竹内薫「99.9%は仮説」

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

人はすぐ科学的根拠を求めがちである。それゆえに、意味も分からない専門用語を並べられたり、医者や教授などという肩書きの付いた人間の発言だったりすると、「科学的根拠がある」と信じ込み、ある商品や方法論を盲信してしまったりする。もしかすると科学を分かっていない人ほど、科学的根拠うんぬんの説明に弱いのかもしれない。

本書は世の中の色々な事象を例にとり(例えば飛行機が飛ぶ原理)、あえて「科学的根拠のなさ」を挙げながら「科学的に考えるとはどういうことか」について紹介した本である。タイトルにもあるように「仮説」というのが最重要キーワードであり、「如何に世の中が仮説で成り立っているのか」ということが読後には分かるようになっている。「科学」と聞くと拒否反応を示す方もいるかもしれないが、本書は非常に平易な内容である(著者もそこは気を遣ったことだろう)。あくまで「思考法」がテーマである。

著者は「科学史」を学ぶことの重要性についても言及していた。確かに現在学校教育にはそのように呼べる内容を何一つ教えていない(もとい僕は教えられなかった)。ある仮説が生み出された歴史的背景、それまでまかり通っていた仮説、それを信じていた人達が考えていた世界、それらを学ぶことにより、「いま自分達が学んでいることも、いずれ崩れ去るものかもしれない」というダイナミズムを感じることが出来るだろう、というような主張か。またそれを「自分にもそれを崩すことが出来る」という精神の芽生えも期待できるかも。「力学はニュートン。世界はこうなっている。はいじゃあ次は原子物理」的な授業ではやはり「疑う力」は育ちませんよねぇ。

最後に一つ。本書の最後に「マイナスイオンうんぬん」の科学的根拠の無さが、科学関係者の中で笑い話になっているというような話があったが、では科学関係者は「ブラシボー効果」についてはどのようにお考えか。ちょっと聞いてみたいと思った。