定番イベントですけどやっときます。あくまで「今年読んだ本」であった「今年出版された本」ではありません。技術書は含みません。順位も付けませんのであしからず。紹介文は僕が書いたエントリからの引用です。
特捜検察の闇

- 作者: 魚住昭
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/05/09
- メディア: 文庫
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魚住昭「官僚とメディア」 – 二十代は模索のときブログで紹介した「官僚とメディア」と同じ魚住氏による本書は、この日本で起こっている司法の腐敗を抉り出したもの。相当に読み応えがありました。
著者は本書で語っているように、以前は特捜検察のファンだったという。特捜検察という前著は特捜検察の活躍を描いたものであるようだ。しかしその著者が今度は検察、そして司法全体に蔓延る腐敗の構造に光を当てることになった。日本の司法にどんな変化があったのか、そしてこれからどう変わっていくのだろうか。そういったこと深く考えさせられる内容である。
過剰と破壊の経済学

過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042)
- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2007/12/10
- メディア: 新書
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梅田本も勿論そうだけど、ソフトウェアや通信など、所謂で活躍する若き人材や、将来それらの業界を目指している学生達にはこの「池田本」も是非読んでもらいたい。なぜかというと、この池田本で今僕らが属している世界というのはどういう世界なのか、どのように成り立ったのかを総覧出来るからだ。この池田本で自分達の属している世界の構造をしっかりと把握してから、梅田本を読んで夢や将来像を作り、それを達成する為の戦略を練ってほしい。
生物と無生物の間

- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/05/18
- メディア: 新書
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本書は「生物とは何か」という根源的な問いに対して著者自身が答えを出そうとしたその経過を記したものである。我々は普段そのような問いかけをすることはあまりないが、「生物」と「無生物」というものを無意識のうちに判別しているし、何かをその境界に見てとっているはずである。それは一体なんなのか?それを追っていくのが本書のテーマである。
翻訳家の仕事

- 作者: 岩波書店編集部
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/12/20
- メディア: 新書
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当然ながら文章を生業にしている方々ばかりなので、非常に読ませる内容で本書は満ちていると思うが、それよりも何よりも翻訳という仕事、もっと言えば自分が真剣に取り組んでいるある作業に対する考察が非常に興味深いものとなっている。プログラマがプログラミングという作業について真剣に考察しているようなブログエントリが非常に面白いのと同様、翻訳家が翻訳と向き合う姿を描くこの本は面白かった。
進化しすぎた脳

進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/19
- メディア: 新書
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本書では脳科学者の池谷裕三氏が、それこそ「中高生にも分かるように」脳についての説明を行ってくれている。授業の内容をそのまま文章にしたこともあって非常にテンポも良く、さくさくと読み進めることが可能。
風の歌を聴け〜ダンス・ダンス・ダンス
偉そうなことを言ってしまうなら、素人のくせに能書きを垂れてしまうなら、羊をめぐる冒険とダンス・ダンス・ダンスの間には奇妙な溝があるように感じたというか、連続して読んだからかもしれないけれど、昇っていたエレベータの景色が急に様変わりしたようなというか、何か異質な世界に入ったような感覚を覚えた。これは70年代的なものと80年代的なものの違いなのか(そして僕が生まれた時代と育った次代の違いでもある)、村上春樹という作家の成長もしくは変貌によるものなのか、あるいはただの僕の読んだときの体調であるとか気分であるとかそういった読者側の要因なのか、その辺は分からないのだけれど、確かに溝がそこにはあった。少なくとも僕の今回のこの読書においては。
キャッチャー・イン・ザ・ライ

- 作者: J.D.サリンジャー,村上春樹
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2003/04/11
- メディア: 単行本
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実は先日翻訳夜話2 サリンジャー戦記(文春新書)という新書を購入して読み出したのだが、どうもこの本がこの村上春樹訳のキャッチャー・イン・ザ・ライを読んでいることを前提にしている本だったので(当たり前と言えば当たり前だが)、そちらを一旦中断し、本書を読んでみた。おそらく本書は多くの人は思春期というか、少なくとも社会人になる前に読む類の本ではないかと推測したがどうなのだろうか。僕はもういい大人になってから本書と出会ったので、多少他の人と感じ方が違うかもしれない。
特捜検察vs.金融権力

- 作者: 村山治
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
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スリリング。特に第1部のスリルはかなりのものだと思う。蜜月だった時代から大蔵官僚の摘発にいたるまでの特捜部の動きの変化は非常に興味深い。僕の頭の中に漠然と染み付いている数々の思想は、こういった日本の中枢にいる人達の「成果」なのかと思うと不思議である。例えば「大蔵省とノーパンしゃぶしゃぶ」なんて言葉が世間を飛び交っていたとき、僕はほんの子供だったはずだが、しっかりと頭に刻み込まれている。佐川急便事件やリクルート事件にしても同様だ。
いかにして問題を解くか

- 作者: G.ポリア,G. Polya,柿内賢信
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1975/04/01
- メディア: 単行本
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本書はポリア教授により、数学の問題を解くに当たっての考え方の手順や方法を学生にどの様に教えるか、という目的で書かれたものである。が、どんな数学の問題にでも当てはめることが出来るように、その手順は十分に抽象化されている為、数学を超えて、色々な物事の問題を解決するときにも使える内容になっている。一度は目を通しておき、ポリア教授の言葉を頭に刻んでおくと有意義だと思う。
獄中記

- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/12/06
- メディア: 単行本
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本書を読んでいて一番感じたこと、それは意外かもしれないが「ユーモアの大事さ」である。「ユーモアを持ち続けることの大事さ」と言った方が良いかもしれない。前半にそういった件があった気がするが、佐藤氏はこの状況においてもユーモアを持ち続けていようと務めていたと思うし、実際にそれは成功していたと思う。弁護団への手紙からも、外務省の後輩への手紙からも、彼一流のユーモアが感じとれる。こう書くと「ではユーモアとは何なのか」という哲学的な問いへと発展しかねないが、取敢えずは「現状を楽しむ力」と定義しておきたい。アカデミー賞で何部門かを獲得したイタリア映画「Life is Beautiful」は人間にとってのユーモアの大事さを描いた作品だと僕は認識しているが、あの映画を見たときのようにユーモアを持ち続けることの大事さを痛感した一冊だった。