ベンジャミン・フランクリン「フランクリン自伝」

フランクリン自伝 (岩波文庫)

フランクリン自伝 (岩波文庫)

こんな読後の感想は何か妙に思うが、この本を子供の頃に読んでおけば良かったという感想と、いや読まずにおいて良かったという両方の感想を持った。つまり凄く強い影響力を持つ本のように僕には感じられ、二十代最後の年を謳歌している自分にもそれなりに影響を与えてしまうような本だから、感受性豊かな頃に読んでいたら「自分もこんな風に生きなければ駄目だ」とか「こんな風に生きていくなんてまっぴらごめんだ」とか、とにかくそういった強い思い込みを持ってしまったに違いない。その思い込みが良い方向に出てくれれば万々歳だけれど、なんか悪い方向に行っちゃったらとことん行っちゃいそうな、そういうある種のストイックさ、清貧さ、一直線さがこの本には感じられる。
僕は元来ストイックな生き方や勤勉さというのが好きなタイプであるので、フランクリンの生き方には非常に好感を持ったものの、その一方でいわゆる現代的な感覚、という曖昧だが自分の心の中にあるそんな部分と、彼の生き方の間にあるギャップには違和感もおぼえた。あーでも彼の時代に生きた他の人々は本書から察するに、今僕が書いた「現代的感覚」というのは持ち合わせていたように思うから、これを現代的感覚とか呼んでしまうのは多少おかしいか。まあでも生きていくこと、とか生活していくことというものに割り当てるエネルギーは、どう考えても現代人方が少ないであろうと思うから、やっぱり現代的感覚なのかもしれない。
なんかベンジャミンが議論の方法を模索している辺りなんかは思わず「お前は俺か」くらいに思ったりもしたし、その他引用したいなぁと思わせる素晴らしい箇所がたくさんあったのだけれど、基本的には名著だと思うので、気になった方には是非自分で購入して読んでもらいたし。軍事の話が出てくるあたりからはあまり面白くないと感じた。あとあれだ、酒に溺れるのだけはやめよう、と思った(笑)