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戸根勤「ネットワークはなぜつながるのか」

ネットワークはなぜつながるのか ― 知っておきたいTCP/IP、LAN、ADSLの基礎知識

ネットワークはなぜつながるのか ― 知っておきたいTCP/IP、LAN、ADSLの基礎知識

http://d.hatena.ne.jp/rintaromasuda/20060328/1143496107
で紹介した「郵便と糸電話でわかるインターネットの仕組み」に続いて、再びネットワークの勉強をしてみた。読む順番としては正しかったようで、この本ではさらに技術的に細かいところ(LANアダプタの動きや、電気信号の生成の仕組みなど)まで取り上げられているし、インターネットの向こう側にあるプロバイダや電話回線が具体的に通信にどのように関わっているのかまで解説している。ただやはり前提知識を必要とするものが多いようで、「郵便と…」を読んでいなければ理解できなかったであろう部分がたくさんあったし、第4章「アクセス回線、プロバイダ」は正直今の僕では理解できない内容であった。ここら辺はまたいつか読み返して理解することにしようと思う。
ちょっと話はずれるが、ネットがリアルの社会に及ぼす影響が日に日に大きくなる中で、運送会社というかなり原始的なリアルビジネスの重要性っていうのは変わらない、いやそれどころか増していくんだろうな、と考えていたことがあった。これは物質瞬間移動装置が出来るまでの間は変わらない事実であろうと思う。ロジスティクスは人と人の間に物質の移動がある限り必要な訳だ。
一方でネット世界で「情報を運ぶ」役割であるネットワークの重要性も日に日に増していっているに違いない。IPv6の普及に合わせて、家電や自動車までもネットワークに取り込まれようとしている未来を考えると、ネットワークトラフィックの世界にもまだまだたくさんのブレイクスルーが必要なんだろうなと思う。今のままではとても捌ききれないであろう大量のパケットがネットワークを走り回る日が来る訳だから。
とそんなことを考えながら読んでいたのだが、通信先進国の日本とはいえ、来るべき大量トラフィック時代に対応するための技術者は足りているのだろうか。技術者の育成は産官学に任せるとして、僕個人としてはまず自分を鍛え、新時代への貢献を真剣に考え続けたいと思う。

岡嶋裕史「暗証番号はなぜ4桁なのか?」

暗証番号はなぜ4桁なのか? セキュリティを本質から理解する (光文社新書)

暗証番号はなぜ4桁なのか? セキュリティを本質から理解する (光文社新書)

「郵便と糸電話でわかるインターネットの仕組み」が非常に勉強になったので、こちらの本も購入してみた。
「郵便と糸電話で…」と違い、こちらは技術的な内容には一切触れていないというか、むしろ「技術が人を守ってくれると安心しきっていませんか」という問いかけがテーマとなっている為、技術的な勉強という意味では役に立たなかった。
現代社会が内包する「情報セキュリティの脆弱さ」を意識していない人があまりにも多すぎると著者は警鐘をならしたいのであろう。「セキュリティ意識が低い職場の上司に読ませたい」と思う若者も多いのでは。

金子勇「Winnyの技術」

Winnyの技術

Winnyの技術

昨今話題になっているWinnyが、どういったTechnologyの上に成り立っているのかということが知りたかったのと、最近ネットワーク全般に興味があるので本書を購入してみた(しかし世間一般ではすっかりWinny=ウイルスだな)。

Winnyに関する知識はほぼ0であったが、結果としてP2Pの発展の歴史、Winnyネットワークの仕組み、開発・改善の経緯が読後に把握できた。非常にわかり易く書かれているので、そこからも著者の金子さんのスマートさが伺える。理論と実践から得た情報を元に、Winnyを改善していく著者の様は素晴らしいと思った。「Winnyネットワークは生物のようだ」と著者自らコメントしていたが、実際動物学者のようにWinnyネットワークを観察していたのではないか。

勉強になった一冊。

岡嶋裕史「郵便と糸電話でわかるインターネットの仕組み」

郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ (集英社新書)

郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ (集英社新書)

Danさんのエントリを読んで購入した。

とにかく分かり易い。的確な比喩が面白い。ネットワークに少し関わったことのある人間なら「あれって何に使うの?」と疑問に持つ内容を的確に選び、解説している。「TCP/IPってどういうこと?」くらいの人間(僕含む)が読むのに最適な一冊であると思う。とりあえずこの本で、ネットワークの仕組みを人に説明できるようになったと思う。

しかしやっぱり新書は読み易い。あと気がついたんだけど、やっぱり縦書きの方が頭にすらすら入ってくる気がする。僕の目は縦に動くときの方がスムーズなのだろう、きっと。

Jeffrey S. Young, William L. Simon「iCon」

iCon Steve Jobs: The Greatest Second Act in the History of Business

iCon Steve Jobs: The Greatest Second Act in the History of Business

去年の9月にL.Aを訪れた際に購入したので、読了まで半年もかかった計算になる。まあまるで読んでなかった時期もあったし、その間に他の本も読んでいたので一概には言えないが、やはり洋書は読むのに時間がかかる。しかも読んでる最中に翻訳版(スティーブ・ジョブズ-偶像復活)が出版され、そっちを読もうかという誘惑とも闘いながらの読書だった。

全体的な感想から言うと、思ったよりも人間スティーブ・ジョブスを描くというところに照準が絞られていると思った。特に若くして富と名誉を手にした彼が、紆余曲折を経て現在、どのような人間に成長していったのか、について著者は拘りを持って書いていたように推察する。途中に出てくるDisneyとのいざこざあたりに多少冗長さを感じたが、スティーブ・ジョブスには強い興味を持っていたので、面白く読めた。

“In most people’s vocabularies,’design’ means venner. It is interior decorating. It’s the fabric of the curtains and the sofa. But to me, nothing could be further from the meaning of design. Design is the fundamental soul of a man-made creation that ends up expressing itself in successive outer layers of the product or service.”

“Design is a funny word. Some people think design means how it looks. But, of course, if you dig deeper, it’s really how it works. To design something really well, you have to ‘get it.’ You have to really grok what it’s all about.”

デザインとは何か。これを問う上で彼の意見は避けて通れないだろう。これらのコメントは期待通りというか、非常にジョブスらしい、そしてアップルらしいものである。ちなみにこの部分とほぼ同様のコメントが、PRESIDENT Onlineの「スティーブ・ジョブズが働く理由」という記事の中にもあった。
とは言ってもiPodやiMacのデザイナーであるJonathan Iveという人には興味を持った。今度調べてみることにする。

An all-out program to create a new low-end consumer Mac was another effort Steve also took credit for, explaining that “we have a lot of customers, and we have a lot of research into our installed base. We also watch industry trends pretty carefully. But in the end, for something this complicated, it’s really hard to design products by focus groups. A lot of times, people don’t know what they want until you show it to them.”

結局我々消費者の想像力を超えた商品やサービスを創っている側の人間にとって、市場の動向や消費者の意見や、今までの商品から得た経験は「付随的な情報」にしか過ぎず、究極的には直感(論理的に答えを導き出せないから)、それを信じて開発を行っていく、そういうことになるだろう。そしてAppleが持つ強みというのはこの優れた直感と、それを具現化するテクノロジーとビジネスセンスいうことになるのではないか。

現在は過去に類を見ないほどの好調さを見せているAppleであるが、今後どういった製品で我々を驚かしてくれるのか、楽しみでしょうがない。Disneyと合併したPixerのアニメ開発チームにも同じ期待をしている。

ジョン・バッテル「ザ・サーチ」

ザ・サーチ グーグルが世界を変えた

ザ・サーチ グーグルが世界を変えた

AOLは一九九五年六月にはまだウェブ関連の資産を持っていなかったが、検索をめぐるブームの到来を予想してか、約一〇〇万ドルでウェブクローラーを買収した。とはいえ、「はたしてインターネットがどうなるのか、当時はだれにも分かっていなかった」とピンカートンは言う。
ウェブクローラーは特にAOLで、ウェブサーファーたちに新世界を切り拓いた。その全文検索と単純なブラウザベースのインターフェースは、学者や技術者だけでなく、ウェブを一般大衆向けに開放する重要な第一歩となった。

企業の創業者が権力を放棄したがらない、あるいは放棄できないのは、なにも今に始まったことではない。シリコンバレーでは常識で、企業家症候群と呼ばれるほどである。
しかしともかくペイジとブリンの独特のマネジメントは、一部から批判を受けながらも、大部分は才能を開花させ、会社は確実に新生面を拓いていった。

グーグルは二〇〇五年まで、ほとんど毎日のように平均四人の従業員を採用してきた。二月のニューヨーク・タイムズによれば、サーゲイ・ブリンは急増する社員のために、画期的な奨励策を発表した。それは「創業者賞」と呼ばれ、グーグルの価値を大きく増進したと創業者が判断した時には、その従業員やチームに数百万ドルの報奨金を授けるというものだった。
「ぼくたちは大きな業績をあげた中小企業を、定期的に買収してきた」とブリンが、このプログラムを説明した。「その会社の買収に一〇〇〇万ドルを払うこともある。もしぼくたちが創業者賞を設立していなかったら、求職者にはグーグルには入らない方がいいと言ったと思う。その代わりに小さい新興企業に雇われなさいと勧めるだろう。そしてなにか新機軸を打ちだしたあとでグーグルに会社ごと買収されるのが得策だと」

あらゆる分野で人間の活動に影響を及ぼしているWEB検索だが、本書を読むことで、グーグルを中心としたこの業界の成り立ちを理解することが出来た。未来についても言及されているが、現在のWEB2.0に関する議論を見ても分かるとおり、いまだに「インターネットがどうなるのか、誰にもわからない」状況は続いているのではなかろうか。しかしその正体不明の未知の世界にどれだけ投資を行えるのか、どれだけの優秀な頭脳をその世界に集めるのか、そういったところに日米間の差や、企業間の差が表れるのだろう。そしてその未知の世界に対して、大きく深いコミットを行える企業こそが「WEB2.0時代の企業」となるのであろう。

最後に抜粋した創業者賞の件は、青色発光ダイオードの話を思い出させた。この施策からも、グーグルがいかにテクノロジーを信奉している企業であるか、ということが窺える。是非あのケースについて、ペイジとブリンに意見を聞いてみたいものである。

村上龍+中田英寿「文体とパスの精度」

文体とパスの精度

文体とパスの精度

中田 イタリア人とワインの話をしていておもしろい話を聞いたな。友達同士でも恋人同士でもパーティなんかで、おいしいワインは全部なくなるけど、まずいワインは絶対に残るんだって。(笑)たとえ咽が渇いていても、絶対に残るって。

中田 重要な大会があったりしたときに、最終的にはレギュラーとして出ているからそういうイメージがあるのかもしれませんが、実際は補欠から始まって、徐々に徐々に試合に出始めて、最後にレギュラーを取っているという状態なんです。それはやはり負けず嫌いであるということと、あとは自分で言うのも何なのですが、やはりそれだけいろいろ見て考えていた。言われたことをやるのではなくて、自分で考えて、たとえばうまい選手がいたら、あそこは自分よりうまいなと、そういうふうに少しずつ自分で吸収していって、たぶんそれで試合に出られるようになっていくんだと思います。

村上 で、エースが代表に入らないっていうことはしょっちゅうあるんだよ、今までの歴史の中でも。クライフにしても、カントナにしても、フリットにしても、日本のマスコミはまさかそんなことはないだろうと思って書いてるんだろうけど、でもあるんだよ。その国のダントツのエース、攻撃の中心が出ないこともあるし、反対にサッキがマンチーニやバッジョをなかなか代表にしなかったように、監督が出さないなんてこともしょっちゅうなんだから。そのくらい日本のサッカーも層が厚くなったとか、世界のサッカーに近づいたということはいいことなんだけど、メディアに危機感がなさすぎるよね。

加藤廣志「日本一勝ち続けた男の勝利哲学」

日本一勝ち続けた男の勝利哲学

日本一勝ち続けた男の勝利哲学

個人的に秋田県能代市とバスケットボールには両方縁がある。当然能代工業には強い興味を持っていた。一度名監督であった加藤廣志監督の考えに触れてみたかったので、本書を購入してみた(僕は実際には後継者である加藤三彦監督の世代である)。

加藤廣志監督の選手作り、チーム作り、組織作り、街作りに関する経験と洞察はあらゆるリーダーに参考にしてもらいたいと思うほど興味深い内容。監督などスポーツのリーダーや指導者の方だったら尚更興味深く読めるのではなかろうか。能代高校のバスケットボールスタイルはどちらかと言うと個人技重視という感じのないように見えるが、この本を読むと、加藤監督がどれほど個々人の長所を活かすチーム作りに骨を砕いていたかが分かる。基礎体力と強い精神力から生み出されるオールコートプレスに象徴される能代のチームプレイに、監督が磨き上げた個人の長所が加わった結果、あのような強いチームが出来上がるのであろう。一ファンとして、非常に感銘を受けました。

中野嘉子+王向華「同じ釜の飯」

同じ釜の飯 ナショナル炊飯器は人口680万の香港でなぜ800万台売れたか

同じ釜の飯 ナショナル炊飯器は人口680万の香港でなぜ800万台売れたか

実はナショナル開発陣の電気釜開発物語かと思って購入したのだが、日本の炊飯器を香港、さらには中国本土、アジア全域へと売りまくったビジネスマン、蒙民偉(モン・マンワイ)氏がいかにして成功を掴んだのか、を主題とする書籍だった。ビジネスはやはり一にも二にも行動力とスピードであるということが改めて実感出来た。ITがビジネスを大きく変え、WEB2.0をキーワードとする我々が議論している未来が実際にやってきても、ビジネスには行動力とスピードが必要、という原則は変わらないだろう。行動力というものの在り方自体が変わってしまう可能性はあるが。

世界に初めて自動炊飯器「電気釜」を送り出したのは、ライバル東芝だった。一九五五年(昭和三十)に国内市場で発売した。謳い文句は、「ごはんが科学的においしく炊ける」。電気釜があれば、台所に立ちっぱなしで火加減を見なくても、誰でも手軽にご飯が炊けた。
東芝に先を越されて、松下では衝撃が走った。
「こういう商品が、なんで松下に出せなかったんだ?」
当時、家庭用電気器具を扱う松下電器は「弱電」、大型電気機械を扱う東芝、日立、三菱電機は「重電」と呼ばれ、重電のほうがランクは上とされていた。
(中略)
炊飯器開発の責任者だった坂本は、近所の裏庭で自殺を考えるほどに思いつめたという。
「負けるもんか」
技術のスタッフは、東芝の電気釜を見て思った。

開発者として、製品を作る人間として、このような誇りを自分は持てているのか考えさせられた。このように製品に想いを込めた人間同士、企業同士の飽くなき切磋琢磨が、当時の人々の生活を豊かにしていったのだろう。

私の中での関連書籍として、以下にもう一冊載せておきます。実は以下の本が面白かったので、似たような本はないかと今回「同じ釜の飯」を買いました。参考までにどうぞ。

マツダはなぜ、よみがえったのか?

マツダはなぜ、よみがえったのか?

リリー・フランキー「東京タワー」

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

2005年に話題となった本に目を通してみようと購入。

「お母さん」というこれ以上広く共感を呼ぶことは出来ないであろうテーマを扱っていることもあって売れに売れたようだ。 だがこれは「リリーさんとリリーさんのオカン」の話であって、本当の意味での共感など出来るはずもない。 この本に「感動した」という意見が多数寄せられている。だが敢えて「あなたはあなたのお母さんとの物語を」と言いたい。

でも感動しなかった訳ではありません。