そう言えば就職活動の時期だな、と思って何かそれ関係のエントリを書いてみたいと思ったのだが、就職活動でありがちだと思われるアルバイト経験から得たものというような内容を書いてみたいと思った。まあ結局就職活動をしている段階ではそんなの志望動機の単なる正当化だったりする訳だが、いまさら社会人の僕がアルバイト経験から得たものを振り返ることは、意外と就職活動中の学生に役立つかもしれないな、と微妙に先輩風を吹かせてみたいと思った。
さて、僕は大学生のほぼ四年間にワインを主とする店でウエイターをやっていたのだけれど、あの経験は何に活きているんだろう。明らかにボルドーワインとブルゴーニュワインの特徴の違いに関する知識だとか、トスカーナの赤ワインにはトマトソースパスタを合わせるのが定石だとか、青やら白やらのカビチーズを食べてみたいけれど、あんまりクセの強いのが嫌よという人には何チーズを薦めればいいのかとかそういった直接的な知識が現在役に立っているということはない。だが、こういった知識が何はともあれ会話や議論の源泉になるんだな、というか、議論や会話を進めていくときに、それに関連する知識が役に立つんだ、ということは何となくあの頃覚えた気がする。あと、知識がある種の信頼を生むというのもそうやって覚えたのかも。ワイン関連の知識がソフトウェア関連の知識に変わりはしたものの、今でも知識について同じ認識を持ってはいる。
あと、人が望んでいるであろうものを察知して、先回りして提供する喜び。あれはバイト時代に覚えたなあと今になって思う。例えば水を今まさに頼もうかってお客さんに水を提供したとき。そのときのお客さんの驚きと喜ぶ姿。あのときはひとつのゲームのようにそんなことを狙っていたけれど、例えばこれと同じことを同僚や上司にしてやろうって心掛けはなんかビジネス書にでも載ってそうな話題。それってなんか秘書っぽい仕事だねとイメージされたかもしれないが、例えば開発にしたって「こんなライブラリが欲しいけどな」→「そう言うと思って実装しておいたよ」みたいな仕事ってかなり評価の高いものになると思う。そんな楽しさもあの頃知ったのかもしれない。きっとそう思う。
あと僕は四年間近くもその店に居座っていたので、一店舗に必ず一人はいる社員みたいなアルバイトになっていた。だもんで結構指揮を執ることも多かった。そういう経験を経てリーダーシップを得ました、みたいな意見を言うのは容易いことだが、もう少し掘り下げてみると結局、人はアルバイトの様にしか扱わなければアルバイトくらいの働きしかしないし、アルバイト以上の扱いを心掛ければ期待以上に働いてくれる、ということを学んだ気がしている。これも形は違えど、いま僕が心掛けていることに非常に近い思想。自分が仕事を任される側としては、僕は店では相当信頼を受けていたので、それはバイトに任せちゃいけないでしょ、っていうよな仕事も結構やっていた。僕は喜んでそれをこなした。でもときにバイトだから立ち入れない仕事もあった。僕はそれに積極的に介入しようとは思わなかった。後輩に仕事を任せる場面でもそうだった。バイトだからとか新人だからとかそういう扱いをされている社員は結局ずっと受身のままの仕事態勢だった。丁度良い規模の責任を新人に与えてあげると、彼らは積極的にそれをこなそうとした。結果そういうバイトの責任範囲はどんどん広がっていった。まあ人ってそういうところあるじゃないですか。どうでしょう。
敢えてこのエントリに結論は出さない。誰かにとって何かしらの役に立つといいけど。