (The market is smarter than we are) というもの。別に本書のどこかに書いてあった訳ではないのだけれど、本書を通して著者が我々に訴えていることを一言でまとめてしまえばそういう事なのだと思う。僕なんかが改めて言及する必要のないくらい本書は既に名高いが、目を通してみた感想はやはり「名著だ」ということにつきる。本書の感想としてはよくあるものだが、初版が1962年だということには驚きを隠せない。なぜなら現在日本や世界が喘いでいる問題の多くが本書では論じられているからだ。
翻訳が良いのかもしれないが*1、とにかく著者の語り口はシンプルで明快である。フリードマンは本書の中で次々と、公共事業をはじめとするいわゆる大きな政府路線が如何に経済的に間違っているものなのかということをズバズバ斬っていく。その刀は単純な公共事業や金融政策のみならず、教育制度や職業免許制度にまで向けられる。今までこれほど自由というものに拘っている人間を僕は見た事がない。自由主義者とはまさにこういうことを言うのであろう。僕は経済はド素人だし、例えば社会福祉国家を目指そうとする人の主張に耳を傾けたことすらないが、ひとつの実験として、今後の経済をまずは自由主義者の立場から見てみようと思う。気分だけはフリードマン、ということで。
単純で明快だと上述したが、それでも理解できない部分はいくつかあった。これだけの本なので、もう何度か目を通す事で理解出来ればと思う。まったく経済に興味のない人でも、第6章の「教育における政府の役割」は読んでみてもらいたいと強く思った。まず分かり易い話だし、フリードマンが信じる自由主義というものがどういったことであるかを感じるのにも丁度いいし、何よりここで論じられている教育バウチャー制度は非常に魅力的な提案だ。立ち読みできそうな長さの章なので、是非ともちらっとご覧下さい。
最後にもう一度だが、市場は僕たちより遥かに頭がいいのだと思う。よって市場を公正に働かせることが、経済の、ひいては我々の幸福にとってとても重要ななのだと思う。おそらく政府の役割とは、そのような市場の正常な作用を守ることと、資本主義では解決できない問題や、資本主義の副作用に対処することなのだと思う。
*1:これだけの本なので、原著も購入してみたいものである