マイケル・ヒルツィック「未来をつくった人々」

未来をつくった人々―ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明

未来をつくった人々―ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明

  • 作者: マイケルヒルツィック,Michael Hiltzik,鴨澤眞夫,エ・ビスコム・テック・ラボ
  • 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
  • 発売日: 2001/09
  • メディア: 単行本
  • 購入: 6人 クリック: 358回
  • この商品を含むブログ (36件) を見る

敢えて言おう、全IT技術者(ナナメ読みで)必読と。

—–



イーサネット、GUI、オブジェクト指向プログラミング、パーソナルコンピュータ、レーザプリンタ。我々が今日こうしてインターネットにブログを書き、ソフトウェアを書いてお金をもらい、ググって様々な情報を探し出す、そういったことを可能にした技術の礎は全てここゼロックスパロアルト(PARC)から生まれた。その恩恵を実感する為にも、ざっと読んでおいて損はない。この本にはその歴史が記されている。IT技術者ならこの歴史は知っておくべきだろう。それは飛行機好きの少年がライト兄弟について知っておいた方が良いのと似たようなものだ。
PARCについて個人的に最も興味深いのが、やはりこれだけの偉大な研究開発の成果を残しながら、それが商業的には成功しなかったことだろう。本書にも記述があるが、世間にはこれを「ゼロックスが愚かだったからだ」とする見方があるが、果たして安易にそう見てよいものだろうか。
そもそも素晴らしい研究成果や発明が経済的な利益に必ずしも結びつくかと言えば、はっきり言ってそんなことはない。むしろ経済的な成功は、その発明や研究成果を、世間一般の人に分かり易い価値として「提供」した者に授けられるものである。あるときはそれはApple Computerであっただろうし、あるときはそれがMicrosoftであった。そしてそういった経済的成功をゼロックスが求めず(あくまで結果としてということだが)、研究者の自由な研究活動を尊重した結果、これらの成果がある。そう、あるときはそのような研究活動と経済的利益は相反する概念となってしまうのだ。
もし今までに存在した会社のどんな時期にでも入社できるとしたら、やはり設立当初のPARCに入所してみたい。そこでは日夜天才研究者達が、毎日「未来」を創造していたのだ。そのようなエキサイティングな環境が他にあるだろうか。