極端に言えば、顧客は満足してなくてもいい

ユーザに極めて近い立場で仕事をしていると、当たり前かもしれないけど「顧客満足度」という旗の下に顧客至上主義になっていく。クレームを出してくるユーザに如何に対処するか、ユーザの負担をどうやって減らすか、ユーザに如何に喜んでもらえるか、これらのことが行動する上でのベースになっていってしまう。誰だって目の前で怒鳴っているユーザが居れば、そのユーザが世界の中心かと錯覚してしまうものだが、自社の利益ということを考えると、上記のような行動原理は必ずしも正しくないというか、間違いの場合が多いように思う。

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極端な話、ユーザが使っている商品に代替の危険がないのであれば顧客満足度など上げる必要はない。そういう状況では、労働力は新規顧客の開拓に使うべきである。代替製品はあるが、顧客に乗り換えられない事情がある場合も同様である。クレームに対処しても、商品の改善要望に対処しても、もともと離れていかないユーザに対してであれば、利益にならない仕事をしてしまったことになる。冷たいようだが、もしかするとそれは「仕事」とすら言えないかもしれない。
例えばスーパーやデパートの食品売り場の陳列を考えて欲しいのだが、あれはユーザにとっては非常に不便な並び方をしている。なぜかというと、誰もが必ず買う確立が高い玉子、牛乳、米などといったものが分散されて陳列されているからだ。これはユーザの利益を考えた陳列ではなく、スーパーやデパートの利益を考え、ユーザに食品売り場を歩き回らせる為の陳列であるというのは有名な話。我々はこのような陳列が気に食わないからといってその食品売り場に行くのを止めたりしない。だからこの策が可能なのである。もしこの陳列のデザインをユーザにべったりくっついて仕事をしてきた人間に任せたら、おそらく玉子や牛乳などはまとめてどこか一箇所に陳列されるだろう。それはユーザにとっては便利だが、会社にとっては利益にならないのである。
「顧客に満足して欲しい」というのはサービス大国日本に生まれた我々にとっては、むしろ自然な気持ちであると思う。おもてなしの文化は素晴らしいものだ。だが企業としての利益を考えたとき、果たしてどうなのか。一度自分の行動を分析してみる必要はあるだろう。