須田慎一郎「下流喰い」

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

必読、必読、必読。新書を読んで震え上がったのは始めて。著者の綿密な取材活動によって裏づけされた本書の内容は、思わず「これがわたしの知っている日本か?!」と疑ってしまいかねないないようなのだが、強烈なリアリティを持ってあなたの頭に入り込んでくる。
現代の金融を学ぶ上で教科書とするべき一冊。

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もともと池田信夫氏のエントリで本書を知り、そこからリンクされている大竹文雄氏のブログにて交わされている大竹氏と池田和人氏の議論によって本書に興味を持ち、購入。ちなみに大竹文雄氏は、以前に書評を書いた「経済学的思考のセンス」の著者である。このブログ上での両者のやり取りは非常に興味深いので、本書を読んだ後に見てみるとよいだろう。
さて、本書は何故に必読なのか。それは自分の身を守るためである。まずはそれが一番大事であり、教科書とすべき一冊と書いたのもそういった意味から。日本に現在どのような現実があるのかを正しく認識し、「我関せず」といった態度を決め込むことなく自分の身をいかに守るのかを考える。自分自信が「金貸し」とどのように付き合っていくべきなのかを考える。その為の良い一冊となる。加えて、多重債務の問題をどのように解決していくのか、経済学者では無い我々も考えなければならない。本書はそう訴えてくる。著者は学者さんではなくジャーナリストであり、足で稼いだ綿密な記事は人に訴えかけるものを含んでおり、弱者を食い物にする金融業界(敢えて消費者と付けないが)をどうするべきなのかを考えさせられる。
僕は本書を読んで、所謂グレーゾーン金利は撤廃すべきと考えた。簡単な話、返せないからである。金利を下げるとそもそも借りることが出来ない人が増え、借りれない人が増えるのかもしれないが、これは問題でないと思われる。例えその時点で借りることが出来たとしても、返済が出来ないのであればただ「終わり」が来るのが少し遅くなり、状況がひどくなるだけだから。また、借りれない人が増えた結果、闇金に流れる人が増えるという論理もあるみたいだが、これを防ぐのは国の仕事ではないかと思う。なかなか小さく活動する闇金を摘発するというのも難しい話なのかもしれないが、少なくとも彼らの消費者に対するチャネルを短小化することは出来ると思うので、頑張ってもらいたい。
こういった問題は、国の政策うんぬんも勿論大事なのだが、国民ひとりひとりの正しい知識と意識の高さがかなり重要である。そういった意味でも、本書は現代金融の教科書とするべき存在である。ただひとつ文句を言わしてもらえば、小学生から高校生でも手に取りやすいような形、つまりこの本の簡易版が無いことである。須田さん、もしくは須田さんの周りの方、子供達や青少年の教育のため、簡易版の作成をご検討されてみてはいかがでしょうか。