村上春樹「風の歌を聴け」〜「ダンス・ダンス・ダンス」

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

「風の歌を聴け」から始まる四部作を一気に読んだ。内田樹さんの村上春樹にご用心を読んだら猛烈に読みたくなったので、講談社文庫で一気に購入した。こういう購入の仕方を世間では「大人買い」とか言うらしいけど、まさにその大人買いである。こういうときに文庫は便利だ。
さて、今更この名作に僕なりの解釈を加えることが何かしらの意義を為すかどうかは分からないというか、おそらく何も為さない。だからつらつらと感想を適当に述べようと思うけれど、まず「名前」というものについて奇妙な感覚を持った。これらの作品に出てくる人物達には基本的に名前というものがはっきりと存在していなかったり、隠されていたり、あだ名で呼ばれていたり、あるいはカタカナ表記されていたりという具合である。一方で場所や建物なんかにはしっかりとした名前が付いていたりと対照的であったりして、この辺に村上春樹氏が何かしらの意図を組み込んでいるんだろう推測しているのであるが、それがなんなのかはよく分からない。
偉そうなことを言ってしまうなら、素人のくせに能書きを垂れてしまうなら、羊をめぐる冒険とダンス・ダンス・ダンスの間には奇妙な溝があるように感じたというか、連続して読んだからかもしれないけれど、昇っていたエレベータの景色が急に様変わりしたようなというか、何か異質な世界に入ったような感覚を覚えた。これは70年代的なものと80年代的なものの違いなのか(そして僕が生まれた時代と育った次代の違いでもある)、村上春樹という作家の成長もしくは変貌によるものなのか、あるいはただの僕の読んだときの体調であるとか気分であるとかそういった読者側の要因なのか、その辺は分からないのだけれど、確かに溝がそこにはあった。少なくとも僕の今回のこの読書においては。
で、僕が一番好きな登場人物は鼠である。いきなり極めてノーマルな感想になったけれど、好きな登場人物を語り合うというのは大事だろう。僕は鼠が好きだ。細かく言うと、主人公との台詞のやり合いの中で繰り出される鼠の印象的な一言が好きだ。はっきり言って、すごくいい。