村井純「インターネット」

インターネット (岩波新書)

インターネット (岩波新書)

「みなさんこの本きちんと読みましたか?」とネットに向かって質問を投げかけたくなった。WEB2.0という言葉に踊りに踊った2006年にガツン重い一撃を与える1995年の本書。正直昨年のウェブ関連の書籍の中に、本書に書いてある内容を超える概念が書いてあったという記憶はない。それはウェブ進化論とて例外ではないと思う。1995年のインターネット元年に村井氏が既に持っていたビジョンが11年かけて世に広まった。その広がりをWEB2.0と呼ぶんじゃないかと思ったくらい。

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本書を読んでしまうと、もはや昨今出てきた新しい概念(と僕が思っていたもの)の中で、本当に新しいと思えるのはロングテールぐらいのものだということに気付く。Wikipediaに代表される群衆の叡智系の概念はしっかり抑えられているし、ネットによる人間の変容だとかウェブ人間論系の話題もここで出てきてしまっている。うーん、日本にもこんな凄いビジョナリーがいたのかと唸ること間違いなしの内容なので、読んだこと無い人は絶対に読んでください。もともと「WEB1.0を振り返ろう」と思って本書を購入したのですが、振り返るだなんてとんでもない。なんで昨年の大騒ぎの中でこの本が取上げられないのかと世間の審美眼に対する疑念まで出てくる始末。どっかででっかく取上げられても良さそうなものだが。
それと雑な感想のようで申し訳ないがが、人間が最終的には哲学書とか思想書に拠り所を求めに行く気持ちが理解できたような気がする。というのもひとつ上の概念で語られているものを読んだときの「釈迦の手の上感」といったら凄いものがあるからだ。僕の読書傾向も最終的にはそっちに行くんだろうなとかそういうことまで考えさせられる一冊だった。