芳沢光雄「数学的ひらめき」

数学的ひらめき (光文社新書)

数学的ひらめき (光文社新書)

数学の伝道師、芳沢光雄先生の新書第三弾(僕が知る限りでは)。前二作と違い、今回は光文社新書からの出版。出版社が変わったことにより、少し内容にも変化をつけてきたようだ。

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まず単純に言って内容が難しくなった気がする。前の二作は算数だったとすれば、今回は数学という感じ。伝道師らしく、いつもどおりに明快さを心掛けた説明であるが、正直これくらいの内容だと実際にペンを動かしながら理解する必要があると思われ、そうなると新書というメディアは不向きではなかろうかと思う。正直前の二作ほど「おお〜、なるほど〜」といった感動が味わえるかといったらそうではなく、むしろきちんと数学と向き合いたい人間でないと読めない書籍であるという気がした。
この書籍に載っているような話を、芳沢先生に直接教壇に立ってもらって聞くことが出来れば相当興味深いであろうし、その機会を与えられた小中学生は本当に幸運だと思う。ただひとつ注文をするとすれば、芳沢先生が伝道すべき相手は学生ではなく、むしろ小中学校の先生なのではあるまいか(既にしていたらごめんなさい)。食糧不足の地域に食料を供給するよりも、食料を作り出す策の方が有効なのと同じ原理なのだが、先生にこそ「ああ、数学ってこんなに面白いんだ」、「数学ってこんなに面白く伝えられるんだ」という「ひらめき」が必要ではないかと思う。芳沢先生には是非、伝道師を増やす活動を心掛けて頂ければと思います。まあもちろん、教えた小中学生が将来そういう先生になる可能性というのもあるわけですが。

前二作の書評はこちらをどうぞ。

二十代は模索のときブログ : 芳沢光雄「算数・数学が得意になる本」
二十代は模索のときブログ : 芳沢光雄「数学的思考法」