404 Blog Not Found :「頭がいい」のデフレ
私にとって「頭がいい」人というのは、「誰も質問していなかった質問をする人」だ。「誰も答えてなかった質問に答える」も悪くないが、前者には劣る。
「質問をする」というのは「問題を出す、提起する」とも言い換えられると思います。「頭がいい」の話から逸れてしまうのですが、最近「エンジニアにとって魅力的な問題」を提起できる人間が日本に足りてないんじゃないのか、という思いがある。
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「日本にも優秀なエンジニアはたくさんいる」という話は色々と聞いていて、「ではなぜ日本から革新的な商品やサービスが生まれないのだろう」とずっと考えているのですが、どうもエンジニアに解くべき問題を提示できる人間がいないんじゃないか、という結論に達してきている。「それってどういう人間」と問われて一番最初に思いつくのがAppleのスティーブ・ジョブスです。Appleが素晴らしいテクノロジー企業であり続けているのは、彼がAppleのエンジニア達に、何度も魅力的な問題を提起してきたからではないだろうか。
ここは、マネージャーで差をつけられる領域だ。親が子供に言い聞かせるように、部屋を10分で綺麗にかたづけることはできないかもしれないけれど、良いマネージャーは問題をより面白いものに再定義してやることができる。スティーブ・ジョブスはこの点が特に長けている。高いスタンダードを持つというのもその一部だ。Macの前にも、たくさんの、小さく安いコンピュータがあった。彼は問題をこう再定義したんだ:美しいコンピュータを作ろう。それこそが、他のどんな鼻先のニンジンよりも、開発者達を駆り立てたんじゃないだろうか。
本和訳テキストの複製、変更、再配布は、この版権表示を残す限り、自由に行って結構です。 (「この版権表示」には上の文も含まれます。すなわち、再配布を禁止してはいけません)。 Copyright 2004 by Paul Graham 原文: http://www.paulgraham.com/gh.html 日本語訳:Shiro Kawai (shiro @ acm.org)
日本での例と言えば、SONYの故盛田昭夫氏なんかが思い浮かんだりするが、ウォークマンも現場のエンジニアから生まれたアイデアだと読んだし、あまり適切な例を知らない。特に最近の例、と言われるとまったく思い浮かばない。勿論スティーブ・ジョブスを例にするなんて「そんなやつ、何処にも滅多にいねーよ」と言われてしまいそうだが、あそこまでのレベルじゃなくてもいい、例えば魅力的な問題を提起してくれる役員が自分の会社にいるかどうかを考えてみるといいと思う。
この役目は非常に難しい。ヘタすればエンジニアの反感を買いかねない立場だし、曖昧に過ぎる問題提起(「もの凄いネットサービスを作れ」とか)、非現実的な問題提起(「大阪まで30分で行ける乗り物を作れ」とか)に陥ってしまう場合も多いと思う。が、万人にひとりでも、億人にひとりでも、素晴らしい問題をエンジニアに提供できる人間が生まれないと、なかなか日本からイノベーションを世界に提示できる日は来ないのではないだろうか。