
- 作者: 山田文比古
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/09/16
- メディア: 新書
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フランスについてもう一冊読んでみた。
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以前に紹介したアメリカに「NO」と言える国と同じく、世界におけるフランスの孤高の存在感、独自の外交戦略をテーマにしている。が、「アメリカに…」がアメリカとフランス、コミュニタリスムとユニバーサリズムの比較を行うことにより、日本が今後とるべき外交政策のヒントを提示しようとしていたのに対して、本書はフランスの外交政策、およびそれにまつわる軍事政策などの「研究・勉強」といった雰囲気。事実、駐フランス公使である著者が、イラク問題におけるフランスの動きを見誤ったことに関して、再度勉強をしなおした結果を纏めたのが本書であるようだ。
著者が公人である影響もあるとは思うが、本書ではあまり「日本はフランス外交のどこに学ぶべきか」というようなことは書いていない。フランスが核武装していることもあり、そのような記述が難しいという面もあるのではなかろうか。あとがきにも、
pp.203
なにも、フランスをモデルとすべきだということではない。そもそも日本とフランスでは、それぞれの置かれている地政学的・歴史的環境が違いすぎる。単純な比較は慎むべきである。日本もフランスのように核兵器を持てば、などという短絡的な議論が出てこないとも限らない。
と書かれている。「アメリカに…」は結構「日本はフランスに学べる」的な要素が強かったので、ここには意見の相違がありそうですね。ちなみに核武装論議が短絡的かどうかは分からないが、現在日本は、嫌でも「抑止力」に関する議論をしなければいけない状況だ。そういう意味ではフランスから学ぶことは多いだろう。
本書はところどころに「フランスが行こう豆知識」というコラムが設けられており、これが結構面白い。pp.202ドゴールでは、「ゴーリスト」と「ゴーリアン」の違いについて述べられている。両者の区別がつかないという方は、是非購入して読んでみてください。
フランス外交についてのはじめての一冊であれば「アメリカに…」をお奨めしますが、もっと精密かつあまり分量の多くないフランス外交に関する資料を読みたい、という方がいらっしゃればこちらをお奨めします。