
- 作者: 高野登
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2005/09/06
- メディア: 単行本
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先日同ホテルに滞在してみたことをきっかけに購入。リッツ・カールトンが大事にする精神を様々なサービスのエピソードと共に説明している。この手の本(と一括りにしてしまっては著者に悪いかもしれないが)が大抵そうであるように、実践的なノウハウ本ではなく、何と言うか抽象化された「心、精神、信条」なんかを語る本であるため、どんな仕事に就いている人間でも参考になる反面、書かれていることは極めて当たり前の事の固まりである。同ホテルが何らかのノウハウによって成り立っていないのと同様、「どのような精神で仕事に望めばいいか」というところにもコンピテンシーがある訳ではなく、このような理想を追求する事が出来る従業員を雇い、頑張ってもらい、成長させるといったサイクルを回す事ができるシステムを作った、というところに競争力があるのであろう。様々なエピソードには思わず拍手を送りたくなるようなものも多いが、これらの例の多くにはそれなりにコストがかかっている筈であり、それらのコストは普通に宿泊したゲストの支払った宿泊代から得た利益で賄われているのかと思うと、ちょっと「ずるい」とか思う人が出てしまうのではないかというケチ臭いことを考えてしまった。同じ事が一日二千ドルの決裁権の話にも言えると思うのだが、こういった「あるお客様の為にした特別なサービス」なんかを大々的に宣伝してしまうと、「私はそんな風にサービスを受けなかった」というクレームが発生するのではないかとハラハラしてしまうのだが大丈夫なのだろうか。要は「私にも同じだけお金をかけて下さい」という主張をするゲストが出てきてしまうのではないかと。同ホテルのリピーターは明らかに富裕層だろうから、そういうクレームは発生しないのかもしれない。逆にこの辺りに興味が出ちゃったりするのだけど、まあこれはさすがに内部の限られた人間しか手に入らない情報だろうな。