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すべてのものは悪用されえる

僕が言うまでもなくたくさんの人が何度も言及しているだろうが、すべてのものは悪用されえる。技術も当然悪用されえる。車が犯罪に使われるなんざ基本だし、犯罪人同士が電話で連絡をとりあう事もあるだろうし、ネットを使った犯罪、スピーカーでの騒音行為、撮影機器で盗撮とまあ色々。どんなものでも結局は使いようだ。極端な事を言わしてもらえば、電気なんかどれだけ悪用されたか分からない、とんでもない技術とも言える。
個人的には非常に便利かつ面白いと思っているが、別にGoogle Street Viewを礼賛する気はない。ただ「犯罪に悪用されたらどうするんだ」なんていう論調を目にする機会がかなり多いので、「では絶対に悪用されない技術やサービスとは果たしてどんなものだろうか」と悩んでしまうのだが。

ianime.jsを利用した写真ビューア

少し前にオープンソースとして公開したアニメーションライブラリianime.jsを使って、ちょっとしたアニメーション・エフェクトを持つホームページを作ろうとしているところだが、すべてのブラウザーできちんと表示しようとすると色々と細かな問題点に行きあたる。

Life is beautiful: ianime.js でコジャレたホームページ作りにチャレンジ

そう言えば以前、JavaScriptの練習用にと思ってianime.jsを使用した写真ビューアを作ってみたのを思い出した。拙い作品だが、リンクしておく。

ianime.jsを利用した写真ビューア

もともとは「写真を次々と見るのにいちいちクリックするのは面倒くさい」的な発想から考えたものだったのだが、ちょっとこれが使い易いとは思えない(笑)。まあそれなりに楽しくはあったりするのだが。

「どの言語を学ぶか」ではなくて「どの言語から何を学べるか」

僕はプログラミング言語論争に首を突っ込む気は一切ない。好きな言語も嫌いな言語もあるし、各言語の長所や短所もある程度分かっているつもりであるが、結局どの言語を使うかなんていうのは、自分が勤めている企業や、自分の回りのエンジニアや、マーケットの状況によって決定されてしまう事がほとんどなので、決定されたものに自分をチューニングしていくしかないであろうと思っている。
ただし「どの言語を使おう」とか「どの言語を学ぼう」といった視点ではなく「どの言語から何を学べるであろうか」という視点から考えると、プログラマの成長にとってプログラミング言語の選択というのは非常に大切であろうと思っている。以前勤めていた企業では、製品の多くの部分がCOBOLにて実装されていたので、相当量のCOBOLの実装やデバッグを僕も行っていた。COBOLと聞くと「COBOLプログラマなんて駄目だよ」とか「時代遅れだよ」というような批判をする人が社内にも多くいたが、「プログラマとして、どういった観点でCOBOLプログラマだと駄目なのか」という部分にまで突っ込んで批判している人は少なかった。こういった思慮に欠ける批判から得るものはあまりないので、これを前述した「どの言語から何を学べるか」という観点から考えてみたい。
結論から言うと、結局COBOLでしかプログラムを組んだことがないのであれば、近年プログラムで解くべき問題を解決をする上で必要な知識や概念が身に付きにくいのである。言い換えると、COBOLという先生が教えてくれない解決方法が必要とされる問題が世の中にたくさんある、ということになる。一教えれば百学ぶ天才は例外として、COBOLしか扱っていないのに例えばオブジェクト指向の考え方や、マルチスレッドプログラミングに関連する技術を学べるのかと問われると、かなり難しいと答えざるをえない*1。まつもとゆきひろさんが以前講演の中で「言語は思考の為の道具だ」という意見と述べていたが、それと似た様な主張であると思って欲しい。つまりCOBOL先生にしか教わったことのない生徒であれば、ある問題に取り組むときにCOBOL先生が教えてくれた方法以外で解決方法を思考することが出来ないのである。それは問題だと思う。
前述したように「COBOLだから駄目だ」とか「時代遅れだ」とかいう浅い批判は論外であるが、もし僕が採用担当だとして、例えばJavaプログラマとCOBOLプログラマのどちらかを書類選考の段階で選択する必要があるとすれば、Javaプログラマを選ぶと思う。しかしそれはJavaだから選ぶとかそういう話ではなく、Javaプログラマの方が学ぶべき事を学べている確率が高いと思っているからそういう選択をするのである。当然面接の段階ではそれを明らかにする為の質問を投げかける。つまり「この生徒は先生からきちんと学んだだろうか」という事を確認する。そこで学べていないことが明らかになれば、何プログラマだろうが採用はしない*2。候補者を全員面接する余裕があるのであれば、基本的には候補者の特定の言語経験に左右されず、プログラマとして学ぶべき事柄をきちんと学んでいるかどうかをそれぞれに確認するようにしたいと思う。
ここに書いたことは大事な事であると思っているのだが、筆力の無さからあまり言いたい事が伝えられない。そんなもどかしさを久しぶりに感じた。 

*1:誤解のないように言っておくと、近年はこれらの概念をCOBOLでも積極的に取り入れている。ただし一般的であるとは思えない。

*2:当然社の状況などで、頭数を揃えなければならないという事も多いとは思いますが。

シームレスな連携はなかなか達成されない

PCやゲーム機やTV等のホームエレクトロニクスと、携帯電話や携帯音楽プレーヤー等のモバイルデバイス、そして「あちら側」にあるネットサービスの三者間のシームレスな連携という意味では、まだまだ業界全体としてやらなければならないことが多くあるように思う。私の知っている限りでは、一般ユーザーから見ても「これはシームレス」と言えるものはまだiTunes StoreとiTunesとiPodの連携くらいしかない。携帯電話でさくっとPC上やflickrに蓄えた写真を検索して友達に見せることもまだ出来ないし、TVのCMで聴いてたまたま気に入った曲を即時モバイルデバイスに手早く購入することもできない。こういった作業というのは、実は今の段階でもやろうと思えば出来てしまうのだが、まだまだ一般の人から見れば技術者やこういったテクノロジーに興味の強い一部の人間だけのもので手が届かない、というのが正直なところだろう。そしてテクノロジーというものは、テクノロジーに強い興味の無い人間にまで届いてこそ輝くものである。
最近はこの三者に加えて、公共の場のエレクトロニクスとの連携も進んで欲しいと思ってもいる。例えば映画のチケットを購入する際にその映画に関する情報が自動的に携帯機器に登録されて、後でブログで紹介するときに使えるとか、そのブログを読んだ側の人間が、モバイルでその映画のチケットを購入し、近くの映画館に入るときはチケットレスで入れるとか。
こうした連携が中々進まない理由は技術的なものもあるだろうが、複数の企業、またひとつの企業内でも複数の部門が協力して進めていかなければならないというある意味政治的な理由も大きいだろう。AppleがMac、AppleTV、iPod、iPhone、iTunes等のラインアップを引っさげてこの分野をリードはしているものの、一社ではやはり限界がある。当然MicrosoftやSONYもこの分野での主要なプレーヤーになり得るだろうし、なりたいと強く思っていることだろう。競争原理は効率的な経済には不可欠だと思うけれど、覇権を握ろうとするあまりに独自の規格に走ったり、他者のデバイスに制限をかけるといった障害があまり発生しなければ、と願う。
いずれにせよ、まだまだハードウェア、ソフトウェア共に成さなければならないことはたくさんあるという訳だ。嬉しいことではないか。エンジニアにとっては。

そう言えば、もう長い事マウスを使っていない

表題の通りです。特に自宅では全く使わなくなってしまった。マウスがどうしても必要なのって、デザイン系の作業をするときくらいなものなんだよね。うーん、そろそろマウスの時代は終わりだろう。次世代インプットデバイスの登場が待たれる。とりあえずはタブレットPCかな。

GoogleがEnterprise分野を浸食する

エンタープライズ分野、本当に大丈夫か。

インターネット検索最大手の米グーグルは企業向けの情報共有サービスを始めたと発表した。ネット経由で無償提供し、予定表やプレゼンテーション資料など様々なデータを社員間で共有できる。同様の機能を持つソフトを販売するマイクロソフトなど既存ソフト大手との競争が激しくなりそうだ。

テクノロジー : 日経電子版

先日Googleが提供するシステムが低価格だという話題のエントリを書いたが、またしてもこういった話題が出てきてしまった。もはやグループウェアと呼ばれるようなシステムに関しては、どんどんGoogleに浸食されていくと思って間違いないだろう。無料で提供と来たら、もはや「ネットで共有なんて危ないですよ」というような売り方しか出来なくなるんじゃなかろうか、他の企業は。

百度

百度が日本に進出してから日も浅いので、まだネット上での存在感に欠けているのはしょうがないことだが、日本でもエンジニアを本気で集めているようなので、この先面白いプレイヤーになってくるかもしれない。
創業者のRobin Li氏はおそらく日本には中々いないタイプの起業家で、北京大学とニューヨーク州立大学大学院でコンピュータサイエンスを学び、InfoseekやGO.COMで検索関連の開発に従事した後、シリコンバレーでVCより資金の提供を受け、中国で百度を設立したようだ。

北京大学卒業後、ニューヨーク州立大学でコンピューターサイエンス修士取得。卒業後は、Dow Jones&Company,Inc.やInfoseekに勤務。Infoseekでは検索エンジンの設計を担当。彼が開発したESP技術はInfoseek/GO.COM のサーチエンジンに応用されているほか、GO.COMの画像サーチエンジンも開発している。インターンシップ時代には米国松下電器産業で働いたこともあり、この経験が「人生を変えてしまうほどの大きなきっかけ」となったと語っている。

2000年1月1日、ベンチャーキャピタルからの120万ドル融資を受けてシリコンバレーより帰国し、百度公司を設立した。 2001年8月には検索エンジンBaidu.comのベータ版を公開し、同年10月には正式版リリース。2005年には同社を米ナスダック上場へと導いている。

ロビン・リー – Wikipedia

僕が日本にあまりいなそうだと言ったのは、日本だとここまでエンジニアリングを専門に学び、エンジニアリングを専門として働いている人間が起業(しかも外国のVCから融資を受けて)というケースをあまり聞かないからだ。どうしても日本の場合、僕もそうだが、技術者は技術職人としてのコースを歩きたがるところがある。起業はどちらかと言うと技術者の側からではなく、ビジネスの側から起こることが多いだろう。理系よりは文系と言ってもいいか。日本のIT企業をぱっといくつか思い浮かべてみても、もともと創業者がばりばり専門分野の技術に強かった、という例はあまり思い出せない。強いて言えば堀江元ライブドアCEOは自らも有能なプログラマであったと聞いているが。
このLi氏、中々の男前で英語も堪能。まだ若いし、このまま百度がどんどん成長していくと、Kai-Fu Lee氏に続く、中国のITエンジニアの憧れの的となりそうだ。こういった人の出現が後進に与える影響は強いと思われ、今後中国がさらに手強くなってくるだろうな、と予測する。以下はYouTubeで見つけてきた彼の動画。

Googleが提供するシステムが安すぎるらしい

The New York TimesにIs Google’s Enterprise Software Too Cheap?という記事が出ている。GoogleのEnterprise Softwareが安すぎるのではないかという問題提起のようだ。
Googleが昨年買収したPostini社のメール関連のシステムの値段を9割引にしてしまったらしい。驚きの値引きだけど、どうやら記事では罪だって言っている。まあお客さんにとっては素晴らしいことだけど、Postiniのシステムを売ってるパートナー企業は辛いよね、と。こちらの記事では「Googleは我々からサポートする力を奪っている」というあるパートナー企業の発言も掲載されている。
僕が今勤めている企業はまさにエンタープライズ分野のソフトウェアを売っているので、競合としてのGoogleという視点でこの記事には脅威を覚える。「まだまだ先のこと」とか「我々には関係のないこと」と胡座をかかず、エンタープライズ分野の経営者は真剣に未来の方針を考えるべき。少なくとも自社の製品やサービスをいったんゼロベースで考え直して、Googleの強力なデータ処理能力を使うと置き換えられてしまうようなものがないかどうかを検討してみるべきだろう。
最後に余談になるが、新聞の記事にこういう見出しを付ける事って日本では少ないみたいだけどなぜだろう。こういうのって日本だと社説くらいにしか付かないみたいだけど。それが気になった。

Googleと共和党が組んだらしい

Jeremy Zawodnyのブログで知ったが、どうも共和党とGoogleが組むらしい。正確に言うと、共和党のOfficial Innovation ProviderとしてGoogleが協力する、とのこと。共和党のHPに公式の声明文が出ている。

As Official Innovation Provider, Google Inc. will enhance the GOP’s online presence with new applications, search tools, and interactive video. In addition, Google will help generate buzz and excitement in advance of the convention through its proven online marketing techniques.

http://www.gopconvention2008.com/news/Read.aspx?ID=511

共和党のオンライン上での存在感を強める為にnew applicationsやsearch toolsやinteractive videoを使いますよ、とのことだが、具体的にはYoutubeの事なのだろうか。よく分からないが、Youtubeに映像を上げるだけなら勿論誰でも出来る訳だし、そこに何かしらの仕組みが組み込まれるのだろうか。あとonline marketing techniquesを使ってbuzzやexcitementを作り出すとのことだが、これはJeremy Zowandnyが言うようにAdsenceやAdwordsのことなのだろうか。共和党からのメッセージが検索結果の横に出たりするのだろうか。
丁寧に以下のような映像まで作成されているので、こちらも紹介。

しかしWall Street Journalでも取り上げられているように「じゃあ今後共和党はGoogleを贔屓するの?」とか「じゃあ民主党はMicrosoftと組むの?」とか色々と話題になりそうな一件であることは確か。
しかしZeremyの以下の一文には思わず笑ってしまった。政治とテクノロジーの融合(WSJでは結婚と言っている)と呼ばれそうな今回のタッグだけど、どうもその二つは自然と溶け合わないものなんじゃないかと思わせる一文だと感じた。

Either way, a dumb thing like this is an excellent way to lose credibility in my mind. I’m surprised they didn’t also announce HTML as their official markup language and HTTP as the site’s preferred protocol.

Republicans Kiss Google’s Ass… (by Jeremy Zawodny)

クリック数で判断するのは間違い?

A study put out yesterday by comScore, Starcom Media, and Tacoda suggests that half of all clicks on display ads (as opposed to clicks on paid search links) are generated by only 6 percent of Web surfers.

And these are not a particularly desirable bunch. The average heavy clicker is 25 to 44 years old, earns less than $40,000 a year, spends a lot of time online but not a lot of money online, and likes to frequent auctions, gambling sites and job boards. Sounds like a lot of these heavy clickers are out of work and have nothing to do. But who did you think clicked on those ads anyway?

Half Of All Clicks On Display Ads Are Worthless – TechCrunch

WEB広告のクリックの半分は価値が薄いという話。それらはWEB利用者の中の6パーセントの人間によって行われるクリックで、大抵は25から44歳で、年収が4万ドル以下、たくさんの時間をWEB上で消費するけどもお金を消費する訳ではない、とのこと。だからクリック数をカウントしてもあまり意味がないんじゃないのかな、と。
僕は実際に広告をクリックしない。感覚論で言っていいなら、クリックをたくさんするという人間はそういないであろう。以下のように似た様な意見がちらほら。

だけど、僕はWeb使用暦も長いけどWebの広告をクリックして商品を購買したことは一度もない。広告に出てるサイトと同じところに行くとしても、なぜか検索結果の方から辿っていってしまう。

nomushun’s Blog : 無料サービスにとっての利用者の存在とは?(3) – livedoor Blog(ブログ)

僕はネット広告をクリックすることがほとんど無いし、まわりのヘビーユーザもほとんどがそうらしい。自分はクリックしないのに、1パーセント前後のユーザがクリックすることを前提にページビューや広告料を概算したりもする。ではクリックするのはどんな人か?

誰が広告をクリックしているのか? | 秋元@サイボウズラボ・プログラマー・ブログ

だがWEBの広告は雑誌やTV等のマス広告と違い、仕組みさえ作ってしまえば「どこかの広告を見て商品を購入した」というのが分かるという特性がある(例えばAmazonのアフィリエイト)。
クリック数をカウントする事にあまり意味はないかもしれないが、どこのサイトでどれだけの売り上げがあったのかを判断出来る可能性がある以上、効果測定に関して言えば従来のマス広告とは一線を画した存在であるだろうとは言える。このあたりは技術屋さんの仕事か。