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羽生善治「簡単に、単純に考える」

簡単に、単純に考える (PHP文庫)

簡単に、単純に考える (PHP文庫)

常々棋士の方が対局中どういったことを考えているのか興味があったので、羽生さんの話は興味深かった。直感に関する話が印象的で、論理と直感とは相反する様な認識を持っていたが、それは先入観だったかもしれない。

ただやはり「将棋は将棋、スポーツはスポーツ」という部分があるものだと実感。対談中に共通点を見出せた部分ではなく、そうでない部分がより印象に残った。

加藤廣「信長の棺」

信長の棺

信長の棺

歴史小説にミステリーの要素を絡めたような感覚で読めた。非常に好印象。あまり歴史小説を読んでこなかった人間なので、理解に苦労した部分もあったし、分かっている人間だったら「こりゃ面白い」と思える部分を素通りしてしまったかもしれないが、それらの要素を差っ引いたとしても面白かった。

牛一が追い続けた信長の後姿。男として理解できる。

梅田望夫「ウェブ進化論」

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

発売を待ち望んでいた本だったが一気に読み終えてしまった(読み出すのが出遅れましたが)。多くのウェブの住人と同じように僕もCNET Japan時代からの著者のブログの読者だったから、この本に「何か新しい物」を見出した訳ではない。ただ著者のウェブ進化論を、シリコンバレーが生み出したGoogleという怪物の生態を、日米のネット格差を改めて体系的に読ませて頂き非常にありがたかった。本のページは綺麗にしておきたい方なのであまり折り返しを付けたりしない人間ですが、この本には随分たくさん折り返しを付けてしまった。

多数の優秀なブロガーが中身について言及しているので、書評を書くことに「いまさら僕が」的な想いが消えない。なので僕は僕なりに梅田本が、そして梅田さんが僕に与えた影響という極めて個人的なことを書いてみたい。

実は自分の中で梅田本と言えば、いまだに前著である「シリコンバレーは私をどう変えたか」である。実は同著が生まれて初めて買ったビジネス本であり、もっとも影響を受けた本であるからだ。三年前にとある古本屋で発見し、何かに惹かれて購入して以来の愛読書である。ことあるごとに読み返した。「シリコンバレー」という地名も知らなかった僕だったが、この本から知るシリコンバレーの知的なダイナミズムに物凄い興奮を覚えた。自分もその波に揉まれながらやっていける実力を見に付けなければと本気で焦った。「シリコンバレーで頭一つで食っていける人間になる」というシンプルでストレートな目標が出来た。
そして同時に同著は「自分も含めてこれから日本を担うべき若者が読むべき本」と強く認識した。ある大きな人材採用イベントを主催したときも、優秀な大学生相手に同著を推薦していた。そしてその中から一人、JTPAの第四回シリコンバレーツアーへの参加者が出たのは僕にとって非常に喜ばしいことであった(同時に羨ましくもあるのだが)。

個人的な感想が色々と長くなってしまいましたが(まあブログなんて極めて個人的なものだけど)、二冊の梅田本からより多くの人が(特に大学生に読んで欲しいというのが私の想いですが)「自分と同じような興奮」を覚えることを願って今日のエントリを終わりにしたいと思います。

※間違えて梅田さんにトラックバックを二度も送信してしまいました。ご容赦ください。

シリコンバレーは私をどう変えたか―起業の聖地での知的格闘記

シリコンバレーは私をどう変えたか―起業の聖地での知的格闘記

村上春樹「やがて哀しき外国語」

やがて哀しき外国語

やがて哀しき外国語

村上さんのエッセイは大分読んでいるのせいか、どこかで聞いたことがある話が多かったように思う。でもそういう意味では村上さんらしさ溢れる一作であるとも言えるのではないか。

最近自分の中の「日本人的感覚」とでも呼ぶべきものを強く意識するようになった。外国に住むという経験(半年だけだが)の中で、日本人的感覚に気付き、ある意味嫌悪し、諦め、そして誇りを持つという段階を経てきた。村上さんのようにもっと長きに渡って日本人的感覚が通用しない世界に属していると、どのように日本人的感覚への想いが変遷していくのか。本著を読みながらそのような疑問を持った。

マラソン大会のアンケートの話は爆笑でした。

ジュリービック「私がマイクロソフトで過ごした日々」

私がマイクロソフトで過ごした日々―敏腕マネージャーたちのベストプラクティス (Ascii books)

私がマイクロソフトで過ごした日々―敏腕マネージャーたちのベストプラクティス (Ascii books)

三十分弱で一気に目を通した。マイクロソフトで実際に働く社員による「ビジネスで心がけるべきこと」が記載されている。

どんな大きな仕事でも一人の責任者を指名すること

自分も常日頃から同じようなことを心がけている。本書では「誰かがやるだろう」というお見合い現象を防ぐための施策として挙げられているが、私は意思決定のスピードを増すために有効だと考えている。

批判されても「個性」なら変えない

金言だと思う。

小室直樹「日本国民に告ぐ」

日本国民に告ぐ―誇りなき国家は、滅亡する

日本国民に告ぐ―誇りなき国家は、滅亡する

著者の幅広い教養、高い論理性には目を見張るものがある。そういったものに裏づけされた文章というのはそれだけで価値がある。

内容も「日本国民なら一度は」とお薦めしたいと思わせるもの。特に敗戦直後の日本に何が起こったのか、という問いに対する著者の分析は鋭い。