語り尽くされた内容だけれど、最近はほんとに「なぜ日本から強いソフトウェア企業もといソフトウェアが生まれてこないのか」という疑問が頭を巡る。またこの日本でソフトウェア開発を生業にしていく機会の少なさにも真剣に悩む。もはや優秀な技術者は英語を学ぶ事が必須だと僕が考えるのは、その優秀な技術を活かす立場に自分をおくためには外資に入るか、または外国に飛び出さなければならないからなのだ。日本に良い機会がまったくないと言うつもりはない。ただ極端に少ないのだ。ましてや平均以上の収入を、他の職種より良い収入を得たいと思えば、さらに機会は限られる。
いつか日本にも大きな可能性を持ったソフトウェア企業やネット企業が生まれるのだろうか。どうなのだろう。家庭用ゲームはもともと日本が強いはずだし、もともと気遣いの細かいソフトウェア向きの人種だと僕は思っているし、何かのピースが日本にぴったりと嵌れば、きっと大きな機会が若い技術者達に開かれると思うのだが。これは希望的観測なのだろうか。
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保江邦夫「数学版 これを英語で言えますか?」
こ、これは滅法面白い。

数学版 これを英語で言えますか?―Let’s speak mathematics! (ブルーバックス)
- 作者: 保江邦夫,エドワ-ド・ネルソン
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/04/19
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 54回
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読書禁止中なのに読んだのは、英語の文章の中に出てくる数式を発音するときだけ(勿論心の中で発音しているのだが)日本語になってしまうことに違和感を感じていたから。
本書はひたすら色々な数式を英語でどう読むか、を紹介していくだけの内容である。ただそれだけであるが、数式が英語で読めるようになって、次から次へと提示される数式を英語で発音していくのがものすごく楽しい。思わず電車の中でぶつぶつと発音して、回りの人から変な目で見られてしまうほどに楽しい。そんな内容である。理系の学生や理科系の専門職に就いている方には是非ご一読をお奨めする。おそらくこれに慣れてくると、数式は英語で発音するのが最も正しいことであるように思えてくるだろう。
は例えば、
The sum from k equals one to n of k
と読む。
英語「で」勉強しなさい
ここやここなんかが話題になっているのを見たり、就職活動中の大学生の英語への意識の高さを垣間見たり、やはり英語というものに対する興味の大きさはかなりのものであるなと改めて実感する今日この頃。そんな興味の高さに乗じて多くの利益を上げようと、大規模なマーケティングを繰り広げる英会話学校や出版社。中高での英語教育が役に立たないという声高な批判を掲げる人達の主張に、あまりきちんと勉強しなかった自分への言い訳を重ねる人々。どの国でもこういった事情は多かれ少なかれあるだろうけれど、日本の英語事情が複雑であることは間違いないであろう。
英語を本当に身につけたければ、まずは中高もしくは自分でしっかりと基礎、つまり文法は押さえるべし。これはまず確実。あとは実際に使う立場に自分をさらそう。英語で何かを勉強しよう。英語で何かを行おう。英語で何かを楽しもう。
Google Japanの村上社長が言っていたらしい以下の言葉が全て。
ひたすら英語をやりなさい.
英語「を」勉強したらだめ.
英語「で」勉強しなさい.大学に入る前の若い人には「これからは英語ができないと何もできない」といつも話している.
ちなみに聞いた話によると、パキスタンの大学ではほぼ全ての講義が英語で行われているらしい。必然的に彼らは英語を勉強せざるを得ないらしい。学校の教育のせいにせず、自分の生活の中に自分で英語を組み込んでいけばいい。例えばブログで日記を書いていたりするのなら、日記の中に一行でもいいから英語を入れてみるとか。それでもかなり変わってくる。
Just write an English line in your diary, that makes much diffrerence.
セルビア大統領選雑感
エントリを書く程の知識はないが、ちょっと気になったので。と、これだといつも豊富な知識に裏付けされたエントリを書いているような言い回しだが。
セルビア大統領選が新欧米派であるタディッチ氏の勝利に終わり、極右派のニコリッチ氏が敗北したことでコソボ自治州の独立容認に向けた土台ができたようだと報道されている。
政府は、G8議長国として各国の立場を調整する必要から米、EUとの同時承認には慎重だが、3日にセルビアで親欧米派のタディッチ大統領が再選されて事態の平和的解決の芽が出てきたとみて、早期承認の検討に入った。
http://www.asahi.com/politics/update/0205/TKY200802050402.html?ref=rss
各国の立場というのは簡単に言ってしまえばロシアの立場の事で、ロシアとしては他の国の独立活動家を刺激する可能性のある今回のコソボの件は慎重に対処したいだろう。
先月の第1回の投票では4ポイント以上の差を付けてニコリッチ氏が勝利していた模様であるし、2004年の大統領選では9ポイント差で勝利したタディック氏であったが、今回の差は3ポイント以下となっており、流れから判断するならばセルビア国民は以前より右傾化しているのではないかとも読み取れるのだがどうだろう。もしそうだとすると、この時期に安易にコソボ自治州の独立を容認すると、極右派の活動家等を強く刺激してしまうことにもなりかねない。
「初心者」をセグメンテーションせよ
「初心者」って言葉を使ったとたんに話が分散するから使わない方が良いと思うけど。
Brainf.ck – 初心者が最も実装しやすい言語
C – 最も言語実装初心者向け
JavaScript – 最も初心者に身近
Perl – 最も初心者に(も)優しいコミュニティ
Python – 最も自言語初心者に優しいユーザーたち?
Ruby – 最も初心者に優しい言語の父
上の弾さんのエントリは多少僕の言いたいことを書いているけれど、要は「初心者向け」とかいうんじゃなくて、
誰のどういう動機に対してどの言語が向いているのか
という話をしなければならいんじゃないだろうか。まだ駆け出しプログラマの動機としては例えば以下のようなものがあるだろう。
- プログラミングの実行環境を整えるのが面倒
- 「面白い」って友達に勧められたプログラミングだけど、面白さ分からない。分かりたい
- 「抽象化」ってなんじゃらほい。「関数型」ってなんじゃらほい。「オブジェクト指向」って
- 兎に角ちゃっちゃと動かして遊びたい
とかまあ色々あると思う。またプログラマを管理する立場にあるプログラマとしては、
- セキュリティホール量産困る
- バグたくさん、困る
- 読めないコード困る
- すぐに戦力になってもらわんと困る
- 時間がかかってもいいからスーパーハッカーに育てたい
とかまあそういう事を考えているであろう。そういう風な動機に対してそれぞれ向いている言語を提示するべきで、セグメンテーションすることもなく「初心者向け」とか書いて議論していても、結局それぞれが頭の中に浮かべているシチュエーションが違う訳で、話が噛み合う訳もない。
「プログラミングの初心者」の定義
Matzさんがまた示唆に溢れる事を書いている。
ここから「初心者向け言語が避けていること」言い替えれば「初心者が苦手なこと」が何であるかだいたいわかる。彼らは「抽象化」が苦手なのだ。
そうそう、そうなんですよね。分かっていても中々言語化できなかったけれど、抽象化を理解し、その重要性を理解し、実際の仕事の中でその理解を役立たせることが出来るようになって、自分がやっとプログラマとして次のステップに進めた事を思い出した。逆にそれが出来ていない人は、いつまで経っても初心者の域を出ないとも言える。そして悲しいことに、この壁を超えるに必要なのは経験年数ではない。どんどん勝手に学んでいく天才も世の中にはいるだろうけれど、平均的にはやはり抽象化を行い易い言語を身につけ、良い抽象化を行っているソースを読み、自分のプログラムの中にどのように抽象化が活かせるのか真剣に考えた上で何度も失敗し身に付いていくものだろう。
まだ勉強途中だけど、以下の本はこと「抽象化」ということに関しては世界一の名著だと勝手に信じ込んでいるのでここに宣伝しておきます。あまりにも有名な本なので余計な事は書きませんが、僕に「プログラミングの奥深さ、難しさ、面白さ、神聖さ」を教えてくれた神本です。

Structure and Interpretation of Computer Programs (MIT Electrical Engineering and Computer Science)
- 作者: Harold Abelson,Gerald Jay Sussman,Julie Sussman
- 出版社/メーカー: The MIT Press
- 発売日: 1996/07/25
- メディア: ペーパーバック
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Openness and Inovation. The principles of the Internet
そう言えば、MicrosoftによるYahoo!への買収提案についてGoogleから何かコメントが出たのかどうかを気にしていたのだけれど、いまOfficial Google Blogに公式見解らしきものがアップされたようだ。
The openness of the Internet is what made Google — and Yahoo! — possible. A good idea that users find useful spreads quickly. Businesses can be created around the idea. Users benefit from constant innovation. It’s what makes the Internet such an exciting place.
So Microsoft’s hostile bid for Yahoo! raises troubling questions. This is about more than simply a financial transaction, one company taking over another. It’s about preserving the underlying principles of the Internet: openness and innovation.
今回の買収がインターネットが持つオープンさと革新性の保護という観点からいくつかやっかいな問題を投げかけるだろうとのこと。これに続く文章では「またあのときと同じことが繰り返されるのか」とPC時代のことを今回の事に重ね合わせてMicrosoftを批判している。以下のように「世界各国の政治家は、ここに書かれた質問を尋ねる必要があるだろう」と結構強いメッセージまで発している。
Policymakers around the world need to ask these questions — and consumers deserve satisfying answers.
エントリを以下のように結んでいるが、どうも個人的にはGoogleがopennessを文化の核としているようなイメージが持てない。彼らは情報共有には相当拘っているように思えるので、社内事情ではopennessを大事にしていると言えるのだろうが。
This hostile bid was announced on Friday, so there is plenty of time for these questions to be thoroughly addressed. We take Internet openness, choice and innovation seriously. They are the core of our culture. We believe that the interests of Internet users come first — and should come first — as the merits of this proposed acquisition are examined and alternatives explored.
巨額買収時代の技術者の生き方
米マイクロソフト(MS)は1日、米ヤフーに買収を提案したと発表した。買収額は446億ドル(約4兆7500億円)。両社のネット事業の売上高を合計すると年間94億ドルに達し、グーグルの売り上げの6割程度に迫る。世界最大のソフトウエア会社であるMSとインターネットサービスの草分けであるヤフーの経営統合が実現すれば、ネットを中核とするIT(情報技術)業界の勢力図が大きく塗り替わる可能性が高い。
SkypeやYoutubeの買収、そして今回のMicrosoftによるYahoo!への買収提案。何千億円単位の規模の大きな買収が定期的にネット上や新聞の紙面、ニュースを賑わす(Yahoo!の件はさらに桁が違うが)。事の善し悪しは分からないけれど、自分がそういう時代に技術者として生きていることはしっかりと認識していなければならない。
これだけ大きな規模の買収の裏には、それなりの人数の技術者が居て、買収によって大きく人生が変わったりすることもあるだろう。それはある技術者にとっては大きなチャンスになるだろうし、ある技術者にとっては大きな損害となるのかもしれない。
自分はまだこのような大きな買収によって仕事を左右されたことはないが、このような時代に生きている以上、自社、または自分の行っている領域の技術にのみ強いような人間では、この時代を生きていけない。しかしそれは流行の技術にすぐ手を出す事とは違う。
技術の本質を見極める力、その為の知識、必要な情報を素早く選り分ける能力、語学力を含めたコミュニケーション能力、そういった能力に磨きをかけ、戦乱の世を生き抜ける技術者となりたい。
「当社はIT企業ではありません」
情報処理推進機構(IPA)は、人材不足が深刻化する日本のIT業界の現状を調査するため、IT人材についての実態調査を実施し、1月28日に結果を公開した。大学卒、大学院卒の新卒学生がIT企業に興味を持たなくなったともいわれているが、当のIT企業が新卒採用の課題として挙げた答えのトップは「業界の仕事のイメージがよくない」だった。
やはりIT企業の不人気が深刻化しているようだ。このブログでは繰り返し述べてきたように思うが、そもそもIT業界とかIT企業なんていう言葉が意味するところは曖昧である。そうすると、この時代には如何に「当社はIT企業ではありませんよ」という印象を学生に持ってもらうのかが採用担当者のひとつの勝負と言える。寂しい事だが。
GoogleやFacebookがbest studentsに提示する高額オファー
ひとつ前のエントリで日本のIT企業(所謂IT企業って書いた方がいいかな)の採用に関するお寒い状況を話題にしたけれど、米国でのこんな記事を目にした。
Last year, salaries of up to $70,000 were common for the best students. This year, Facebook is said to be offering $92,000, and Google has increased some offers to $95,000 to get their share of graduates. Students with a Masters degree in Computer Science are being offered as much as $130,000 for associate product manager jobs at Google.
Google, Facebook Battle For Computer Science Grads. Salaries Soar. – TechCrunch
スタンフォードのような一流大学のコンピュータサイエンス学科を出る学生に対して、昨年までは7万ドルくらいのオファーが相場だったのだが、近年は今をときめくGoogleやFacebookが採用を強化しているおかげで値段がつり上がり、Googleが9万5千ドルものオファーを出すまでに至っている模様。これが修士になると13万ドルってちょw。ジャブジャブお金が使える程儲かっている状況を考慮に入れたとしても、日本の企業がここまでやると思えないないのでやはり「優秀なエンジニアを何としても集めたい」という強い意志があるんだろう。やはり組織の中で上手く動く人間を採用し「組織の力」を信じている日本の文化と、あくまで「個の力」を信じ、その力を強化することで組織を強くしようという文化である(と僕は思っている)米国の企業との差なのかもしれない。いずれにしろ、こんだけ貰える可能性があるのであれば、IT企業の学生における人気は高いだろう。