シームレスな連携はなかなか達成されない

PCやゲーム機やTV等のホームエレクトロニクスと、携帯電話や携帯音楽プレーヤー等のモバイルデバイス、そして「あちら側」にあるネットサービスの三者間のシームレスな連携という意味では、まだまだ業界全体としてやらなければならないことが多くあるように思う。私の知っている限りでは、一般ユーザーから見ても「これはシームレス」と言えるものはまだiTunes StoreとiTunesとiPodの連携くらいしかない。携帯電話でさくっとPC上やflickrに蓄えた写真を検索して友達に見せることもまだ出来ないし、TVのCMで聴いてたまたま気に入った曲を即時モバイルデバイスに手早く購入することもできない。こういった作業というのは、実は今の段階でもやろうと思えば出来てしまうのだが、まだまだ一般の人から見れば技術者やこういったテクノロジーに興味の強い一部の人間だけのもので手が届かない、というのが正直なところだろう。そしてテクノロジーというものは、テクノロジーに強い興味の無い人間にまで届いてこそ輝くものである。
最近はこの三者に加えて、公共の場のエレクトロニクスとの連携も進んで欲しいと思ってもいる。例えば映画のチケットを購入する際にその映画に関する情報が自動的に携帯機器に登録されて、後でブログで紹介するときに使えるとか、そのブログを読んだ側の人間が、モバイルでその映画のチケットを購入し、近くの映画館に入るときはチケットレスで入れるとか。
こうした連携が中々進まない理由は技術的なものもあるだろうが、複数の企業、またひとつの企業内でも複数の部門が協力して進めていかなければならないというある意味政治的な理由も大きいだろう。AppleがMac、AppleTV、iPod、iPhone、iTunes等のラインアップを引っさげてこの分野をリードはしているものの、一社ではやはり限界がある。当然MicrosoftやSONYもこの分野での主要なプレーヤーになり得るだろうし、なりたいと強く思っていることだろう。競争原理は効率的な経済には不可欠だと思うけれど、覇権を握ろうとするあまりに独自の規格に走ったり、他者のデバイスに制限をかけるといった障害があまり発生しなければ、と願う。
いずれにせよ、まだまだハードウェア、ソフトウェア共に成さなければならないことはたくさんあるという訳だ。嬉しいことではないか。エンジニアにとっては。