以前に紹介した梅田望夫氏と吉岡弘隆氏の対談の中で、話題が「会社としてのはてな」になったとき、梅田氏が以下のように述べていた。
起業家・WEBデザイナー・SE→CIOを目指しつつの大学生のアレ – はてなの作り方
ほっとけばベンチャーってのはどんどん技術会社じゃなくなっていく。
なぜなら経営的にやるべきこととエンジニアがやりたいこととは結構相反するから。けれどもはてなやgoogleのようなエンジニアの楽園を作るにはある程度の経営的な縛りが必要。
はてなでは決定権は役員にあるわけではなく、エンジニアが最終的には決めるような作りらしい。
この問題は結局「トップがエンジニアを信頼できるのかできないのか」そこに懸かっている。そしてそういう意味でははてなはまだ会社として、そこが揺らぐ危機に面していない。
—–
なぜならまだはてながかなりの小規模な会社だからである。小規模な会社であれば、個人的にも全従業員を人間性レベルで把握できる。人間性を把握できるのであれば信頼も生まれるだろう。信頼を持ちたいが為に小規模なままで会社を留めているというフェーズなのかもしれない。何にせよ50人にも満たない小規模な企業なのである。
創造型のエンジニアの仕事っぷりというのは、傍から見れば遊んでいるように見えてしまうものだ。誰だって最先端のツールや方法論を使ってテストプログラムを作って色々試しているエンジニアより、目の前のバグ修正やドキュメント作成に没頭してくれるエンジニアの方に対して「ああ、仕事しているな」という感想を持つだろう。実際に「成果」というか「業務」としては後者の方が優秀なんだと思う。ただいずれかブレークスルーが必要になったとき、革新をする必要があるとき、前者が溜め込んできたノウハウや技術力が活きるのである。創造型のエンジニアっていうのはそういう役割なんだと思う。そういった革新が必要ない、もしくはトップが求めていないというのであれば、経営的に見れば後者のエンジニアばかりで会社を埋め尽くした方が良いに決まっている。
例え話だが、ある場所にレストランがオープンしたとする。最初は一店だけで従業員も5人程度。オーナーはアルバイトも含めて全従業員を把握している。関係も良い。こういう状態ならば、従業員の髪の毛がたとえ茶髪でもオーナーは何も言わないものだ。そこに信頼があるから。だが店が大繁盛し、10店20店を構えるようになってくると、全従業員を把握なんか出来なくなってくる。そうすると、とたんに知らない従業員が茶髪だったり髪の毛が長かったりするのが気にかかってくる。気に食わない、信用できない。売上が落ち込んできたときなんてなおさら。だから各店舗を規則でがんじがらめにする。
はてなが今後、どのような方向に進むのかによるけど、やはりビジネスが拡大してくれば人手というものが必要になってくる。トップが全員の顔を把握できない状況がやってくる。そういった状態の中で「技術志向、エンジニア志向」そういったものキープできるのか、そこで初めて問われるのである。現在すっかりビジネス志向になってしまった数々の企業だって、創業してからしばらくは技術志向バリバリであった企業がいくつもあったであろうから。