データとバスケ」カテゴリーアーカイブ

各チームの得点をスリー、ペイント内、ペイント外、フリースローに分解して見てみる

今シーズンの各チームの得点を

に分解して見てみます。前に各選手の得点で似たようなことをやりましたが、それのチーム版です。

まずはB1のチームについて見てみたいと思います。

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個人的に一番気になったのが、新潟アルビレックスBBの2点(ペイント外)の割合が5.3%と他のチームに比べて非常に少ないことです。

私がバスケットをプレーしていたときはマイケル・ジョーダン全盛期で、ミドルレンジのシュートこそ至高という雰囲気があったように思います。

しかし現代のバスケットでは、ペイント内のシュートと比べて成功確率も高くなく、かつスリーのようにボーナスもないミドルレンジはあまり得策ではないと言われることもあります。

新潟アルビレックスBBもその考え方にに則ったバスケットをしていることが予想されます。ちなみに名古屋ダイヤモンドドルフィンズも同様だと思います。

どちらが正解という話ではないのですが、例えばペイント外の2点が20%もある滋賀とはかなり異なるバスケットをしている事が想像できます。

続いてB2を見てみましょう。

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今シーズン好調の信州ブレイブウォリアーズ新潟アルビレックスBB名古屋ダイヤモンドドルフィンズと似たような感じですね。

ここで気になるのは西宮ストークスのペイント内得点の割合が他と比べてかなり低いことです。B1も併せて唯一の30%台ですね。

今シーズン同チームのゲームを観る機会はまだないのですが、序盤にかなり不調であることは気になっていました。インサイドの得点力に課題があるのでしょうか。

ホーム観客動員数の昨シーズン比を見てみる

現時点でのホームゲーム観客動員数を昨シーズンのものと比べてみたいと思います。ここでは単純に平均を比較します。ちなみにB3 から昇格してきた八王子はデータを持っていないため対象外とさせて頂きました。

たまにはリーグ別に見るのではなくて、B1とB2を一緒に見てみたいと思います。結果の善し悪しでチームを並べてみました。まずは現時点で昨シーズンより増加しているチームを見てみましょう。

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仙台、川崎、熊本の3チームが昨シーズンから20%以上増加しており、全体を牽引しているようです。川崎についてはDeNA体制となったことにより様々な施策が取られている結果でないかと前に記事に書きましたが、仙台や熊本もどのような取り組みをしているのか、興味深いですね。

現時点で昨シーズン比で増加しているのはこの14チーム(八王子を除く35チーム中)にとどまりましたが、北海道や栃木などそろそろ箱がパンパンなチームもありますので、アリーナの問題さえ解決すればまだまだ伸び代はありそうなグループです。このグループにはいませんが、琉球ゴールデンキングスも同様ですね。

昇格組の秋田と福岡ですが、秋田は昨シーズンも多くの動員があったのでこれで良いとして、福岡の伸びはもう少し見たいところですね。こちらは先日大きめのアリーナに引っ越しをしたばかりですので、ここからの伸びには期待したいところです。

個人的には、失礼ながら普段あまり話題には昇らない愛媛オレンジバイキングスが気になっております。15%も伸びているのはすごいですね。こちらも取り組みには着目したいと思います。

次に残念ながら現時点では昨季よりも低くなっているチームを見てみましょう。ちなみに今シーズンは平日開催も多く、単純にこのグループが昨季より悪いとは言えません。

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まず目立つのは降格組の島根と西宮ですね。こちらも以前に記事で取り上げましたが、降格のインパクトは仕方のない面はあるものの、秋田のように降格をしたけれども大きく動員を下げなかったチームもあります。昇格ボーナスに頼るのではなく、真にファンのエンゲージメントを上げる施策が望まれます。

ちなみに上の福岡の例と比べると、昇格したときのインパクトよりも、降格したときのインパクトの方が大きいのではないかと思ってしまいますね。昇降格制度の是非は繰り返し議論されていると思いますが、こういった要因も制度の設計には重要かもしれません。

そして一番気になるのが降格したわけでもないのに大きく動員数を落としている福島、FE名古屋、そして群馬です。まだシーズンの半分であり、後半に動員数は多少は伸びてくる可能性があるものの、この下落はなかなか取り戻すのが大変そうです。Bリーグで規定されている「3期連続の赤字」にリーチがかかっているチームの名前もあり、今後の動員数の行方が気になります。

Bリーグの各チームはどれくらいスリーポイントシュートを打っているのか

NBAのスタッツページを軽く見たところ、今季ロケッツはスリーポイントシュートを1番打っているチームのようです。試合平均で43本も打っているようなのです。NBAの試合時間が48分であることを考慮して1.2で割ると、1試合40分換算で約36本ということになります。

Bリーグの方を見てみましょう。下の図はB1の各チームが今季のここまでの試合で何本のスリーポイントを打ってきたのかを箱ひげ図にしたものです。

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名古屋ダイヤモンドドルフィンズ新潟アルビレックスBBが抜けていますね。それでも中央値(箱の中の線)、平均値(赤の+マーク)ともに約25本という辺りですから、ロケッツと比べるとそこまではスリーポイントシュートを打っていないようです。

ただ両チームともこれは偶然多く打っているというわけではなく、もちろん戦略的なものだと思われます。下の図は両チームのスリーポイント試投数のここ3シーズンの推移を見たものです。

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新潟アルビレックスBBは明らかに本数の増加が見られます。もちろん選手の入れ替わりなどによる要因もあるとは思いますが、基本的には最近のバスケットのトレンドを考慮してのことでしょう。

名古屋ダイヤモンドドルフィンズの方は新潟ほど顕著ではないですが、少なくても75パーセンタイル(箱の上辺)は確実に増加の傾向にあるようですし、おそらく今季の終盤には中央値ベースでも昨季を上回るのではないでしょうか。

最後に(と言うとおまけみたいに響いてしまうかもしれませんが)、同じデータをB2の各チームについて見てみたいと思います。

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信州ブレイブウォリアーズ、非常に多いですね。中央値、平均値ともに30本にせまる勢いですから、新潟アルビレックスBB名古屋ダイヤモンドドルフィンズよりもスリーポイントを打っていることになります。

信州ブレイブウォリアーズはもともとかなりスリーポイントを打っているチームのようですが、今シーズンはそこからさらに打つようになったようです。今シーズン同チームは好調ですが、これと無関係ではないと予想します。

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書評「MLSから学ぶスポーツマネジメント」(中村武彦)

MLSから学ぶスポーツマネジメント (TOYOKAN BOOKS)

MLSから学ぶスポーツマネジメント (TOYOKAN BOOKS)

普段はサッカーにまったく関心のない私なのですが、アメリカのサッカー(メジャーリーグサッカー)には以下の2点から興味を持っていました。

  • ポテンシャルがありそうなのになかなか根付かない、という点でアメリカのサッカーと日本のバスケットボールは似ているのではという仮説を持っていた
  • 2002年から何度もワシントン州シアトルを訪れる中で、シアトル・サウンダースの存在感が増していくのを肌で感じていた

上記のような背景でずっと興味を持ってはいたものの触れずにいたアメリカサッカーなのですが、本書を書店で見かけたときに「これは買うべき本!」と直感してすぐさま購入しました。

そしてこれが大当たり。2018年で最高の読書になりました。ひと言でまとめるのであれば、BリーグやTリーグなど、新しくできたスポーツリーグの未来について考えたい人に大変おすすめの書籍です。

例えば私の場合、Bリーグを観戦する中で以下のようなトピックが気になっているのですが、本書はこれらに大きな示唆を与えてくれました。

  • 現在のようなオープンなリーグが好ましいのか。それともNBAや日本のプロ野球のようにクローズなリーグが好ましいのか。
  • 2007年にベッカムMLSに来たように、NBAのスーパースターがBリーグに来たらどういう影響があるのか。その元は取れるのか。
  • 自前のアリーナを持つべきなのか。持つとどのような好影響があるのか。その元は取れるのか。
  • “戦力均衡”はどうあるべきなのか。例えばひとつのチームがとびぬけて強くなるとそのリーグに悪影響なのか。
  • 選手の年俸はどの水準にあるべきか
  • 渡邊や八村がNBAでこの先活躍するとして、それをどうBリーグや国内のバスケット人気の向上に繋げていくのか
  • フロントスタッフにはどのような人材が望まれているのか。そこへの投資と選手への投資をどうバランスしていくべきなのか。

本書はMLSの事例はもちろんのこと、アメリカ4大スポーツの事例も交えながら、スポーツリーグの在り方について大変詳しく説明しています。スポーツリーグの専門書と呼んでいいと思います。

ふたつだけ、特に私が着目したトピックを紹介したいと思います。

MLS創設からベッカム獲得までは10年かけている

私も例外ではないのですが、おそらく多くの人がMLSの存在を強く意識したのは、ベッカムLAギャラクシーに入団した2007年ではないかと思います。

本書を読んで驚いたのですが、MLSの創設は1996年ですので、ベッカムの獲得までは10年以上の期間があったことになります。

LAギャラクシーMLSも、その期間にベッカム(のようなスーパースター)への投資はリターンが取れる投資だ」と確信できるだけの準備を整えてからアクションを起こしていることは注目に値します。

言い換えれば、ベッカム獲得は彼らにとってギャンブルではなかったのです。

投資に対するリターンをしっかりと意識しているところは如何にもアメリカ的ではありますが、同時に客を呼べるスーパースターを連れて来ることは万能薬ではないということも教えてくれる事例です。

この先に例えBリーグNBAのスターを連れてくる金銭的な機会があったとしても、それを活かすことができる環境が整っているのか、それはリーグもクラブもしっかりと検討する必要がありそうです。

本書で解説されていますが、MLSができる前に、NASLというサッカーリーグが北米には存在していました。諸外国からのスーパースター獲得に多大な投資をした人気チームがあったにも関わらず、このリーグは倒産に追い込まれています。MLSはこのNASLの失敗を礎にしている点も見逃せません。

バスケットボール・コーポレーションは日本版のSUMか?

本書を通してサッカーユナイテッドマーケティング(Soccer United Marketing、略してSUM)という会社とその活動が紹介されています。何度も出てくるので、著者の中に占めるSUMの重要性は推して知るべしです。

SUMはMLSの姉妹会社なのですが、「One sport, one company」をビジョンに掲げ、要はサッカーというスポーツの価値、存在、そういったものが北米で向上する施策なら何でも取り組もう、という会社のようです。

よって活動はMLSに関することだけに限定されず、例えばサッカーワールドカップの放映権を買い取り、それを国内のテレビ局に販売するような活動もやっていたり、海外人気クラブチームのUSツアーを取り仕切ったりもしていたようです。

実はこの書籍を読んでいる間に、このようなニュースがJBAから発表されてとても興味深く読みました。

ここで私の書くことはすべて推測なので見当違いかもしれませんが、この新会社はMLSにおけるSUMのような役割を果たす為に設立されたのではないかと思いました。リーグの枠組みに囚われず、バスケットボールというスポーツの日本国内での価値を上げていく為の活動をする為ではないかと。

例えばですが、先日激戦が終了しましたインカレやウインターカップは、既にある程度はコンテンツとしての価値があります。しかしこれをBリーグWリーグなどと関連させてさらにコンテンツの価値が高められるかと言えば、組織の垣根から難しい部分があるかもしれません。

今年のFIBAワールドカップや、渡邊や八村が活躍した場合のNBAもそうです。これらのシナジーから日本のバスケットの価値を高めることができれば、個々のコンテンツがそれぞれ独立してファンを獲得するよりもかなり大きな効果が見込めそうです。

SUMの活動のように、NBAや欧州のチームを日本に呼んでゲームをしてもらう。Bリーグのチームや日本代表と対戦してもらう。そういうコンテンツも考えられるでしょう。そういったときに、それぞれのプロパティにそれぞれのオーナーがいると、意思決定の遅れや大胆な施策が取れないなどの弊害がおきます。

2019年と2020年は色々な枠組みでバスケットの価値を向上させる可能性があるイベントがあります。その効果を最大限にする為にこの新会社は作られたのかな、本書を読んでそんな風に思いました。

ちなみにNBAの事になると、当然そこには楽天さんが絡む必要がありそうです。渡邊と八村のことがありますので、私はNBAは今後は日本のバスケットにとって今までよりも大きな価値を持つと予想しています。NBAというコンテンツを国内で最大限活かす為、きっと楽天とバスケットボール・コーポレーションは今後かなり接近するのではないでしょうか。

まとめ

長くなってしまいましたが、アメリカのサッカーにそもそも興味がある方はもちろんのこと、スポーツリーグというビジネスそのものに興味がある方には間違いなく学びの多い専門書です。わざわざ専門書という言葉を使うのは、本書がきちんとしたリサーチの下に書かれていると感じられるからです。

ここ3シーズンのB2観客動員数の推移を見てみる

前回の記事で、昇格していないのに仙台89ersの今季の観客動員数が伸びている、という例を紹介しました。

この記事では他のB2チームについても観客動員数の推移を見てみたいと思います。比較のためこの3シーズンすべてにおいてB2に属していたチームを対象としています。

各チームの動員数をシーズンごとに箱ひげ図にしたところ、以下のようになりました。

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気になった点をいくつか。

順調に動員を伸ばす茨城、広島、愛媛、熊本

中央値(箱の中の線)ベースで見て、左から茨城ロボッツ、広島ドラゴンフライズ、愛媛オレンジバイキングス、熊本ヴォルターズについてはこの3シーズンで順調に客足が伸びているようです。

愛媛については失礼ながらB2でも強豪チームという訳ではなく、必ずしもチームの戦績が集客に直結しない例となっています。

チームは絶好調も動員は伸び悩む信州

戦績との相関で言えば、今季は絶好調の滑り出しを見せている信州ブレイブウォリアーズは、集客を見るとそこまで好調ではありません。

SNSの運用を巡ってちょっとした騒ぎもあった信州ですが、せっかくチーム自体は好調なのですから、なんとかそれを動員増につなげる策を打ちたいところです。

動員が減少傾向にある群馬、青森、山形、FE名古屋、東京Z

動員は終盤に伸びてくる傾向がありますし、今季は平日開催が昨季までより多めなので、まだ昨季までとの比較に結論を出す時期ではありません。

しかし例えば群馬クレインサンダースと青森ワッツは、2016-17シーズンからずっと中央値が減少傾向にあり非常に気になるところです。

福島ファイヤーボンズ、ファイティングイーグルス名古屋、山形ワイヴァンズ、アースフレンズ東京Zに関しても、これまでのところ昨季比では動員に苦戦しているようです。

福島については経営状態についての会見もありましたし、なんとか動員を伸ばして欲しいものです。やはり収入の生命線はチケット収入ですからね。

まとめ

年平均で10%の動員数成長を目指すBリーグですが、今季はB2の動員数が鍵であると開幕前に報道があったと思います。B1では満席率がかなり高いチームも出てきているのでB2は確かに「伸びしろ」です。

いくつかのチームは私の想像を遥かに超えて動員数増に成功しているようで驚きましたが、一方でB2内で格差が拡がっている様子も見受けられました。各チームのこれからの創意工夫に期待です。

昇降格が観客動員数に与える影響はどれくらいか見てみる

2018-19シーズンも折り返し地点が迫ってきており、そろそろ昇降格が頭にチラついてきている方もいると思います。先日はJリーグの方でも昇降格が大きな話題になっていましたね。

この記事ではBリーグでの昇降格が観客動員数に与える影響を見てみたいと思います。B1とB2の間の昇降格のみ対象にしています。

昇格をすればチームの認知度やブランドイメージがアップし、それをきっかけにおらが町のチームを見に行こうという人も出てくると思います。対戦相手が人気チームになり、そのカードに魅力を感じて観戦される方もいるでしょう。

逆に降格をすれば上記と逆の事が起こりえます。既存のファンの方がいきなり離れていくとは思えませんが、今までなら5回観戦していたのが3回になる、みたいな影響はあると思います。それが積もると、やはり動員数にはダメージとなります。

そんな背景で以下のようなツイートをしたのですが、この記事ではこれをさらに細かく見てみようと思います。

下の図はすべてx軸がホームゲームでの観客動員数、y軸はその動員数があったゲーム数の密度です。要は山が高ければ高いほど、それくらいの動員数のゲームが多かった、ということになります。

西宮ストークス

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過去3シーズンをB2→B1→B2と推移している西宮ストークスですが、観客動員数にはその推移が如実に表れているように思います。2017-18では前シーズンと比較して大きな観客動員数増を記録したようですが、今季にB2となり、やはり動員数を大きく落としています。

2016-17と2018-19を比べると動員数が伸びているようであることはグッドニュースだと思います。西宮は今季序盤の戦績があまり振るわかったようですが、私が個人的に好きな選手も揃っていますので、戦績も動員も今後に期待したいです。

島根スサノオマジック

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昇降格に関しては西宮と同じ道を辿っている島根ですが、観客動員数の推移についても傾向は似ているようです。ただ西宮と比べてさらに2016-17から2018-19への観客動員数増が顕著です。属しているリーグに関係なく、そのチームの持つピュアな集客力は伸びているのではないでしょうか。

島根は積極的にクラウドファンディングなども使用しソーシャルへの露出が目立っています(ちなみに私もクラウドファンディングに参加しました。)こういった施策の効果が出ている、という見方もできると思います。

仙台89ers

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仙台はB1→B2→B2と推移していますが、降格によるインパクトよりも昇格のなかった今季に大きく観客動員数を伸ばしていることに注目です。観客動員数を伸ばす最良の手段は昇格、とは単純に言い切れない好例だと思います。

今季のB2は一部のチームが仙台のように昇格もなく動員数を伸ばしており、それ以外のチームは動員数で苦戦を強いられるという展開になっているようです。これについては面白いのでまた別記事で論じたいと思います。

秋田ノーザンハピネッツ

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秋田も非常に面白いです。と言うかすごいです。この3シーズンでB1→B2→B1と降格も昇格も経験した秋田ですが、観客動員数はあまり動いていません。つまり昇格にも降格にもそこまで大きな影響を受けずに安定した動員を見せています。

ここまで見てきた3チームのように「降格すれば動員数減」というのが一般的なイメージだと思われますが、そうとも言い切れないという例です。素晴らしいの一言ではないでしょうか。

「クレイジーピンク」と呼ばれる有名な秋田のブースターさんですが、これは彼らのエンゲージメントの高さがデータに表れている結果と言っていいと思います。これはチームにとって本当に大きな財産でしょう。

今季の秋田はバスケットボール自体もとても面白いですし、この調子でさらなるファンのエンゲージメントを獲得するのではないでしょうか。新アリーナ構想にも期待です。

ライジングゼファー福岡

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(※他の図と色が合っていなくてすみません)

B3→B2→B1とまさにライジングの名の如く駆け上がってきた福岡です。今月には新アリーナに移るなどの話題も提供してくれています。

B3のデータが残念ながらないので2016-17とは比べられないのですが、実は今季の動員数は昨季と比べてそこまで増えている訳ではないようです。

開幕のブーストがあったものの(人気の栃木ブレックスをB1新規参入の福岡にぶつけたのはBリーグの親心かもしれないですね)、その後の推移は大人しいですね。

新アリーナの利用料が以前に比べて数倍との情報もありますので、是非ここは動員増の為の施策を打ちたいところです。社外取締役の堀江さんの力が試される局面でしょうか。

まとめ

昇格、降格を経験したチームの観客動員数がどのように推移したかを見てみました。単純に昇格=観客増、降格=観客減とは言えない部分も見えて面白かったです。

むしろ昇格や降格があると、そのチームの本来持っている力が試される、そのように感じました。

書評「100問の“実戦ドリル”でバスケiQが高まる」(小谷究・佐々木クリス)

100問の“実戦ドリル”でバスケiQが高まる

100問の“実戦ドリル”でバスケiQが高まる

BリーグでもNBAでも解説や通訳の活動でお馴染みの佐々木クリスさんと、流通経済大学の助教授でいらっしゃる小谷さんによる、特にオフェンス面に特化したバスケットの戦術解説書です。

小谷さんについては存じませんでしたが、千葉ジェッツの大野HCともバスケットの戦術に関する書籍を出版しており、この分野の専門家でいらっしゃるようです。ちなみに究と書いて「きわむ」と読むようで、まさに名が表すような活動をしていらっしゃるんですね。

本書はNBA、Bリーグ、国際試合などから、実際にプレーされたオフェンスを100個、まずは状況を解説し、その後そのオフェンスがどのように展開したのかを読者に考えさせる、という作りになっています。想定読者は基本的にはバスケ少年少女のようです。

読者としてはその考えるという部分こそが一番大事なポイントなので、是非すぐにページをめくって答えを見るのではなく、自分の頭の中で考えたことを書き出したりした上で答え合わせをすると良いのではないかと思います。

最近のBリーグや日本代表のゲームで実際に起こったオフェンスも取り上げていますので、いくつかは解説を読んだだけで思い出せるプレーもありました。図と解説を見るだけでかなり頭の中にそのときのシーンが想起されるのは面白かったです。もちろん見た事がないゲームについても楽しめました。

「詰将棋」ってありますけれど、これは言わば「詰バスケ」ですね。ただ本書の冒頭で強調されているように、決して答えはひとつではありません。あくまで自分の考えをアウトプットし、それを実際にどのようにオフェンスが展開したかと比較することが大事だと思います。

本書が教科書であれば、講義形式よりもディスカッション形式の授業で使いたいな、と思いました。私はバスケットの戦術的な部分には疎いのですが、こういう分野も基礎を理解しているとよりゲームが面白く観られそうなので、本書を参考に今後もBリーグを観ながら勉強したいと思います。

書評「ファイブ」(平山譲)

ファイブ (幻冬舎文庫)

ファイブ (幻冬舎文庫)

漫画SLAM DUNKを連載する前、井上先生が「バスケットは漫画界では御法度」、つまり売れる訳がないと言われたという有名な話がありますが、そう言えばバスケットのノンフィクション小説というのも本書以外に聞いたことがないかもしれません。

ご存知の通りアイシン電機、今のシーホース三河にMr.バスケットボールこと佐古賢一さんが移籍したことを中心に据えた話です。最近では男子日本代表のコーチを務められておりますし、この間までは広島ドラゴンフライズのヘッドコーチでもありましたよね。

JBL時代の話とは言えまだそこまで昔の話ではないので、佐古さんをはじめ、折茂さん、三河の鈴木HC、元秋田ノーザンハピネッツHCの長谷川さん、JBL新人時代の田臥三河の桜木など、Bリーグからバスケット観戦を始めた方にもお馴染みの面子が顔を出しています。

と言う私もBリーグ誕生前の数年はすっかりバスケットボールから離れていましたので、このファイブで書かれているストーリーは耳にしてはいたものの、知らないことばかりだったのでとても面白く読むことが出来ました。何よりバスケットが小説としても成立する、というのは発見です。

中心人物のひとりである後藤正規さんは、佐古さんと並んで私のバスケットヒーローのひとりでした。当時はどのような人かは存じなかったのですが、どこか侍のような趣のある方だと思っていたので、本書で書かれている人物像がそれに完全にマッチしていて驚きでした。

本書で直接書かれている内容ではないのですが、私が本書を読んでいて一番気になったのが、JBLにせよbjリーグにせよ従来から日本のバスケットボールのファンとしてチームを支えてこられた方と、Bリーグとなり注目度が上がり、そこからファンになった方々とが今後どのように融合していくのかという事です。

従来からのファンであればコア層、最近の方はライト層と単純に区分けすることはもちろん出来ませんが、バスケットの場合は日陰の時代があまりにも長かったので、昔からのファンはよりコアなファンとなりやすい環境ではあったと思います。コアなファンにウケること、ライトなファンにウケること、これはときにまったく違ったりするのが難しいところです。

Bリーグが、そして各クラブチームが、今後どのようにそういった様々なファンにアプローチをしていくのか、そういった部分に注目していきたいな、と改めて思わせてくれた読書となりました。

アジア最強スコアラー、ニック・ファジーカスのBリーグ開幕からこれまでの137試合を見てみる

ニック・ファジーカスの勢いが止まりません。先日のFIBAワールドカップアジア予選Window 5、本当にすごかったですね。その後にこんなネタツイートをしたら皆さんそう思っていたのか、少しウケたようです笑

カザフスタン戦では何と41得点、本人曰く調子が悪かったカタール戦も19得点と大活躍で、もはや冗談抜きでアジア最強のスコアラーのひとりとしての地位を確立しつつあります。

この記事では、そんなファジーカスのこれまでのBリーグでの活躍を振り返ってみたいと思います。

出場試合数と出場時間

まず着目したいのは出場試合数と出場時間です。ファジーカスは2016-17、2017-18レギュラーシーズンにはすべてのゲームに出場しています(ちなみにスターターでなかったのはただ一度のみ。)

今シーズンこそ脚の手術の影響で開幕2連戦を欠場しましたが、その後は毎試合コートに立ち、Bリーグ開幕以来ほぼ皆勤賞の活躍を続けています。

その全137試合の出場時間は以下のように分布しています。

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今シーズンは上述の理由により序盤の出場時間は抑えられていましたが、それ以外は標準的に毎試合30分前後の出場をこなしています。ほぼ皆勤賞でこの出場時間をこなすファジーカスは、コートの外でもプロフェッショナルとして様々な努力をしていることでしょう。

試合ごとの得点と分平均得点

2016-17シーズンでは得点王、2017-18シーズンではガードナーに続いて試合平均得点で2位となったファジーカスですが、レギュラーシーズンの得点がどのように分布したのか見てみましょう。ひとつ目の図は試合ごとの得点、ふたつ目の図は出場時間に左右されないように試合ごとの分平均得点を表しています。

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まず気になるのがシーズンを追うごとにパフォーマンスが落ちているように見えることですね。これは一概にファジーカスのパフォーマンスが落ちているとは結論できず、他の選手が点を取るようになりファジーカスへの依存度が落ちている結果かもしれません。これについては別の分析が必要でしょう。

出だしが不調だった今シーズンは置いておき、過去2シーズンは試合ごとの得点で言うと中央値(箱の中の線)が25点から27点25パーセンタイル(箱の下辺)でも21点から23点くらいと、圧倒的な得点力を誇っています。日本語で言えば「ちょっと調子が悪い時でも21点から23点くらい」という感じなので、まさにWindow 5のカタール戦状態です。

今シーズンの残り41試合で分布がどのように変わってくるのかは分かりませんが、おそらく現在の75パーセンタイル(箱の上辺)が中央値くらいになってくる、つまり毎試合25点くらい取るゲームが続くことが過去のデータからは予想されます。

FG%

同じ要領でFG%を見てみましょう。

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非常に安定していますね。過去2シーズンについては25パーセンタイルと75パーセンタイルが大体50%から63%にありますので、ファジーカスのFG%はほぼこの中に収まっていることになります。インサイドの選手なのでFG%は高くあるべきですが、ファジーカスはそれなりに外も打ちますので、極めて高い決定率を保っていると言っていいと思います。

2016-17と2017-18を比べると、2017-18の方がFG%が良いですね。上述の得点と併せて考えると、ファジーカスが打つシュート数が少なくなってきているのかもしれません。見てみましょう。

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まさに、という感じですね。川崎ブレイブサンダースのシュート回数に変化がないのであれば、だんだんとファジーカスのシュートへの依存度が減っていることが推測されます(ファジーカスはシュートが「打てない」というシチュエーションのあまりない選手ですしね。)

ファジーカスを攻略しているチームはあるのか?

今度はファジーカスのパフォーマンスを対戦チームごとに見てみましょう。アジア最強のスコアラーを攻略できているチームはあるのでしょうか?各チームとの対戦数は以下のようになっています。

チーム 対戦数
SR渋谷 14
A東京 12
富山 11
横浜 10
栃木 10
北海道 10
三遠 9
滋賀 8
新潟 8
千葉 8
三河 7
大阪 6
名古屋D 6
琉球 6
京都 4
秋田 2
西宮 2
仙台 2
島根 2

まず分平均得点を見てみましょう。

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左からSR渋谷、三河、栃木は健闘していますね。と言っても一番良い栃木でも中央値が0.6~0.7くらいのところに位置しているので、ファジーカスが30分プレーするとやはり20点ペースくらいでは点を取られているということになります。おそるべし。

次はFG%です。

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仙台は低く見えますが、対戦数が僅か2試合なのでちょっと検討の対象外かなと思います(ちなみにこの2試合でニックはかなり多くのシュートを放っています。)ここで目立つのもSR渋谷ですね。中央値ベースでファジーカスのFG%を50%以下に抑えている様子が窺えます。ちなみに名古屋Dも悪くありません。

今季はまだサンロッカーズ渋谷名古屋ダイヤモンドドルフィンズ川崎ブレイブサンダースは対戦しておらず、すべての2016-17と2017-18シーズンのゲームでの数値です。どんなディフェンスをしていたのか、各チームは参考にしてみると面白いかもしれませんね。

まとめ

アジア最強のスコアラーとなりつつあるニック・ファジーカスのこれまでの活躍をデータで振り返りました。Window 5の2試合は合計60点とまさに大黒柱の活躍。Window 6も間違いなく中心的な役割が求められるファジーカス。Bリーグでも日本代表でも、彼の活躍からまだまだ目が離せそうにありません。

川崎ブレイブサンダースのオフェンス不調とそこからの復調を可視化する

この記事は川崎ブレイブサンダース Advent Calendar 2018の第4日目に寄稿するものです。第3日目はRie Hiranoさんによる「一緒にアリーナへ行こうよ!」でした。

オフェンス不調を経験した今シーズン序盤の川崎ブレイブサンダース

華やかなB1のシーズン開幕戦にて、ファジーカス抜きで強豪千葉ジェッツ相手に2連勝という鮮烈なスタートを飾った川崎ブレイブサンダースでしたが、その後は特にオフェンス面での不調に苦しみました

以下のプロットは各チーム1〜10試合目のデータを使ったものですが、1ポゼッション当たりの得点(x軸)で川崎はなんとB1で最下位となっていました。

ちなみにy軸は1ポゼッション当たりの失点、〇の大きさはこの時点での勝率を表しています。ポゼッションはオリバー式と呼ばれる簡易な方法で近似値を求めています。

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リーグ屈指のスコアラーであるファジーカスと、日本代表のシューターである辻を擁する川崎のオフェンス力がリーグ最下位。にわかに信じがたい結果でしたが、ご存知の通り、このふたりのエースが不調の中心でもありました。

この記事では川崎ブレイブサンダースの今季序盤のオフェンスの不調と、そこからの復調を可視化してみたいと思います。

スリーポイントシュート成功数の推移

川崎ブレイブサンダースは標準的に1試合で何本くらいスリーポイントシュートを成功させるかご存知でしょうか?過去2シーズンのデータで調べてみましょう。

過去2シーズンには違う選手が属していたわけですが、川崎は他のチームよりは選手の変化も少なく、北HCもずっと指揮を執り続けているためチームの傾向を参考にする分には問題ない程度の変化しかなかったと見做します。

こちらが過去2シーズン、試合ごとのスリーポイント成功数をヒストグラムにしたものです。x軸が成功数、y軸は試合数です。

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ご覧の通り1試合で6-8本決めるくらいが標準的であることが分かると思います。ざっくり言って9本以上決めると調子がいいと言って良さそうで、逆に5本以下だと少し調子が悪いと言えそうです。

ついでにスリーポイントの試投数、つまり打った回数の分布を見ると以下のようになります。標準的には15-22本くらい打っているのかなという感じです。

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では上記を前提として、今シーズンのスリーポイント成功数の推移を見てみましょう。ラベル内にあるのは各ゲームの対戦相手、そしてその下にあるのが川崎のスリーポイント成功率です。

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開幕2連戦こそ調子は良かったのですがその後の本数は低迷しています。成功数が5本に満たないゲームが続きました。アルバルク東京戦では何と成功数0本を記録(試投数は8本)Bリーグとなって以来、川崎のレギュラーシーズンでの最低記録を出してしまいました。

余談ですがブレイブサンダースは5試合目の三河戦で「カワサキスリーポイントチャレンジ」というイベントを開催しています。スリーポイントが何本入るか予想するというイベントだったのですが、皮肉なことに相当なスランプの真っ最中での開催となってしまいました。

琉球戦あたりから調子を取り戻しつつあるようです。成功数ベースではまだスランプを完全に抜けきったとは言えませんが、徐々に成功率を取り戻しているのが分かります。辻の怪我などまだまだ不安要因の残るエリアですが、もう少しすればいつもの川崎のスリーポイントが戻ってくる、という予感はあります。

1ポゼッション当たりの得点の推移

スリーポイントシュートの復調に合わせるように、徐々にチームの主砲ファジーカスも手術によるブランクで落としたコンディションを上昇させていきました。もはや「20点取って当たり前」の扱いをされるファジーカスですが、川崎と日本代表の為に、復活に向けて様々な努力をしていたことでしょう。

そのファジーカスの復調、スリーポイントの復調、すべて込み込みで、川崎ブレイブサンダースの1ポゼッションあたりの得点数が試合ごとにどのように推移したのか見てみましょう。

ちなみにポゼッションというのは「攻撃の機会」みたいな意味です。公式には発表されていないスタッツなので、上述したオリバー式で近似値を求めています(この記事に式が書いてあります。)

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琉球との2戦目あたりから調子を取り戻し、1ポゼッション当たりの得点を1.0以上に乗せていますね。その後の得点力は安定を見せているようで、ディフェンスの強いチームであるアルバルク東京栃木ブレックスを相手にしても、シーズン序盤のように得点力が低下することはなかったようです。

琉球との2戦目と言えば、ファジーカスがスターティングメンバーで起用され始めたゲームでしたよね。いやはや、やはりすさまじく影響力の強い選手なんですね。おそらくスリーポイントの復調にも大きく影響していることでしょう。彼がいることでチームが機能する、そういう面があると思います。

まとめ

注目の集まったB1開幕戦にてファジーカス抜きで千葉に連勝し、「川崎強すぎじゃね?」と囁かれたブレイブサンダースですが、オフェンスの不調に苦労した2018-19シーズン序盤となりました。徐々に調子を取り戻しつつあるようで何よりですね。

中盤から終盤に向けて川崎ブレイブサンダースのオフェンス力がどうなるのか、是非注目してみてください!Go!Go!サンダース!!