芳沢光雄「数学的思考法」

数学的思考法―説明力を鍛えるヒント  講談社現代新書

数学的思考法―説明力を鍛えるヒント 講談社現代新書

連休と言えば読書、旅行と言えば読書。連休中に旅先でする読書は格別だと思う。知らない街のお洒落なカフェや、すがすがしいビーチでする読書は何にも代え難い。

さて連休中に読んだ本書だが、これもdanさんのentryを読んで購入したもの。どうもこういう数学の本が好きみたいで、タイトル見た瞬間から「買い」と思ってしまった。

本書はビジネス書にありがちな「数学的に論理を組み立てるには…」というようなハウツー本ではなく、現在の数学教育の持つ問題点を指摘しながら「このように数学を学んでいれば数学的な思考法が身につき、理系文系問わず、日々の生活の中で(仕事も含めて)数学的な思考法が役に立つ」というようなことを解説している本である。著者がもっともこだわっている(と個人的に感じた)「証明問題」に関しても、「粘り強く試行錯誤を繰り返すこと」の重要性を考えるうえで一つの良いトピックだと思う。社会人になって最も大事だと思った「粘り強く考えること」の重要性がこの本でも指摘されてて嬉しく思った。すぐ答えを求めがちな新社会人には、是非一読して欲しい部分である。

本書の読後感想として「学生の頃こういう本に出会っていれば…」的な意見はおそらく多数派だろう。僕自身もそのように感じなかったと言えば嘘になる。特に僕は高校時代に一度数学に挫折しており、その挫折感を引っ張ったまま大学に入学した為、理系だと名乗るのが恥ずかしいほど数学が苦手である(よくも受験に成功したものだが)。ただ僕は「学生の頃に…」的な意見を述べるにはまだ若すぎる年齢だ。今からだって十分数学はやり直せるのである。僕は数学的な思考法が出来る人間になりたいが、本音を言えば「数学が出来る人間になりたい」と思っている。数学に対する畏れと憧れは人一倍持っている僕だからこそ、本書の内容はとても身に染みた。もう一度数学を学びたい、そう思った。

二十代の皆さん、まだ何を始めるにしても早過ぎるくらいですよ。