
- 作者: 手嶋龍一,佐藤優
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 新書
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「へぇ〜、ついに幻冬舎からも新書が出たのか」と書店で眺めていたところ、こんな興味深い対談本を発見。この二人で面白い話にならない訳がないので即購入。
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「近年の日本は高い潜在能力を持ちながらも、インテリジェンス後進国である」というのが手嶋氏、佐藤氏両氏の共通見解のようで、米英のインテリジェンス機関と日本の比較、戦時に日本が秘密戦(佐藤氏によると、インテリジェンスの和訳に一番近い言葉がこれ)にて高い成果をあげた事例、インテリジェンスの増強がどれだけ今の日本に必要か、そして日本のインテリジェンスの能力を今後どのように高めていけばよいのかなど対談は多岐にわたり、その内容は大胆であり、興奮させられるものである。凄く簡単に言えば「男の子としてドキドキできる」内容なのだ。インテリジェンスオフィサー(インテリジェンスを総合的に扱う職業)は映画や小説に出てくるスパイ像とはずれがあるものの、男の子であればほとんどが憧れてしまうであろう職業なのだ。
手嶋氏と佐藤氏は現役時にはインテリジェンスの世界で関連したこともあるらしく、ときに利害が衝突し、互いに情報戦を仕掛けた間柄でもあるという。だがお互いに互いの能力は高く評価しているようであり、佐藤氏は「インテリジェンス養成機関の校長に手嶋氏を」とまで言っている。インテリジェンスの世界は広いものの、どこか緩いネットワークが存在し、特に東京というのは世界全体を見回しても相当なインテリジェンスが流れ込んでくる有数の都市のようだ。なのに日本政府自体はインテリジェンスに疎くなってしまっており、その悲しい皮肉を解消したいというのが対談の主な内容と言える。
佐藤氏はインテリジェンスオフィサーは「大学で講義が持てる程度」の高い教養を持つべきだと主張している。語学力はもとより、世界情勢を見極める眼を養うためには、宗教論や国際関係論、文化論などに対する高い教養が必要なのだろう。事実佐藤氏も手嶋氏も経歴を見てみると分かるとおり、アカデミックの世界で実際にやっていっている。
Wikipedia : 手嶋龍一
Wikipedia : 佐藤優
両氏の対談は「本当にこんな世界が世の中にあるのだろうか」と思わず首をひねる内容も多い。が、この対談の内容を咀嚼することにより、今後外交関係のニュースを見たり聞いたりすることが何倍も楽しくなる。本書はそういう本である。外交関連に興味がある方はご一読のほどを。
両氏の著作の書評は以下をどうぞ。
二十代は模索のときブログ : 国家の罠
二十代は模索のときブログ : ウルトラ・ダラー